第23話 「オーガと共に」
オーガの里でのお手伝いが一段落すると、いよいよ「オレリル鋼」の鉱石を求めて、ダンジョンの深層に向けて出発です。橋のたもとに、大勢のオーガ達が見送りに来てくれました。皆に手を振ってしばしのお別れです。
ところが、橋を渡ると旅装を整えた筋骨隆々のオーガと、見上げる程大きな重装備のオーガが立っていました。ハナちゃんと訓練をしてくれていた警備兵達です。何処か旅にでも出るのでしょうか。
筋骨隆々のオーガが私達の前に立ちました。背はそんなに高くありませんが、鍛え上げられた体は、
「おまたちと、いしょ、いく、にゃ」
何となく私達の言葉を話している様な気がします。
「ちょろから、いわて、おれら、しょぶに、かた、にゃ」
「おー、凄いにゃ! 大分言葉を覚えたね」
ハナちゃんが喜んで飛び跳ねています。
「私と長老で言葉を教えてあげていたの!」
警備兵の話す言葉の最後に「にゃ」が付く理由が分かりました。
どうやら、長老は最初から私達に強力な護衛を付けて行かせるつもりだった様です。何と警備兵の多くが希望したため、模擬試合で勝利した二人が付いて来る事になったということでした。
「こっちの小さいのが『ガイ』で、大きいのが『ボン』よ!」
ハナちゃんの説明で、小さいという言い回しが正しいのかは何とも言えませんが、ガイさんとボンさんという名前の様です。
「おまたちと、いしょ、いく、にゃ!」
屈強な
長老と里の皆さんの厚意を有難く受取る事にしました。
「つてこい、にゃ」
二人のオーガが私達を挟み守る様に歩き始めました。
彼らは鉱石の採掘できる場所へと、私達を安全に案内するつもりの様です。
屈強でダンジョンに詳しい彼らと一緒に行動できるだけでも有難いのに、お姫様の様に守って貰えるなんて。オーガの里の皆さんに感謝です。
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しばらく歩いているうちに、もうひとつ驚かされる事がありました。なんとハナちゃんがオーガ語で話をしているのです。
「は、ハナちゃん、オーガ語が話せるの?」
「ちょっとだけね! いつも一緒に訓練していたら、戦いに関する言葉を覚え始めて、そこから何となく他の言葉の意味も分かる様になって来たにゃ」
「にゃ!」
オーガ達がハナちゃんの語尾を真似て笑っています。
ハナちゃんには道々オーガ語を習いながら歩きました。
里に戻ったら、母オーガと少しお話が出来そうです。
オーガ達の同行は本当に助かりました。
危険な場所や罠を避けてくれる上に、これまで私達に襲い掛かって来ていたモンスター達も、屈強なオーガの姿を見ると直ぐに逃げ出す様になったのです。
それに、安全な場所にキャンプを張ってくれて、眠る時はボンとガイが交代で番をしてくれました。
それでも、深層に近づくと襲い掛かって来るモンスターも出て来ました。
遭遇すると必ず襲い掛かってくるのがミノタウルスです。
猛牛の頭を持ち二足歩行の大きなモンスター。斧や棍棒を持って
ですが、私達が戦おうとする前にボンさんとガイさんがが素早く突進して行き、屈強なミノタウルスをあっさりと倒してしまいました。
私達は一度も戦う事無く、ダンジョンの最深部へと向かっています。
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そろそろ最深部に到達したと思った時でした。開けた場所で大勢のモンスター達に囲まれてしまったのです。
サラマンダーと言われる炎を噴く大トカゲが数匹と、ミノタウルスが大勢出て来ました。
しかも、その後ろからボンさんと変わらない大きさのトロールが現れたのです。
ボンさんとガイさんは、一番厄介そうなトロールに突進して行きました。いよいよ私達の出番のようです。
サラマンダーがボンさん達に炎を浴びせようとすると、シズさんが妖精を使役し巨大なブリザードを作り炎を消し去ります。
そして、もう片方の手から
ベニさんはトロールの足元に泥沼を作り、
ガイさんとボンさんがすかさず攻撃を加え、トロールにトドメを刺しました。
そして圧巻だったのが、ハナちゃんでした。
彼女はミノタウルスの群れに飛び込んで行くと、目で追う方が大変な
「イエーイ! ボン達との訓練のお蔭にゃ!」
「にゃ!」
ボンさんがハナちゃんに駆け寄り、嬉しそうに抱き上げます。
ガイさんはモンスター達を仕留め損ねて無いか確認すると、私達の前にやって来ました。
「おまたち、つよな! つよな! にゃ!」
どうやら
私はハナちゃんに習った「ありがとう」をオーガ語で言ってみました。
ガイさんが笑ってくれました。通じた様です。
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