第12話 「みんなの装備」
静寂の中、
左手で刀身の状態を確認し、右手に持った鎚で調整を
あともう少しでイメージした通りの刀身に仕上がりそうです。
この状態に仕上げるまで三ヶ月かかりました。
ベニさんとシズさんの協力の下。皆でアイデアを織り込みながら刀身はイメージ通りに仕上がりました。
後は剣先部分の仕上げです。
剣先に込められた力を幾度も確認し。鎚で慎重に仕上げていきます。
そして『アマツマラの鎚』が、最後のひと叩きを感じさせてくれました……。
遂にハナちゃんの武器が完成したのです。
ハナちゃんの
素材になった大剣の品質が良く。このレイピアは、細身ですがいかなる打撃を受けても折れない強靭さを持っています。
そして剣先の鋭さは、貫通しない防具が無いほどに仕上がりました。
それだけではありません。
グリップの中には、ベニさんと幾重にも力を封じ込んだ風水の
このレイピアは大自然と精霊たちの力を
「レイちゃん……。これ凄いよ!」
ハナちゃんがレイピアを
しなやかな動きと連動して、無駄な挙動が全く生じません。
まるでレイピアの長さの分だけ、ハナちゃんの腕が伸びた様に感じます。
「これが私の剣……」
「そう。ハナちゃんの為にだけに存在する剣よ」
「剣って……本当はこんなに思った通りに扱えるんだね!」
「これがあれば、ハナちゃんは冒険者に戻れるわね」
これだけの動きが出来れば、ギルドで引っ張りだこになる事でしょう。
少し寂しいけれど、最初からの約束だから仕方がないのです。
「レイちゃん……」
ハナちゃんはレイピアを革の
「戻らないよ。私は皆と一緒に居たいから。冒険者に戻るなら、皆と一緒じゃないと嫌だよ。独りぼっちで追い出さないで……」
ハナちゃんが涙目で抱き付いて来ました。
私も彼女の言葉が嬉しくて、強く抱きしめます。
「ありがとうハナちゃん。私も一緒に居たかったの」
「うん」
「私ね。皆の装備を作るんだ。ハナちゃんも一緒に作ろうね!」
「うんうん。もちろん手伝うニャ!」
ハナちゃんは今日も元気にお店を切り盛りしてくれています。
私は皆と楽しく過ごしながら、皆の能力を最大限活かせる様な、素敵な装備を作りたいと思う様になっていたのです。
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シズさんの『精霊使い』スキルが上手く発動しない理由は意外な事でした。
実は彼女の持つ能力が高すぎて、呼び出せる精霊の種類が多過ぎたのです。
普通の『精霊使い』は、水や火などの系統毎に、せいぜい三種類の強度の違う精霊が使える程度なのですが。彼女は系統毎に十種類以上の精霊を呼び出せる程の能力を持っていたのです。
例えば、水系の攻撃で精霊を使役する時。シズさんが水を使った攻撃をイメージして精霊を使役しようとすると、呼び出される水系の精霊達は誰が呼び出されたのか分からなくて、都度違う精霊が飛び出していたのでした。
これをシズさんが使い分けるにはかなりの修練が必要になります。
全てを
でも、この問題を解決する為に、防具の
シズさんの言葉やイメージに反応して『籠手が自ら呼び出すべき精霊を選ぶ』という機能を持たせたのです。
そして、ベニさんと大自然の五大要素を封じ込めた宝玉を作り、籠手の装飾として配置。精霊にその力を与える事も出来るようになりました。
「そよ風」、「相手を吹き飛ばすような風」、「火を灯す」、「一面を火の海にする」、「水で浄化する」、「傷を
美しく装飾された白い籠手を着けたシズさんは、攻撃・防御・治癒の全ての魔法が使える大魔導士になってしまったのです。
冒険者どころか、王宮に仕える程の能力になったのですが、シズさんも私達と一緒にいる生活が大好きな様です。
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次はベニさんの籠手をシズさんの協力で作成です。
精霊を呼び入れる力を込めた事で、籠手に精霊の力が加わる様になりました。
ベニさんは小石に念を込めて投げるだけで『風水』スキルを発動させて、地形効果をその場に与える事ができる様になったのです。
お店で売っている誰でもが使える『風水効果アイテム』も素晴らしい物ですが、見渡す限りの場所を泥沼に変えたり、町を壊滅させてしまう程の大きさの竜巻を作ったりと、ベニさんも王宮勤務レベルの『風水師』になってしまいました。
ベニさんは「こんな力を使う場所がないわよ」と笑いながら、いつもの様に一緒に楽しく生活しています。
私は皆を守りたい一心で、次に防具の作成に取り掛かりました。
矛盾するようですが、ほぼ全ての防具を貫き通すハナちゃんのレイピアでも突き通されず、シズさんの魔法攻撃やベニさんの風水攻撃にも耐え得る、最高の防具を『クラフト』する事を目指したのです。
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