第54話 練習はしっかりと

新学期の始まりは、同時に学校へ活気を戻した。夏休み期間中は全校生徒の半数程しか授業を受けに来ない。そのため、通用口や廊下さらには学食までいつもよりがらんとしていた。

部活動をしに来る生徒もいるが、教室に上がってくることはないので、結果的にがらんと静かなエリアがあった。

そこを埋め尽くす人だかりを見て、夏休み開けたんだなと始業式の日には痛感したものだ。


炎天下の中体育祭の練習が本格化しだした。女子は学年別で毎年ダンスを踊るのが決まりである。1年生の女子だけで300人近くおり、かなりの迫力になりそうだ。

ダンスの振り付けや選曲はリーダーが行う。奇跡というべきか、中学2.3年で踊った曲と同じアーティストが選ばれた。つまり、私たち5人組並びに同じ中学からこの学校に来た女子は3年連続になる。

どの曲もそうだが、このアーティストは基本的にテンポが速くて合わせるのが大変だ。

それでも1週間足らずである程度はマスターした。放課後に5人でいつもの体育館で、曲も流しながら練習して熟練度を高めたりもした。

選手競技はと言うと、運動部の女子を差し置いて私と2人の友人がリレーの代表となった。

お隣のクラスの2人も同じ競技の選手になり、意図せず競い合う機会が設けられた。結局のところ全員選ばれたのだ。

ダンスの方は着実に上手くなって行ったと思う。相変わらずジャンプが多くてレベルは高いと思う。コレが女子高生レベルなのかと解らせられた。


全体練習が本格化しだしたこの日、朝から生理痛が来た。自転車通学中に突如痛みに襲われた。

途中で1度立ち止まって痛みがおさまるのを待った。突き抜ける激痛はスグに止み、違和感を堪えながらなんとか学校には間に合った。

友人から生理痛があった日を記録するように言われていたので、前回がいつだったかは覚えていた。ちょうど4週間前の夏休み期間中の授業日だ。その日は夕方まで学校で、みんなで自習した日だったのをよく覚えている。痛すぎて体育館に行く日じゃなくて良かったと思ったものだ。

友人はそれを聞くなり、よかったね、周期安定しだしてるよ。と言ってくれた。

両性の性教育を受けた経験から、それがどういう意味なのかはすぐに分かった。確かに痛み方も変わってきたのは感じる。いよいよ本格化するという予兆なのか。


この日は先生に事情を話し、ダンスの練習は見学させてもらった。ズキズキと違和感が残る以上、激しい運動は絶対にできない。

暇ができたので、踊る様子を見ながらひたすらイメージトレーニングをした。私は今どこで、どういう動きをしている。そんなイメージはバッチリだった。

それでも暇だったので、こっそりスマホでみんなの踊る姿を撮影してみた。終わって4人に見せると、笑いながら、イヤだ恥ずかしいじゃん。と突っ込んでくれた。

そんな笑顔を見ていると、痛みもいつの間にか忘れていた。放課後の授業の頃にはいつもの調子に戻っていた。明日は練習に参加できそうだ。


今後に一切不安はないが、生理が本格化しだした頃のイメージトレーニングも必要だなと痛感した日だった。いつか来るその日のために、しっかりと練習しなければならない。

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