第53話 「狡猾なセロリィ王子妃 Ⅰ」
「トマトゥル王子ご夫妻のご到着にございます!」
チュオウノ王国の国境の街に、歓迎のファンファーレが鳴り響いた。
セロリィ王子妃は、胸を張るトマトゥル王子から一歩下がり、付き
「トマトゥル王子。この度は王子
「ふむ。先ずは歓迎に感謝する」
「はっ!」
「私が来たからには勝利は間違いない。皆を喜ばせてやる故、しっかりと付いて来いよ」
「心強きお言葉、兵達も喜びましょう」
領主も重臣たちも、この王子の評判は知っている。表面上は恐れ入っているが、内心は全く逆であった。
出来る事なら王子の軍だけで戦って貰い。敗北しても被害を最小限に抑えたいと思っていた。
王子はその様な気持ちを知ってか知らずか、
「セイホーウ国の国境へは、私の軍が攻め込む。お主らの兵は、こちらの国境の防衛でもしておるが良い」
「は、はい? 何と?」
「お主らの兵は、後衛に回すと言っておるのだ」
領主達は、本当はそう有りたいと思っていたのだが、王子からそう言われてしまうと、臣下として、それをそのまま受け入れる訳にはいかなかった。
「何の。我が兵達が先陣を承ります。後衛などに甘んじる訳には参りません」
「ふむ。最もだが、こちらには策が有る故、お主らには任せておけぬ」
「お待ち下さい。策がございますならば、なおさら先陣を……」
「ふむ。
「
「策の一手目の大事な任務だ。強く賢き者共を集めよ」
「……御意」
――――
「堂々として、まあまあ良かったわよ」
金装飾が施された豪華なソファーに腰掛けながら、セロリィ王子妃が微笑んでいる。
王族用の特別室で、室内にはトマトゥル王子以外は、セロリィ王子妃の配下の者しか居ない。
トマトゥル王子は
「もう直ぐ本隊が到着するわ。準備が整ったらパクティお願いね」
「はい。お任せ下さい」
「それと、オークのお姫様を起こして頂戴」
セロリィ王子妃に
姫は目を覚ますと、最初に自分の下半身を確かめる。
今日は誰とも繋がっていないことを確かめると、セロリィを
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