第17話 「半袖の体操着」
(蒼汰)
山道を歩き始めてから一時間。
九月末とはいえ未だ暑い。
安全の為に全員ジャージの上下着用という事になってはいるが、歩き始めた途端に上着はリュックの中にしまい込まれ、殆どの生徒が
半袖の体操着といえば……。
体育会系男子の
そんなものはどうでも良い。クソだ。ジャージでは分からない薄い体操着だからこそ分かるもの。
そう、女子のお胸だ!
体育の時や体育祭の練習の時もだが、基本的に男子と女子は別行動だ。遠くから指をくわえて見ているしかないのだ。
しかし、今はどうであろう。
肩が触れそうな距離に体操着の女子が居る。
しかもそれは、愛しの美咲さま。俺に見るなというのが無理な話だ。
何と神々しい膨らみだろうか。
ダメだと分かっていても、中身を想像してしまう。
おっと何だか歩き難くなってきたぞ。
いかんいかん、テントの持込は厳禁だ。
しかし今夜は絶対眠れないな……。
他の女子の膨らみ?
美咲さまの『清らかなる秘宝』しか目に入らないに決まっているだろう。
まあ、様々な丘陵地帯を見て回りたいのは山々だが……。
このままでは本当に歩行が困難になるので、これ以上美咲さまを見続ける訳にもいかず、一旦落ち着かせる……もとい、落ち着くために少し歩みを遅らせた。
二人がこちらを見てない事を確認して、ジャージのズボンのポケットに手を突っ込み、素早くポジション修正。
ふう、危ない危ない……。
俺が遅れた事に気が付いたのか、結衣が下がって来て、横に並んで歩き始めた。
美咲さまを見てしまった今、結衣の膨らみなど気にもならない。
いや、気にならなくも無いが、大丈夫だ。
「暑ーい。蒼汰、かき氷持ってない?」
「持ってる訳ないだろ」
結衣が下らない事を言いながら、体操着の首元をパタパタやっている。
馬鹿野郎、下着が見えそうだ。
いや、結衣のブラなど見ないぞ。大丈夫だ。
それに、美咲さまが急に振り向いて、結衣の胸元を覗いているのがバレたら一大事だ。まったくこいつめ……。
そんな純真な気持ちにはお構いなしに、相変わらずパタパタやっている。
今日は水色か。うむ。悪くないぞ。
男とは仕方が無いものなのだ。
「蒼汰、見んな」
ハッとして目線を上げると、結衣が勝ち誇ったような顔しながら横目で俺を見ていた。
何だと……。こいつワザとやってるだろう。
「見てない」
言いながら、あからさまに反対方向に顔を向けた。
動揺で赤面しているのを悟られない為でもある。
「ほぉー」
そう言い残して、結衣はまた美咲さまの横に行ってしまった。
何なんだ。大体、今の会話を美咲さまに聞かれていたらどうする。
『結衣ちゃんどうしたの?』
『蒼汰があたしのブラ覗き込んでたのよ。最低よねー』
『ええっ! 上条君ってそんな人だったの……』
そんなことになったら、そこの斜面から飛び降りるしかない。短い人生だった。
幸いそんな事にはならず、無事にお昼の休憩地点までたどり着いた。
各グループの点呼をして、脱落者が居ない事を確認し、遠足委員の午前のお仕事は終了。
お昼はグループ毎に食べるので、委員の俺たちは三人でお昼ご飯だ。遠足委員最高!
ウザオ達の
途中、別グループの
うむうむ、
でも、神様は俺を選んだのだ。すまんな。
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