第6話

男子生徒たちはあっという間に須賀君を取り囲んでしまった。



「この2人を解放するかわりに、お前を好きにさせろ」



金髪男の提案に須賀君は躊躇することなくうなづいた。



「わかった。僕のことは好きにすればいい」



嘘でしょ須賀君!



瞬時に須賀君がボロボロになる光景が浮かんでくる。



最悪死んでしまうかもしれないのに……!



「いいんだな?」



「僕に二言ないよ」



須賀君はそう言うとその場に座った。



抵抗する気がないとわかったとか、途端に男立ちの手が須賀君へ伸びる。



いやああ!



あたしはギュッと両目を瞑った。



須賀君が暴力を受けている場面なんてとても見られない!



そして……もふっ。



やわらかそうな音が聞こえてきた。



もふっ……。



もふもふもふもふっ。



え?



そっと目を開ける。



男子たちが須賀君に触れてもふもふと楽しんでいる。



さっきまで人を殺しそうな顔をしていた連中もみんな頬をピンク色に染めていた。



ど、どういうこと?



「俺ずっとお前に触ってみたかったんだ!」



「俺も! でもさぁ女子たちに囲まれててなかなか言い出せなかったんだよな」



「ほんとそれだよなぁ。そんで須賀のこと呼び出したらオナラで気絶させられるし、やっとだよなー!」



もふもふもふもふもふ。



それはとても心地よさそうにヤンキーたちが癒されていく。



「ネズミ食べたときキモイとか言ってごめんなー。ちょっとびっくりしただけだから」



「だよなー。あの後ちゃんとスカンクについて勉強して、理解したし」



「それにしても気持ちいいなー!」



な、なにこれ……。


☆☆☆


「僕が呼び出される理由って、喧嘩じゃなかったみたいだね」



教室に戻ってから須賀君は照れくさそうに頭をかきながら言った。



もちろん、あたしも理穂も無事に教室に戻ってきていた。



一発殴られたのは痛かったけれど、それ以外に怪我はしていない。



ヤンキーたちはひたすら須賀君をもふもふすると満足して戻っていってしまった。



「そうみたいだね」



あたしはガックリと肩を落として答えた。



それならそうと先に言ってほしかった。



須賀君だって喧嘩を売られていると勘違いしたから今までオナラで撃退してきていたのだから。



「結果オーライってことかなぁ」



理穂が殴られた腹部をさすり、首をかしげている。



あたしたちを拉致してまで須賀君をもふもふしたかっただなんて、思い出すとちょっと笑える。



あたしはそっと須賀君の背中に触れた。



フワリとした毛に自分の指先が埋もれていく。



心地よさにうっとりと目を閉じる。



確かにこのもふもふは全員で分け合ったほうがいいかもしれない。



そんなことを思ったのだった。

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