第25話 「卑劣な印綬」

 ローブを被った老婆の前で、裸のミントが意識の無い男にまたがり、やっと起つ様になった男のモノを受け入れている。


 老婆は男の印を消す方法を思いついた日から、男の上に裸のミントを跨らせ、めすの匂いを嗅がせながら、手や口を使い男のモノを執拗しつように刺激させた。

 男の体は最初の頃は全く反応しなかったが、徐々に血色が良くなり、尿を垂れ流すだけだったモノも、時々反応を示す様になってきた。

 そして、男のモノがミントと行為が出来る程になったのを確認すると、ミントに命じ直ぐに男のモノを受け入れさせたのだ。


蹄鉄ていてつ! もっと嬌声きょうせいを上げよ、もっと腰を振れ! 男を逝かせるのじゃ!」


「……おばばの声が聞こえたら、この人のモノがしぼんだわよ。静かにしてて! それと私はミント!」


 ミントは老婆が自分に命じている事が、嫌がらせや性癖せいへきを満足させる為では無く、純粋に研究の為だという事を理解している。

 老婆の方もミントを服従させる様な事はせず、枯れた婆には無理だからとお願いしていたのだ。

 行為自体は淫靡いんびで他言出来る様な事では無い。

 だが、二人は至って真面目な理由で、意識の無い男に性的な刺激を与え続けてきたのだ。男の意識を回復させると言う目的の為だけに……。


 老婆とミントは共に過ごすうちに、いつしか祖母と孫娘の様な仲になっていた。

 彼女の顔には、蹄鉄の形をしたあざは既に無い。

 ミントに怒られた老婆は苦笑しながらその場を離れ、部屋の隅からミントの頑張りを見つめていた。

 ミントは男の耳に口を寄せ、聞こえている事を信じて、何やら卑猥ひわいな言葉をつぶやいている。

 しばらくすると、彼女は何かを感じ取ったのか、腰の振りを一段と激しくし始めた。

 嬌声を上げ、自からが絶頂に達する事を男に聞こえる様に叫ぶ。


 そして、ミントが上気した顔を老婆の方へと向け、微笑みながら男の上から立ち上がった。

 彼女の足の間から男の精がポタポタと垂れ落ちている。

 老婆が嬉しそうに駆け寄ると、男はうつろな目をしながら意識を取り戻した。




 男が治癒ちゆ魔法を受け付けず、意識を取り戻さない原因は、男のモノの奥にある精管せいかんに施された「印」だった。

 恐らく意識を戻させずに、衰弱させて殺すつもりだったのだろう。

 この印を消す方法はひとつだけ。男自身の精のほとばしりで精管の印を消し去るしか無かったのだ。

 意識を失い体の反応が殆ど無い状態では、ほぼ不可能だと言える。

 だが、老婆の知恵とミントの献身が身を結んだのだった。


「何とも卑劣ひれつな印をほどこやからじゃな。先ずはこの男の回復を待ち、詳しい話を聴いてみようかの……」


 老婆が男に治癒ちゆ魔法を施す。

 男達を誘拐した話まではミントに聞いていたが、洞窟内で何が行われたのかまではミントは知らなかったのだ。

 水場で身を清めて来たミントが、老婆のそでを掴みながら、男の顔を覗き込んだ。

 男は目が合うと微笑みながら手を伸ばし、ミントが手を握ると優しく握り返した。

 男は彼女の名前がミントである事を知っていた。数日前から声は聞こえていたのだ。


「ミントさんありがとう。君のお蔭で生き返る事が出来たよ」


「ううん。私があなたに酷い事をしたから……」


「悪いのは君じゃない。俺の名前はターコス。体が回復したら、何かお礼をさせてくれ」


「うん」


「それと、もし嫌じゃ無ければ、今度は意識がある状態で……」


「えっ? ああ! うふふふふ」


 何となく良い雰囲気の二人を見ながら、老婆が呆れたように呟いた。


「二人とも。助けてやったのは、わしじゃろうが……」


 老婆の家に明るい笑い声が響き渡る。

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