第28話 「異世界からの転生者」
「それでね。そこにいた人に、私はいつ転送されるのか何度も聞いていたの……」
「それは誰? 神様?」
「うーん。分からない。でも、一刻も早くミコ様の傍に行きたくて、本当に焦っていたわ」
「でも『時が満ちておらぬ』とか言って、聞いてくれなかった。随分と長い時間待たされた気がするわ……」
突然現れた彼女の話は衝撃的でした。
彼女の名前はサキさんと言うそうです。
ボンさんとガイさんを除いて、私達は全員サキさんと同じ別の世界の人間で、高校という場所に一緒に通っている仲間だそうです。
しかも、私達は人族では無く、あちらの世界では
実は私は
私の名前はミコという名前だそうですが、全く記憶に有りません。
他の皆は、それぞれそのままの種族だった様です。
シズさんは
皆の能力が高いのは、転生前の能力が高かったからだと言われました。
そして一番驚いたのが、ポコがコウタという男の子だったという話でした。
私は彼の事が大好きだったそうで。彼に会うために周りの皆を巻き込み、高校という人族の社会へと入り込んでいたそうなのです。
そしてそこで、邪悪な魔王の様な者と戦い。その最中に魔王の術でこの世界へと飛ばされたと言う事でした。
彼女が言う通り、私達にはある時を境に、それ以前の記憶がありませんでした。
「サキさん。あなたは前の世界に戻る方法を知っているの?」
「いえ、全く分かりません」
「良かった。私たちは全員その世界の記憶が無いし。今は皆で幸せに生きているから、このままで良いのよ」
「ミコ様がそうおっしゃるのなら、私には
「あの……。その『ミコ様』も止めて下さいますか? 私はレイという名前で幸せです」
「え? あ、はい。分かりました、レイ様とお呼び致します」
「サキさん『様』は要らないわよ。前の世界での関係は、前の世界での話。この世界ではお友達になりましょう」
「お、お友達……。皇女のミコ様とお友達…………」
サキさんは
しばらくすると、サキさんがうっすらと目を開きました。
「レイさん? 私どうしたのかしら」
サキさんが、キョトンとしています。
「前の世界での話をしている時に、気を失ったのよ」
「前の世界の話? 何ですかそれ」
「サキさんが、私たちは全員別の世界からの転生者だと……」
「うふふふ。レイさん私をからかっているの? 転生なんて有る訳ないじゃないですか」
「……」
私たちは顔を見合わせました。
サキさんは気を失った一瞬で、話した事や前の世界の記憶を完全に忘れてしまった様です。もしかしたら、私たちもそうだったのかも知れません。
サキさんが話した前の世界の事は、きっと本当の事だと思います。
でも、私たちはこの世界で出会い、助け合いながら一緒に楽しく過ごしています。
それで十分なのです。
サキさんにこれからどうするのか聞くと。皆と一緒にいる事しか考えていないと言っていました。私もサキさんと一緒に居る夢しか見ていません。
私たちは全員、何かしらの
サキさんは「オレリル鋼の剣」を使いこなせる高い戦闘能力と、多くの魔法が使える凄い人でした。
いきなり現れて驚きましたが、心強い仲間がまたひとり増えたのです。
危険なダンジョンの中ですが、何とも不思議な気分に浸りながら、皆と楽しい夜を過ごしました。
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