素敵な仲間と共に

第18話 「探索の準備」

 私が求めている希少鉱物の『オレリル鋼』を採掘出来る言われているダンジョンは、遠くの山のふもと

 ダンジョンを目指す私達は、近くの街まで「甘藷かんしょ」を配送する荷馬車に乗せて貰う事になりました。

 藷所野の街を長期間離れる事になるので、もちろんポコも一緒。

 目指す街までは数日かかるので、途中でキャンプを張り、皆で野宿をしながらの移動になります。


 夜は獣除けの焚火たきびを囲みながら、街での生活とは違う雰囲気に話が弾み、恋の話題で持ちきりに。

 そして、皆の失恋話や失恋話や失恋話が続きます。

 良く考えたら、私達には恋を成就じょうじゅさせた人がいませんでした。

 結局、荷馬車の手綱たずなを握るご夫婦の話を聞き。お二人のめに胸をときめかせる四人でした。


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 出発してから三日後に目的の街に到着。なかなか大きくて綺麗な街です。

 ご夫婦の荷下ろしを手伝い、宿を取ってからギルドへと向かいました。


 ギルドでファミリア証を提示して、ダンジョンへの自由探索の申請を行います。

 そして、探索予定期間を記入して救助保険料を支払います。

 救助保険とは、予定期間を越えても帰還しない場合に、救助隊が編成されて探索が行われる資金源になる保険金の事で、ギルドを通じて行う全ての依頼や探索に対して、そのリスクに応じた保険料が発生する仕組みになっているのです。

 予定期間を越えても救助隊を編成しない様に依頼する事も出来ますが。その場合でも最低金額の保険料は支払わなくてはならないのです。


 ギルドへの申請を済ませて、宿に戻る前に食事をする事に。

 食事が出来る店の前を通ると、美味しそうな香りが漂って来て、堪らずお店に吸い込まれてしまいました。

 この街の周辺は酪農らくのうが盛んなのか、肉と乳製品がとても安価な様です。

 皆が大好きなチーズフォンデュを、五人で心行くまで堪能しました。


 美味しい果実のデザートまで食べ終わると、ポコ以外の四人は食べ過ぎてお腹がパンパンです。

 装備のドレープをしっかりと取っておいた事を皆で感謝しました。

 本当は動き易さを追求してのドレープ部なのですが、まさか満腹時のお腹の締め付けを緩和できるなんて……。なんて素敵な装備なのでしょう。


 それはそうと、食事をしながら気が付いてはいたのですが。

 ギルドで申請を行っている時に目を付けられたのか、十人位の男性冒険者達が同じ店で食事をしながら、私達の方を伺っています。

 食事中は声を掛けてきませんでしたが、お店を出て少し暗い通りを歩いている時に急に声を掛けられました。


「なあ、これから楽しまないか? 皆で気持ち良い事しようや」


 まあ、何てストレートな告白でしょう。

 面倒な恋の駆け引きなどせずに、会ったその日に恋を成就させる事が出来るのです。それも一晩で複数人と。

 私達四人は遂に男性と添う事が出来るのです! 

 喜んでこの申し出を受ける……訳がありません。馬鹿にするにも程があります。

 それに、散々もてあそばれた挙句。装備も何もかも奪われて、奴隷として売り飛ばされると聞いたこともあります。

 危険です。見知らぬ男性を相手にしてはいけません。


 でも、無視をしていると声を荒げて追いかけて来ました。

 結局、力ずくで襲うつもりの様です。


「シズさんベニさん、お願いしても良い?」


「二人で十人と楽しめば良いのかしら?」


「……」


「はいはい、分かっていますわよ」


 シズさんが振り向きざまに大量の輝く精霊を放ちます。

 男達は不意に現れた輝く精霊たちに視界をさえぎられ、その場に釘付けになりました。

 ベニさんが石ころを投げつけると、男達の足元に水溜まりが出来て、男達はひざまで水に浸かってしまいます。

 即座にシズさんがブリザードの魔法を使い。その水溜まりを凍らせてしまいました。


「氷が溶けるまで、そこで仲良くお話でもしていて下さいませ」


 氷で足を固められた男達が、何やら罵声を浴びせる声が遠ざかって行きます。

 私達の純情は守られました。


「イケメンが居なかったにゃ」


 意外と冷静なハナちゃんの言葉に、皆で思わず笑ってしまいました。


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 宿に戻り、ポコを抱っこしながらベッドに横になります。

 人に内容を話した事はありませんが、今日はポコとのどんないけない夢を見てしまうのか……。

 不安と共に期待をしてしまう悪い自分に気が付いてはいるのですが、純粋にポコが大好きな気持ちが勝り、毎日抱きしめて眠りに就きます。




 明日から『オレリル鋼』を求めてダンジョン探索が始まります。

 どの位の期間ダンジョンに留まるのか分からないのでポコも一緒です。

 実はポコ専用の防具も作成済み。

 ポコが嫌がらないのを良い事に、王子様風のいで立ちに仕上げました。

 五人で並ぶと、小さな王子様と四人の聖女といった感じです。

 聖女はちょっと言いすぎでしょうか……。

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