第30話 「セロリィ嬢の策略 I」

 セロリィ嬢達が住む町の外れに、モンスターや獣が駆逐くちくされ、誰も立ち入らなくなったダンジョンが有る。

 入口は閉鎖され鍵がかかっているが、その鍵をセロリィ嬢とパクティ達が持っていた。

 入口の上に倉庫を建て、パクティファミリアの倉庫として使用しているので、彼女達が倉庫に出入りしても、町民で不思議に思う者は居なかった。


 そのダンジョンに入り、そう遠くない場所に広い洞窟がある。

 そこに小部屋の様に仕切ってある牢獄ろうごくがいくつもあり。そこにはパクティ達に捕獲ほかくされたモンスター達が閉じ込められていた。

 沢山のゴブリンがひしめいている牢、鎖につながれている屈強そうなホブゴブリン、コボルトやオークも牢に入っている。種族はバラバラだが、捕らえられているのは殆どがおすだった。


 目的は、セロリィ嬢の性癖せいへきを満たす為に奴隷どれい卑猥ひわいな事をさせるため為だけではない。領主の息子ケーバブ達を罠にめた時の様な、おとりとして使う用意でもあった。


 そこに捕らえられているモンスター達の中に異色の者達がいる。

 大きな体躯たいくと立派な牙を持ったオークの雄と、可愛らしいドレスを着ためすのオークが隣り合った牢に入れられているのだ。屈強そうな雄のオークは鎖に繋がれ、体の自由を奪われていた。


 セロリィ嬢とパクティ達が、ニヤニヤしながら牢に繋がれているオークを眺めている。


「ほらほら、豚の王子様。口では偉そうな事を言っていても、下半身は今日もお姫様を裏切ってるわねぇ」


 牢の中では、大量の媚薬びやくを飲まされた奴隷が、オーク族の王子と後ろ向きに繋がり腰を振っていた。

 オーク族の王子は両手足を鎖で繋がれているが、体を動かす事はできる。

 捕まって直ぐは「人族ごときが……」などと言って逆らっていたが、発情した奴隷達に執拗しつように下半身を刺激されると、あえなくモノが起ち上がった。

 そして、隣の牢に婚約者の姫が居るにもかかわらず、腰を振りうなりながら果てたのだった。

 それから生殖行為を繰り返す度に、徐々に抵抗をしなくなり。セロリィ嬢達に従順な態度を示すようになって来たのだ。


 セロリィ嬢がパクティに耳打ちすると、ピマンが牢の中に入り、まだ繋がっている最中の奴隷の女を引きはがした。

 オークの王子はセロリィ嬢達に、起ち上がったままのモノをさらしている。


「珍しく人語が話せる賢い王子様。あんたに話が有るのだけど」


「な、何だ……」


「あんたの一族には戦士が何人くらい居るの?」


「我が一族ならば二万は居る」


「全員あんたの指示に従うの?」


「もちろんだ。我はオーク族の王子である」


 その言葉を聞いて、パクティが失笑した。


「その立派な王子様が、こんな所で何をやってるんだい? お笑いぐさだねぇ」


「……」


 このオークの王子と婚約者の姫は、南方の森の中でお楽しみ中だった所を、モンスター達を捕獲ほかくする為に遠征中だったパクティ達に見つかってしまったのだ。

 何となく身なりの良い二人を捕まえようという事になり、ドリアの攻撃魔法で不意をついて気絶させた。

 護衛のオーク達が慌てて挑んで来たが、簡単に打ち倒してしまい。二人を捕獲用のおりに入れて、このダンジョンへと連れてきたのだった。


 簡単に捕らわれた事を思い出したのか、しおれてきた下半身を晒したまま、オークの王子は口惜しそうな表情をしている。


「パクティ、私たちが豚よりも強くてかしこ過ぎるのよ」


「いえいえ、全てお嬢様のお知恵のお陰でございます」


「ふふ。ありがとう。で、王子様にお願いが有るのだけど」


「何だ?」


「えっ? 王子様、その口調で大丈夫?」


「い、いえ、申し訳ありません。何でございましょう」


「ふふん。良いでしょう。その二万の戦士達を、全て私の配下にしなさい」


「えっ……。そ、それは無理でございます。皆が承知しません」


「へー、そうなの。あんたはご立派な王子のくせに、説得出来ないって事?」


「……」


「それじゃあ仕方が無いわね。ドリア、ゴウヤ!」

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