第一王子視点
「ダンとピーターが来ないとはどういうことだ!」
「申し訳ありません、殿下…」
第一王子である俺が呼んでいるのというのに、来たのはこいつただ一人だ。以前までは三人揃って来ていたものを。
「俺を舐めているのか?」
「とんでもありません。ただ…」
「ただ、なんだ!」
「そ、その…僕ももう今日で終わりにして欲しいのですが…」
「ふ、ふざけるな!」
「ひっ、ごめんなさい」
腰につけてある剣に手を掛け、思いとどまる。今ここで、こいつを殺しても、父上にまた悪印象を与えるだけだ。今は我慢だ。我慢。
「…それで、理由を言え!」
「殿下のせいです!全部、全部!殿下が無能だから僕は次期当主を弟に取られたんだ!殿下がローズ家をしっかりと止めてくれないから、他の二人も一緒ですよ。殿下のせいで、僕たちの未来はなくなりました。ではもう会うことはないでしょう!失礼します」
「おい!待て!ちくしょう、おい、お前!あいつを捕らえて俺の元に連れてこい!」
「お断りします」
今こいつはなんて言った?断る?俺の命令だぞ?第一王子の命令だぞ?ふざけているのか。
「ふざけるな!お前、誰の命令を無視しているのか分かっているのか!」
「ええ、分かっていますよ。王太子殿下から、第一王子の命令は全て時間の無駄なので、無視しろと勅命が出ています」
「なっ、時間の無駄だと…」
「では、失礼します」
「おい、待て!くそっ」
王太子だと、父上はもうクリスを王太子にしたことを発表したのか。あれだけソフィアの悪事をいつも伝えているというのに、まだ父上も母上も理解していないのか。
ふざけるな!あいつは、あの悪女は王妃などに向いていない。あんな奴が王妃になれば、この国はあいつの我儘によって終わってしまう。
今だってそうだ。俺のことを気に食わないから、俺を支持していた貴族を根こそぎ捕らえたに違いない。そんな姑息なやつに王妃なんて重要な立場が務まるものか!
もう一度、父上たちに言いに行かなければ。この国を思うのであれば、ソフィアではなく、心優しいメアリーを王妃にするべきなのだ。
そして、この俺様が王になるのが、一番この国のためになる。そのことをもう一度話し合わなければ!
「父上!父上!話があります!この国を思うのであれば、王太子の件、王妃の件はもう一度考え直すべきです!」
「これを連れていけ。話の無駄だ」
「父上、どうしてそんなことを…ソフィアだな!父上、あいつを信用してはなりません!父上は騙されているのです!」
「黙れと言っている。これで二度目だ。ソフィア嬢に関することで、三度目はないと思え!連れて行け!」
「父上!父上!」
くそっ、父上はもうだめだ。完全に騙されている。こうなれば俺が…そうだ!卒業式がある。そこで俺があの悪女の化けの皮を剥がして、二度とこの国の大地を踏めないようにしてやる!
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