第49話 「お前、超可愛いな!」
(蒼汰)
今日は、美咲ちゃんと一緒に文化祭を見て回れる!
お化け屋敷の事とか考えたら鼻血が出そう。
他にも色々出し物があるから、一緒に沢山楽しめそうだ。
そんな風に妄想に花を咲かせていたら、早野先輩がやって来た。
「お、蒼汰居た!」
「は、はい?」
「お前のクラスは焼きそばだったな。お前、忙しいか?」
「いえ、それほど」
「良かった!」
「はい?」
「みんな、しばらく蒼汰を借りるぞ、良いかな?」
その場に居た全員が、首を縦に振った。
一人ぐらい困る奴は居ないのかよ!
「え、えぇぇ……」
俺は先輩に手を引かれ連れて行かれた。
着いたところは早野先輩のクラスだった。
早野先輩のクラスは、喫茶店をやるみたいだ。
カーテンで仕切られた控室の様な場所に案内される。
そこにはメイド服やハイソックスやカチューシャ等がバラバラに置いてあった。
なんと、早野先輩のクラスは『メイド&執事喫茶』を引き当てたクラスだったのだ。
「早野先輩、これは?」
「うん。蒼汰。このメイド服でお前が良いと思う組み合わせを作ってくれ」
「はあ」
「この手のセンスは絶対お前だと確信している。俺らはまだまだ未熟だ」
つまり俺はメイド服のコーディネーターとして呼ばれた訳か。
うん。それなら自信がある。
俺はテキパキと組み合わせを作って行った。
僅か数分で十着くらいの組合せが完成した。我ながら会心の出来だ。
早野先輩とクラスの人達が一様に感心の声を上げていた。ふふふ。
「流石、蒼汰だな。ところで蒼汰はこの中でどれが一番好きだ?」
自分の作品をざっと見渡して、ややロリ系の白い可愛いカチューシャと、黒白のロリータ系ワンピースに、黒のニーハイソックスを合わせたのを指さした。
まあ、定番中の定番だが、やはり良い。
「おお。それか!」
「ですね。これが一番です!」
「よし。じゃあ、早速それを着てくれ」
「え……?」
戸惑う俺を横目に、早野先輩はゴシック系のメイド服を着始めた。
「蒼汰、時間が無い。早く」
全く意味が分からなかったが、先輩に急かされるままにメイド服を着てしまった。
何? いったい何が始まるの?
「メイクお願いしまーす!」
先輩が呼びかけると三年生女子のお姉さまがぞろぞろ入ってきた。
手に大きなメイク道具を持っている。
先輩と俺は「可愛いー」を連発されながらメイクを施された。
メイクが仕上がった早野先輩は綺麗だった。
元々イケメンだから、メイクを施して女装をしたら、めちゃめちゃ綺麗になってしまった。
正直、その辺の女子より綺麗だ。
お姉さま方から溜息混じりの歓声が上がる。
俺はメイクをしてくれたお姉さま方には「可愛い可愛い」と言われたが、鏡に映った自分の顔を見ても別に変な感じがするだけで、ちょっと気持ち悪かった。
俺のメイクが終わると先輩がやって来た。
「そ、蒼汰……」
「……」
「お前、超可愛いな! 俺、何か変な方向に目覚めそう!」
先輩がおもむろに抱き付いて来た。
「ええぇぇぇ!」
「ちょっ! 二人共マジ可愛いんだけど! 写真撮らせて!」
メイクをしてくれたお姉さま方が一斉に写真を撮り始めた。
その後もお姉さま方との撮影会が暫く続く。
訳が分からなかったが、写真を撮る時に腕を組まれて、お姉さま方のお胸が腕に当たって嬉しかった。
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「よし。蒼汰行くぞ!」
道々早野先輩を見た人にキャーキャー言われながら、先輩と俺は校門のところにやって来た。
「蒼汰。ここでうちのメイド喫茶のビラと、今から夏目が持って来る文化祭のイベントマップを来場者に配るぞ。すまんが手伝ってくれ」
お世話になっている先輩のお願いを断る事など無いし、夏目先輩も絡んでいるなら尚更頑張らないといけない。
俺は笑顔で
「そ、蒼汰。そういうの止めてくれ。可愛すぎて変な気持ちになってくる……」
「ええぇ……」
「早野か?」
後ろから声がしたので振り返ると、夏目先輩だった。
夏目先輩が早野先輩と俺を見る。
「おふぅ」
夏目先輩は変な声を出して倒れてしまった。
「お、お前ら可愛すぎるだろう。血迷いそうだ」
「だろ! 夏目、これ蒼汰だぞ!」
夏目先輩は立ち上がって、改めて俺の顔を覗き込んだ。
「本当に蒼汰君か? 凄いな、本当に可愛いな! ちょっと失礼……」
先輩が嬉しそうに抱き付いて来た。
生徒会長ー。イメージがぁ……。
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