第17話 「ファミリア結成」

 購入した広大な荒地は、シズさんとベニさんのスキルで甘藷かんしょ作りに適した土地に整えられました。

 見渡す限りの農地で出来た甘藷かんしょの収穫量は、とんでもない量になったのです。

 味も『飴芋あめいも』にする必要が無い位の甘い仕上がり。

 この辺りは気候が良く。土地を休ませる期間を置いても、甘藷を年二回は収穫できるそうなのです。

 キコさんは直ぐに行商ルートを利用して、国中の街へと甘藷の販売を始めました。

 彼女のお蔭で事業の方は順風満帆じゅんぷうまんぱんといった感じです。


 そして、甘藷畑で二回目の甘藷栽培が始まった頃。遂に四人の装備が出来上がりました。

 防具の性能としては納得いく完璧な仕上がりです。

 その上に、皆で機能性と装飾性を話し合い。とてもお洒落な見た目の装備になりました。


 ベース防具はワンピースの様なフォルム。その上にすその長いコートの様なメイン防具を重ねます。

 白を基調として、サファイアブルーを各所に配置した『清廉せいれん』なイメージに統一しました。

 一見動きにくく見えるのですが。超軽量の上に可動部のドレープを十分に取っているので、とても動きやすいのです。

 そして、風水と精霊の加護を付加し。防具の内側は常に快適な温度を保つ上に、物理攻撃も魔法攻撃にも耐え得る作りになっているのです。

 装備を着て四人で並ぶと、素敵な冒険者パーティが出来上がりました。


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 実は私にはどうしても欲しい鉱物があり、いつか採掘しに行きたいと思っていたのです。

 時間の余裕が出来た今。それを行動に移したいと思いました。

 でも、採掘できる場所は、とある危険なダンジョンの最奥と言われている場所です。

 私は三人に一緒にダンジョンに潜って貰えるか、お願いをしました。


「良いよー! いつから行くにゃ?」


「ええ、もちろん喜んで!」


「楽しみだね。腕が鳴るね!」


 難しいかと思っていたら、三人とも散歩に行く様な気軽さで了解してくれたのです。この三人が一緒なら恐れる物など何もありません。


 私が欲しい鉱物とは『オレリル鋼』と言う希少金属で。この金属で出来た剣は世界に数本も無いという噂です。

 採掘できると言われている場所に、本当に鉱石が有るのかどうかさえ分かりません。

 でも、どうしてもこの金属で出来た剣を作りたかったのです。


 理由は誰にも言った事がありません。

 実は奴隷の頃からある夢を見るのです。

 誰だか知らないのに、何故か知っている娘さんが私を訪ねてくる夢。

 最近はポコとの人には言えない夢ばかりを見ていますが。それでも時々彼女が夢に現れるのです。

 そして、必ず彼女が私達の前に現れ、皆と一緒に過ごす様になると確信しています。

 何故だかは分かりませんが、そう確信しているのです。


 実は彼女に合う装備も既に完成しています。

 私の見る夢の中では『オレリル鋼』で出来た剣を彼女に手渡す所で、いつも目が覚めるのです。

 この世界で最も希少かつ加工が難しいと言われている『オレリル鋼』。

 この鉱物を手に入れ、夢の中と同じ剣が出来上がった時。私達の前に彼女が現れる気がしているのです。


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 ダンジョンに潜る為には、冒険者ギルドにパーティを登録しなければいけません。

 お揃いの装備で身を固めた娘達がギルドに現れると、その場に居た冒険者達から一斉に注目が集まります。

 お店の常連さんは、見知った四人が装備を整えて現れた事に驚き。

 私達を知らない冒険者達は、綺麗にドレスアップした小娘がパーティ登録に来た事が愉快らしくて、事の成り行きを見守っているようです。


 他の三人はギルドに登録済みでEランクなのですが、私は初めての登録なので、最低のFランクからの登録です。

 はたから見ると、着飾った娘達が冗談でパーティ登録に来た様にしか見えません。他の冒険者達はクスクスと笑っていました。


 登録を終えて、ギルドからファミリアルームを購入する事を伝えました。

 受付のお嬢さんは余りの事に目を丸くしています。

 通常では数十人規模のファミリアですら、借りるのが精一杯のファミリアルーム。

 それを、Fランク冒険者の率いるパーティが、いきなり購入するのです。

 ギルド内は騒然としました。


 実はこれには深い訳があります。

 パーティ登録だけでは、ダンジョンへの自由探索は出来ないのです。

 パーティでは、あくまで依頼を受けてから、その依頼通りのダンジョンにしか潜れません。無理な事をして、遭難そうなんや全滅といった事を防ぐためのルールなのです。

 これがファミリア登録になると、自由探索が認められる様になるのです。


 ファミリアルームを持つという事は、私達がファミリア登録になるという事であり。私達のファミリア名を伝えなければいけません。

 実はここに来る前に皆で決めていた名称があるのです。


 私達の広大な甘藷かんしょ畑は、いつの間にか地名としで呼ばれる様になっていました。

 『見渡す限りの藷畑が広がる野』という事で、『藷所野』と呼ばれているのです。

 この地名が、私達四人のとある特徴と一緒なので気に入ってしまったのです。

 ですから、私達のファミリア名は『藷所野しょじょのファミリア』に決定したのでした。

 私達のファミリア名を聞いた冒険者達が爆笑します。


ファミリアか! こいつは良いや」


「おぼこファミリアかよ。大丈夫か?」


「あははは。私たちは加入したくても門前払いって事?」


 笑いたい人達には笑わせておけば良いのです。

 私達はその『藷所野』のお蔭で、沢山の人と一緒に働けて、莫大な利益を得る事が出来たのです。

 そして、ファミリアルームをいきなり買うと言う凄い事が出来たのですから。


 私達はファミリアルームに意気揚々と入りました。

 四人だけのファミリア結成です。

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