第二王子・クリス視点
はぁ、分かっていたとはいえ、ここまで問題が山積みになるとは予想以上だったな。怪しそうな家に送り込んだとはいえ、ここまでとはな。
「ご苦労様、このまま継続で頼む」
「分かっています」
「失礼します、クリス様」
「堅苦しいのはやめろ、アレン」
「そんなわけにはいきません。なにしろ、クリス様は第二王子殿下であり、王太子様なのですから」
「それをどこから!って、はぁ、お前は知っているよな」
「ああ、どこかの誰かさんが二度も俺の可愛い妹を悲しませてくれたからな」
「すまなかった」
「いやいや、謝らないでくれ、姉のように慕っていたのに、そのことを忘れられた奴をいじめる趣味はないんだ」
「アレン…お前」
気にしていることを言ってくれる。それだけ、ローズ家にとって王族は信頼に応えられなかったということだろう。まあ、愚兄の家庭教師もローズ家当主が推薦したものではなく、別の者を当てた結果、こうなったというのだから、父上もローズ家当主には大きく出ることができない。
「言っておくが、俺を含め、ローズ家の全員はこの国を出てもいいと思っている。次に何かあったらすぐに…だ。で、そいつがどうしてここにいる?答えによってはもう俺は知らんぞ」
「そいつは俺の協力者だ。威圧するな」
「協力者だと…、信用できるのか?」
「信用しているよ。ほら」
俺はアレンにさっきの報告で渡された資料を見せる。そこにはここ数日のある貴族の取引の証拠がびっしりと書かれている。
「これは…」
「彼女の成果だ。これでも疑うか?」
「いや、それなら俺からは何も言わないよ。だが、他の説得などはちゃんとしろよ。俺からは何も言わないだけだからな」
「…分かってる」
「そうか、それならいい。それより、本題なのだが、これを見てほしい」
「これは?」
「さっきの報告書と同じようなものだ。商人を管理していたら隣国の商人が怪しい動きをしていてな。それの報告書だ」
「はぁ、また俺の仕事が増えるのか。俺はまだ学生にもなっていないんだがな」
「じゃあ、あれに渡すか?」
「やめてくれ、仕事が五倍ぐらいに増える」
愚兄に渡したら、喜んで敵に資料を渡しそうだ。いや、きっと渡すだろう。そんな事態になったら堪ったものではない。考えただけでも胃に穴が開きそうだ。
「じゃあ、しっかりと手綱を握っておけよ。もうすぐ学園も卒業だろう。その時に動かれたらそれこそ面倒なことになるぞ」
「そのタイミングで常識的にしないだろうと思いたいんだけどな」
「……」
「その目で見ないでくれ、分かってるよ」
あの愚兄がそんなことを考えられないことくらいわかっているよ。少しの希望くらい言ってもいいではないか。はぁ、どうして俺はあれの弟なのかな…
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