最終話 私が考える悪役令嬢
私の卒業式が終わってから三年が経ち、私はルルア様とお茶会をしています。
「会いにきてくれるのは嬉しいのだけど、クリスには会わなくていいの?」
「私はこれからクリス様を支えられるようにいろんなことをルルア様に聞きに来ているのです。クリス様は関係ありませんわ」
「…そう。だけど、あの子も会いたがっていたわよ」
「知っています。けれど、今はこのままでいいのです」
「そうなの?まあ、私からは何も言わないわ」
そう。これは私がクリス様に与える罰なのですから。
「ソフィア様、そろそろ学園が終わる時間です」
「もうそんな時間ですか。それでは、ルルア様、失礼します」
私が卒業してから、もう三年も経ちます。ト…第一王子、いえ、元第一王子ですね。彼の行方は分かっておりません。王子として、わがままに暮らしてきた彼に、平民としてだけでなく、他国で暮らしていける想像が正直できません。彼には嫌な思いもさせられましたが、今も元気にしているのか。それとももう…
そうそう、第一王子といえば、彼の母親であるシーラさんを捕らえてからは、薬物が流れてくることは無くなりました。彼女が中心になっていたのは確かだったようです。
それに…
クリス様の卒業がもうすぐそこに来ています。卒業したら結婚。分かってはいましたけど、もう少し、クリス様との時間をとってもよかったかなとも思うのですが、まあ、仕方ありませんよね。だって、私はクリス様にとって悪役令嬢みたいですから。
家に帰る馬車の中で、アメリアに今日で何度目か分からないほどの質問をされます。
「ソフィア様、クリス様なんか気にせずに、私と遠いところに行きませんか?」
「アメリア、何度も言っているでしょう?そんなことはしないわ。あなたはそんなにクリス様のことが嫌い?」
「いえ…そういうわけではないのですが…」
「ですが?」
「ソフィア様はクリス様のことを避けているようですので…」
「それはクリス様への罰よ。それに、その理由を作ったのはあなたじゃない」
私がクリス様と合わない理由。それは、私が第一王子に悪役令嬢と呼ばれるようになった原因がクリス様であったためです。
第一王子に私が悪役令嬢であると伝えるように言ったのがクリス様であったとアメリアから伝えられ、私がクリス様が卒業までの間、できる限り会わないと言ったのです。
「それはそうなのですが…ここまで長い期間、会わないようにするとは…」
「いいのよ、これで。クリス様も今まで以上に、勉学に励んでもらわないといけないもの。だって、年上の私よりも同年代の可愛い子の方がいいと言われるかもしれないじゃない?」
「そんなことは絶対にあり得ないと思うのですが…それに、向こうも限界のようですよ?」
「では、効果はあったみたいですね。もっと私を意識してもらわないと」
「ソフィア様、まるで物語の悪役令嬢みたいなことを言ってますよ?」
「そう?それならよかった」
「?」
だって、私はクリス様の悪役令嬢ですから。クリス様が困るような、ちょっとした意地悪をするのです。
それが、私が考える悪役令嬢がすることですから。
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