18 私よりも…

 クリス様とお話しができた次の日、アメリアと一緒に学園に行ったのですが、教室で授業の準備をしていると、また面倒ごとがやって来ました。


「おい!この悪女め!今度はメアリーを奴隷にでもするつもりか!」


 ほんと、王子なのですから、この国の規則くらい理解していて欲しいものなのですが……

 この国では奴隷は禁止されています。それも厳しく。影の仕事の一部にもなっているぐらいですよ?


「ソフィア様は悪役令嬢ではありません!」

「そうです!ソフィア様はこの国のために努力を惜しまない方です!」

「私たちがソフィア様に助けてもらった数は数え切れません!」

「「「そうだ!そうだ!」」」

「なっ」


 マリア様の言葉を筆頭に、次々と私を擁護する言葉が第一王子にかけられます。第一王子は、そのことに心底理解できないという顔をしておられ、少し滑稽でした。


「お、お前ら、その悪女がどんなことをしたのか知っているのか!」

「ええ、悪徳貴族の横領を見つけ、取り締まりましたわ!」

「私たちの領地の不穏な問題も解決してくれましたわ!」

「違う!そうじゃない!その女は、俺を支持していた貴族共を全員潰したんだぞ!」


 私、そんなことをしたことないのですが…何を言っているのでしょうか?


「申し訳ありません。何のお話しですか?」

「今更知らないふりをしてももう遅い!この俺が気づかないとでも思ったか!」

「?」

「ソフィア様は知らなくていいことです。ソフィア様が私に教えてくれた言葉を思い出してください」


 アメリアに教えた言葉って、全部第一王子が悪いってことよね。けれど、今は違うんじゃないかなぁ。

 もう一度アメリアを見ると、今度は見惚れてしまいそうな笑顔を向けられ、何も言えなくなってしまいます。


 私は知っているのです。この笑顔をする人に何をいっても答えてくれないということを。


 お父様もお母様もお兄様も、クリス様でさえも私に何か秘密にするときは、みんなして笑顔を振る舞って、いつか必ず私もしてやるんですから!


 こほん、そんなことを考えている間に、第一王子がいなくなっていたのですが…


「さっ、ソフィア様。うるさいのは何処かに行ったので、教室に向かいましょう」

「え、ええ、でもアメリアは別のクラスよね?」

「はい。ですが、学園長に私の事情を話したら、快くソフィア様と同じクラスでいいと言っていただけました」

「そ、そうなの…」

「はい!正直、第一王子が同じクラスであることだけが心残りだったのですが、今の様子ですと、クラスには来なさそうですし、良かったですね!」

 

 それは…そうなのですけど。それを声に出して言うのは、ダメ…じゃないかな?

 周りの方も頷くのはやめましょう。一応第一王子なのですよ!?


 私より、アメリアの方が悪役令嬢と呼ばれるべきなんじゃないでしょうか…


 アメリアには、申し訳ないですけど、そう思っても仕方ないですよね…

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