第107話 「戦役の終わり」
皆の前に連れて来られた、あのセロリィが
私達は
「この
余りの
結局、どの国の者に聞いても彼女の身を欲しがる国は無く、命を取る価値も無いとの結論でした。
彼女の事よりも、サンドランド国のケーバブ様とノースランド国王のピッツア様との涙の再会の方が大事だったのです。
そしてその話の中で、シャルお婆さんのお孫さんの夫ターコスさんがそのお二人の親友という事が分かり、皆で
何という運命の導きなのでしょう。
散り散りになっていた親友の再会に、私達の事を思い出し涙ぐんでしまいました。
でも、そんな楽しげな話をしていると、またセロリィが
「おのれ等! 我の言葉を
余りに
しばらくすると、オーク族の者が広間入って来て、セロリィの身を要求しました。
彼らはセロリィに脅され、多くの大切な仲間を失ったそうなのです。
何よりも、彼らの大切な王子がこの戦争で亡くなった事に、深い悲しみとセロリィへの強い怒りを覚えていました。
私達にはセロリィは特に必要有りません。
誰も反対する者がおらず、セロリィの身はオーク族に引き渡される事になりました。
オーク族がセロリィに近づくと更に喚きます。
オーク族の戦士が憎々し気にセロリィを
すると、オークの戦士が容赦なくセロリィのお腹を蹴り上げたのです。
私は余りの
オーク族を手で制し
痛みが治まったセロリィは、私に気が付くと憎々し気に睨んで来ます。
「可哀そうな人……」
感じた事を思わずそのまま口に出してしまいました。
セロリィは私の言葉に顔を
本当は言いたい事が山ほどありましたが、今の状況でそれを言うのは、このセロリィがやって来た卑劣な事と変わらない気がしました。
ただ、一言だけ伝えておかなければいけない事があったのを思い出し、セロリィの前にしゃがみ彼女の目を見つめます。
「ポコを助けてくれてありがとう。では、さようなら」
セロリィは一瞬目を見開くと、何か唸りながら涙ぐみました。
私は直ぐに背を向けて皆の元へと戻ります。
嫌味な言い方をして少し罪悪感がありましたが、私にだって少しは黒い心が有るのです……。
皆の所に戻ると、私の前にルコラ王子が
背後からセロリィが喚いている声が聞こえて来ましたが、もう振り向く者は誰も居ません。
オーク族の声と共に、再び鈍い音と
オーク族が何処かへ連れて行ってしまった様です。
ルコラ王子は貴族や領主達との交渉の功績が認められ、自治領で王位を守る事を勧められましたが、その身分を捨てる事を宣言しました。
結果、チュオウノ国の領土は三国で分割する事になり、チュオウノ国は歴史から姿を消したのです。
ところがその後、奇妙な事件が起こりました。
元チュオウノ国の東の果てに有る山脈の
領地を追われた貴族と、食い
王の名はトマトゥル、妃はピマンという名だそうです。
その土地はノースランド国が得た領地でしたが、荒れ果てた土地で、何の影響も及ぼさないと判断され、そのまま放置されたそうです。
――――
私達は藷所野へと戻りました。
でも、沢山の人達が藷所野の街に集まり、大変な賑わいです。
三人で肩を組みながら泥酔しているケーバブさんとピッツア国王にターコスさん。
その脇で、ミントさんと笑顔で話しながら、赤ちゃんを抱っこしているシャルお婆様。
ドワーフ族の皆さんと美術品の制作と交易について話し合っているルンダーン王子。
ベニさんを抱きしめて離さないアルフェリオンさんに、いつの間にか黒衣騎士団の副長さんとの結婚が決まった美しいエレンミアさん。
結婚は副長さんに先を越されたものの、それに続いた団長とサキさん。
いつも仲の良いシズさんとペロの周りには、沢山の妖精達が舞い踊っています。
オーガ族の皆さんに囲まれながら、一時も離れないハナちゃんとボンさん。
私達をずっと助けてくれているキコさんご夫妻。
大好きな街の人達や、街を守ってくれた藷所野ファミリアの仲間達。
そして、私の膝の上には愛するポコが居て、傍らには何故かルコラさんが座っています。
私はこの素敵な時間を胸に刻みました……。
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