無事に勝利
強敵・荒垣シェパードを打倒したアーカムたちは、石棺を聖獣の待つ大祭壇へと移動させていた。
「カイロさんが来てくれて助かりましたよ」
「ふん。我としたことが存外に敵勢力を掃討するのに手こずってしまった。ゆえに助勢が遅れた。わん」
「いえいえ、タイミングは最高でした」
黒い巨人10機による焼却が天よりもたらされた時、アーカムはアンナを連れて、かろうじて回避することに成功していた。
すべては超直観により、事前に攻撃を察知し、攻撃範囲から離れることができたおかげである。
300mに及ぶ縦穴ができた時、あまりの威力に戦慄するしかなかった。
(喰らってたら俺はもちろん、アンナでも流石に助からなかっただろうな……)
光の柱によって穿たれた大穴は、周囲の地層も巻き込んでの大崩落を引き起こしていた。
アーカムとアンナは必然的に穴の底に落下してしまった。
落下した後のアーカムは冷静で、すぐにわんわん通信を使い、カイロと合流を果たした。
もちろん、初めはアーカムは上空へ逃れた荒垣を撃ち落とせないか試そうともした。
しかし、なぜか荒垣のほうから勝手に降りてきてくれたので、その必要はなくなった。いまでも原因はわかっていない。それは悪手だろ、と思ったが、上空へ逃げる雰囲気もなかったのでそのまま討伐することにしたのだ。
荒垣が落ちて来るまでの十数秒で、アーカムの超直観は稲妻のようにかけめぐり、明暗の策を上手い事機能させ、三人は見事に荒垣を討ち取ることに成功したのだ。
「我ひとりでも倒せたわん。貴様たちは本当になさけないやつらだわん」
「このわんわん……」
「まあまあ、アンナ落ち着いて」
(アンナさん、今にも斬りかかりそうです。いやあ、吸血鬼の力を使ったから、手が出るのがはやくなっちゃってるのかな?)
「めっ、ですよ、アンナ」
「うん」
「ふん、まあ、無事に開拓者たちを迎撃できたことはよかった。その点は感謝してやらなくもない……わん」
3人は大祭壇まで戻ってくる。
祭壇の近くにはちいさな狼たちが数十匹集まって、もふもふして身を寄せ合っていた。
石棺と氷の塊が置いてある。
(石棺は俺が神宮寺を封印したやつか)
「氷は我が封印した女だわん」
(ほう。カイロさん流石な腕前で。あのパンクロックな髪形の女超能力者を封印してたなんて)
「氷でも封印できるんですね。なるほど、聖獣としては分子運動うんぬんより、氷で封印しろってところにウェイトを置いたアドバイスだったのかな……」
「なにをぼそぼそ言っているんだ、アーカム。わん」
「いえ、なんでもないです。一応、僕が封印し直してもいいですか? 氷での封印も十分だと思いますが、さらに万全を期すため、力を尽くしておきたいです」
アーカムはパンクロックの女超能力者にも、『
(クリオキネシスへの覚醒の可能性がある以上、氷だけだと安心できないからな)
カイロは不安げに鼻を鳴らす。
「氷を解除するのかわん……?」
「一旦ですよ。すぐに封印しますから」
「……。まあいいだろう。貴様を信じるわん、アーカム」
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