【完結】悪役令嬢とは何をすればいいのでしょうか？

第一王子視点

　俺は今、人生の岐路に立たされている。その原因は俺の目の前にいるソフィアのせいだ。

　俺が勉強を嫌いになったのも、武術を嫌がるようになった理由も全て、ソフィアのせいなのに……

　何もかもあいつと比べられて、あいつには上から説教をされる。俺の方が偉いはずなのに。誰もその苦しみを理解してくれなかった。

　この俺が謝って、頼んでやっているのに、この女はそれでも俺を見下し、説教をしてくる。不愉快だ。それに、婚約破棄の件も、こいつがもっと下手に出て、可愛らしくしておけば、言わなかったものをどうして全て俺のせいだと言われなければならないのか、理解に苦しむ。

　それに、我慢し続けてきただと？俺だって我慢はしてきた！あたかも自分だけのように言いやがって！

　あいつが婚約者であることで俺がどれだけ苦労したと思っているんだ！

　家庭教師は十分だと言っていたのに、あいつがもっと進んでいたせいで、余計にやらされるし、武術もあいつに負けたせいで、より一層厳しくなった。

　だから、あいつに嫌がらせするために、あいつのために用意されたお茶会を全て無視してやったのに、クリスと仲良くなりやがって。

　その日からクリスの成績が上がり、余計に俺が馬鹿にされるようになった。

　全てあいつ、ソフィアのせいなのに……

　あいつが、メアリーのように、俺の話を聞いてくれていたら……

　そうだ、メアリー！

「メアリー！メアリーなら俺の言ってることをわかってくれるよな？」

　学園ではメアリーに何度も愚痴り、俺を肯定してくれた。だから今度も…

「いえ、全然わかりませんよ？」

「えっ？」

「えっ？と言われましても。学園の時からでしたが、あなたが不幸に感じていることは全てあなたが招いたことじゃないですか？それを、他人のせいにして、自分は悪くないと…いつまで子供でいるんですか？」

「なっ、どうして、メアリーはあの時…」

「学園でのことを言っているのであれば、それはあなたに近づくためです。適当にあなたが言って欲しそうなことを言っていただけですよ」

「そんな……」

　あの時、言ってくれた言葉は全部嘘だったと言うのか……

「それに、私のものを壊したのはソフィア様とおっしゃっていましたが、壊したのは紛れもなく、あなたたちではないですか」

「壊したのが俺たちだと…」

「覚えていませんか？私のペンを自分のものにしようと取り合って、壊したではありませんか？」

「いや、だが、あの時は新しいのを買って…」

「ええ、ですが、壊したのはあなたたちですよね？」

　確かに壊してしまった。だが、新しいのを買って、喜んでいたではないか！

「さらに言えば、殿下は私と最後に出かけた日、小さい子に会いましたよね？」

「？ああ、あの小汚いやつか」

「あの子、私がいた孤児院の子供なんですよ。ソフィア様たちが救ってくださり、子供たちもきれいになりました」

　メアリーが孤児院育ちだと、それに、ソフィアが救った…だと？

「大体、あれだけサボっておいて、今でもずっと努力されているソフィア様やクリス様と対等であると思っている方が驚きなのですが…」

　メアリーだけは俺のことをわかってくれていると思っていたのに……

　何故だ。どうして…俺が間違っていたのか？そんなわけはない！俺は…騙されていたんだ。ソフィアに、メアリーに…

「国に残るか、外に出るか、決まりましたか？」

　残るか、外に出るか…か。そんなもの、決まっている！

「俺は国外に出る！俺を騙していたお前たちの国になんていられるか！お前たちは俺がいなくなったことを後悔しておくことだ！」

「はぁ…そうですか……わかりました。一週間だけ猶予をあげます。その間に出ていきなさい。それ以上は認めません」

　優秀な俺がいなくなれば、あいつらも俺のことをようやく認めるだろう。あいつらが頭を下げるのであれば、寛容な俺は戻ってやろう。その時まで、せいぜい俺の国を潰さないようにしておくことだ。