第二王子・クリス視点
宰相のアルスの言葉を聞き、父上も驚いていたが、一番驚いているのは僕だと言いたい。
どおりで最近、書類仕事が多いと思った!!
やってもやっても、永遠に追加される書類、書類、書類。
しかも、どれも放っておいたら問題になるものばかりだ。
僕に回ってくるほど、この国は今危険な状態なのかと思っていたのに、そんな理由だったなんて……
てっきり、フィーア姉様と婚約した僕に対する嫌がらせだと思っていた……
「…クリス様」
「どうした、ニア」
「ちょろいですね」
父上が母上にごねている間に、こっそりと近づいてきたニアがよくわからないことを言ってくる。
「…どういうことだ?」
「いえ、宰相様の言葉に、私怨ではなく、この国のことを思ってたんだと思ってらっしゃいそうだったので、つい……」
「何がいいたい」
「いえ、宰相様が言っていたことは事実ですよ。ですが、クリス様が必要だったのは三割ほどだけです」
「……は?」
「つまり、クリス様が処理していた書類の七割ほどは宰相様のみで処理ができた書類だということです」
「……」
どういうことだ?つまり、僕がやってきた書類のほとんどは僕が処理する必要はなかったと。つまり……
「やはり、私怨だったのか!」
思わず叫んでしまい、みんながこちらを向く。フィーア姉様は驚いた顔をし、アメリアは情けないような者を見るような目を向ける。
当の本人である宰相は含み笑いをし、アレンは笑いを堪えていた。
くそッ、どうしてあんな奴らからフィーア姉様のような素晴らしい人格者が生まれるんだ!
「衛兵、陛下を連れて行きなさい」
「離せ!わしを誰だと思っておるのだ!」
「そういえば陛下?」
「なんだ!」
「この国に入ってきた薬物のことに関して、どう思われますか?」
「何を当たり前のことを!そのようなことをしている隣国に対しては抗議を行い、この国に広げているものは処刑に決まっているだろう!」
「ええ、そうですわね。それで陛下に一つ言わないといけないことがあります。広げているのはシーラという、隣国のスパイでしたよ」
「……嘘だ。そんなこと嘘に決まっている!」
母上が言っていることは事実だ。どうして、ブルーム男爵が隣国とコンタクトを取れたのが不思議に思っていたが、彼女がスパイであるならば納得がいく。
だが、それ以上に問題が出てきた。
「後でじっくりと証拠を読めばあなたも納得するでしょう。では連れて行ってください」
衛兵に連れて行かれる父上は先程までの威勢はなかった。ことの重大性に気づいたのだろう。
今、何か発言するのであれば、彼女、シーラを守って国を貶めるか、国を守るためにシーラを犠牲にするかを選ばなければならない。
「父上には、沈黙ではなく、国と言って欲しかったです」
「……」
これで僕はこの国の王になることは決まった。いや、元々決まっていたが、予想以上に早くきてしまった。
はぁ、みんな僕がまだ成人していないのを知らないとかないよな…
「クリス様、一緒に頑張っていきましょうね」
「ああ!」
成人なんて関係ない。僕はこの国をよりよくなるように努力するだけだ!
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