妹が幸せそうに私のパンツ嗅いでたから、本物を貸してやった。

小野

妹が幸せそうに私のパンツ嗅いでたから、本物を貸してやった。


 私の妹はいつも私にべったりだった。


 小さい時は私の後ろを必死について回り、小学生の頃はよく抱き着いてくるようになった。


 そして中学生の今。

 妹は反抗期に突入していた。


 何かと直ぐに怒る妹。

 私は寛大で心が広いから、そんな妹にも思いっきり叱りつけたことは無い。



 大学二年生の私。

 周りには一人暮らしをする友達もいたけど、実家から通える距離の大学に通っていたし、なによりお金掛からないし、家族と居れば何かと楽しい。


 だから私は今も実家にお世話になっている。まぁ、さすがに生活費とか云々は払ってるけど。



「ほら、もうすぐご飯だから、あの子寝てるだろうからちょっと起こしてきて」


「えぇー、今いいとこなんだけどー」


 そう言ってお母さんのお願いをやんわり断ろうとする私は、リビングのソファに座って、共用の大きいテレビで大乱闘のゲームしていた。


「いいじゃないの、ほら早く。どうせあんた弱いんだから」


「は、はぁ? 私ぜんぜん弱く無いし。どっちかって言うと強いし」


 コントローラーをガチャガチャ忙しなく操作して、次の瞬間には私の操作していたキャラが画面外に吹き飛んで、木っ端微塵になってしまった。


「うげぇ、新キャラ強すぎでしょ……」


 私の魂の叫びに、母は料理をテーブルに運びながらフッと鼻で笑った。


「CPUにも勝てないなんて、さすがの才能だわ……」


 私はそう言って蔑むような目を向ける母に、ムカッと軽く殺意が湧いた。


「じゃあいいよ。ほら、お母さん来なよ。いつも私を倒せてるからって調子に乗ってると痛い目見るんだから」


「はいはい。負けたら起こしてきてよ」


 母はニヤニヤと目を細めて私に言ってくる。そこからはもう売り言葉に買い言葉。


「もちろん! 皿洗いでもトイレ掃除でもなんだってやったらぁ! 逆に、お母さん負けたら、お母さんの先週から大切にしてたアイス貰うからね。あ、あと私が食べてる間土下座ね」


「別にいいわよ、ほら、早く始めましょう」


「了解、負けないから」


「後でそんな事いったっけ、とか逃げるのは無しよ?」


「そっちこそ」


 そう言って始まるお母さんとの対戦。

 このとき私は忘れていた。


 この家で一番強いのは誰なのか。

 そして、ちょっと前にやり始めたお父さんに負けた最弱者は誰だったのか。



 私の愛用キャラが無慈悲にも弾け飛んだ。

 お母さんの操作するキャラを、結果ただの一度も倒せなかったのには我ながら驚いた。



「お、お母さん、前より強くなってない……?」


「下手の横好きってこのことね」


「う、うるさいやい! ああ、もう! 妹起こしてくる!!」


「ああ、弱いなぁ……」


 お母さんの悲哀の目に見送られて、妹を起こしに行く。


「ったくもう、妹こそ土曜日だってのにいつまで寝てんだ」


 とそこであれ? と疑問に思う。

 そう言えば朝ごはんの時はいたな。二度寝か。ん、いや……昼ごはんの時もいたな。ほほぅ、三度寝か。やるな、妹。


 階段を上がりきって、私の部屋の横、妹の部屋の扉の前に立つ。


 ドアの前に掛けてある、妹の部屋の旨を表す表示札。


 私はゆっくりとドアノブに手を掛け、音を立てないように扉を開いていく。



 絶賛反抗期の妹が自分の部屋でなにをしているのか気になったのもそうだけど、やっぱり一番はこの前、妹が寝てた私の顔に落書きをしたことだ。

 頬に猫ような三本ヒゲを描かれて、おでこにはありがちの肉。

 頭の上には猫耳の付いたカチューシャをさせられていた。


 起きた時妹は既にいなかったけど、微笑ましいものを見るような目で見てくる母。

 母に告げられる、衝撃の事実と犯人。


 私は妹にいつかやり返そうと、ずっと頭の片隅に置いていた。

 私は執念深い女なのだ。

 この恨み、晴らされおくべきか。



 ゆっくりとドアを開いていくと、部屋の中からは一切音がしない。

 しめしめ、と口角を上げてそのままドアを開くと……なんとそこには。



 妹がいない。



 あちこちを見渡しても、ベッドの毛布をずらしても、タンスを開けても、ゴミ箱を開いても、どこにも妹はいなかった。


「あれ……?」


 もう一度外に出て表示札を確認する。

 確実に妹の部屋だ。


「ハッ! まさか、私の部屋に……?」


 私は自分の部屋にゆっくり近付いて、ドアに手を掛ける。


 妹のやつ、なんで私の部屋なんか……

 まさか、また私の弱みをさがしているのか! また人のこと馬鹿にするつもりなのか!


 まぁ、いい。

 どっちにしろ背後から近付いて飛び上がらせてやる。

 恐怖をその胸に刻み込むといい。



 私の部屋の扉のドアノブは少し変で、普通に開けると一度ガコンッとどこかで詰まって開かない。

 しかし、これは私の部屋だ。

 部屋主に出来ないことは無い。

 ということで、私は。私だけは。

 音を立てることなくドアを開けられるのだ。


 ゆっくり、ゆっくりと開けていって、部屋の中と廊下が繋がったその時。


 部屋の中から奇妙な音が聞こえてきた。


 すぅー、すぅー、と何かを思い切り嗅いでいる音。

 犯人は確実に妹だろう。

 というか、今「はぁ……」ってため息みたいな声も聞こえた。


 しかし、私の部屋に何か良い匂いの嗅ぐやつなんてあったっけ……?



 私はそのままドアをゆっくりと開いていった。

 そして目の前に広がる光景。



 妹がドアを開けた私に気付く気配は無い。

 それは、私の方へと背を向けていたからだ。

 そしてカーペットの敷いた床に座って、一心不乱に何かを嗅いでいる。


 いったい妹の嗅いでいるそれはなんなのか。私は確認しなくても分かった。


 だって、座って嗅いでいる妹の横にある、私の下着が入ったクローゼットが開いているんだから。



 すーはーすーはー嗅ぎ続ける妹へと忍び足で近付き、横顔を確認してみる。

 なお、一応私の部屋のドアは閉めておいた。


 妹の横顔。

 恋愛を意識し始めるお年頃の中学生。

 頻繁に中学で告白を受けているという妹の顔は、やはり良く整っていた。


 いつもの不機嫌そうな私を見る目も、今だけはふにゃにゃに蕩けて幸せそう。その可愛らしい目尻からは今にも涙が零れ落ちそうだ。


 そしてなんか顔が少し赤いな、熱でもあるのかな、なんて思った矢先。

 顔の下を見てみると、片手で私のパンツの匂いを嗅ぎながら、もう片方の手は自分の胸を服の中に手を入れて揉んでいた。


 私よりは小さいが、中学生にしては大きい、そのナイスなお胸。

 それを妹は左手で撫で回したり、時には先端を摘んだりしていた。


 度々ピクッと跳ねるように震える妹。

 同じ女だからこそ分かる。


 これは相当気持ち良さそうだ。

 ほら、顔なんかも蕩けきって口の端からヨダレが落ちてきそうじゃないか。



 お母さん、ナイス。

 まさかお母さんにボロ負けして、こんなに面白いものが見れるとは。

 最近口調が随分と偉そうになっていた妹が、実はこそこそ隠れてこんなことをしていんだ?


 中学生で性に目覚めるとはいえ、姉に欲情するという、少々特殊な方向へと向かっている妹。

 これは私が修正してやらなければならないはずだ。



「妹よ」


「ッ!!??」


 私が妹を見下ろす形で突然話し掛けると、妹は顔を埋めていた私のパンツをふさっと床に落とし、三億円が当たった瞬間かのような驚いた表情をしたまま固まった。

 左手も未だ服の中に突っ込んで、自分の胸を掴んでいる状態。


「な、ななな、な……」


「取り敢えず落ち着いて、左手を抜こうか」


「あっ」


 恥ずかしさで顔を赤く、と言うよりは顔を随分と蒼白にした妹は、今私に言われてやっと気付いたのか胸を揉んでいた左手を服から抜いた。


「………」


「………」


 奇妙な時間が流れる。

 私は別になんてこと無いが、妹にはきっと何よりも気不味い、それでいて地獄のような時間。


 妹はどうやらノーブラのようだ。

 チラッと見ただけでも分かる、胸による服のふわっとした盛り上がりと、そこにあるツンとした二つの存在。


 確かに揉みやすいのだろうが、姉に気付かれている上に自分自身ががそれに全く気付いていないというのは、少し同情するものがある。


 私は優しいので、それに見て見ぬ振りをして、私からこの空気をぶっ壊してあげた。


「慰めてたの?」


「はっ!?」


 妹は驚きと戸惑い、そして少しの怒りを込めて声を上げた。


「な、なんだっていいじゃん! お姉ちゃんには関係ない!」


「え、私のパンツ嗅いでたのに?」


「そ、それも見たの!?」


 叱られた子犬みたいな顔をした妹が立っている私を見上げる。


 見たの!? って、そりゃそうだろう。

 今だって床に私のパンツ落ちてるしさ。


「うん、見てたよ」


「見てたよ!? え、ずっと!? どこから!?」


「ドアの外」


「ドアの外!!」


 妹はガクっと、まるでHPが無くなったかのように項垂れ、崩れ落ちた。

 そして、キュッと側に落ちていた私のパンツを掴むと、ゆっくりとポケットの中へと入れた。


 ……………これはお仕置きが必要か?



「ねぇ、なんでしてたの?」


「………」


「なんでしてたの?」


「………から」


「うん?」


「お姉ちゃんにムラムラしたからだよ!!」


 うわお。

 開き直った妹が四つん這いみたいな格好でバッと顔を上げて、涙目で吐露し、私の両脚をガッと掴む。

 私は家では楽だからという理由でだぼだぼのTシャツにホットパンツを身に付けていたので、妹の手が、私の生脚に食い込む。


「お姉ちゃんは胸も大きいし、お尻も太腿もむちってしてるのに! それに可愛いのに! いつもいつもそんな無防備な格好でいるから、彷徨ってるから! ねぇ知ってる!? お姉ちゃんのお尻とか胸とかソファに寝転んでたりする時たまに見えてるんだよ!? お姉ちゃんがそんなんだから、だから私はっ……」


 一気に捲し上げられた私は、全くもって返す言葉も見つけられない。


 物理的に言い返すことも出来なかったが、掛ける言葉も見つからなかったのだ。


 そうか、私の可愛さが、エロさが、妹に窮屈な思いをさせてたのか。

 大きな優越感と全能感に、ちょっとの罪悪感が芽生える。


「今だって下乳見えてるし……」


「え、何か言った?」


「……なんでもない」


 妹は拗ねたように口を尖らせて、そっぽを向いた。しかしその両手はがっしりと私の両脚をまだ掴んでいて。

 さっきからむにむにといやらしく動いているのは気のせいかな。



 でも良く見てみると、妹は小さく肩を震わせていた。

 私の脚を掴む両手も、深く意識を巡らせれば、微妙に、僅かに震えている。


 妹は今この時も、震えるほど緊張、もしくはそれ相応の覚悟を宿しながらも、わざと明るく振舞って見せていたのかも知れない。



 それは、私たちの関係が崩れないように。



 お姉ちゃんという、私自身に迷惑をかけないように。



 ……ふむ。……修正してやろうと思ったけど、言葉で修正させるのも悪い、か。



 私は妹の幻想をぶち壊してあげるべく、先ほどから良い言葉を探していたが、それは間違いなんだと気付いた。


 妹は、私の罪な身体の所為でこんな風になってしまったのだ。

 ならば、身体で修正するしかなかろう。



 私は考えを纏めて、直ぐに行動に移した。



 妹の、じりじりとお尻の方へと上がってきていた両手をパシッと叩き落とす。


 その瞬間、妹の顔は絶望に歪められた。



「お、お姉ちゃ……」


「妹よ」


 妹が何か言おうとしたけど、私はその前に両手を妹の肩に置き、諭すような表情を浮かべた。


「お姉ちゃんの身体を使いなさい」


「………………………………へっ?」


 死んだ魚のようだった妹の目が輝きを戻し、次の瞬間にはひどい間抜け面を晒した。


「あなたをこうしてしまった原因は、私の完璧なプロポーション過ぎる美しい身体の所為。ならば、あなたを通常の道へ治す為にも、私の身体を使わないと治らないんじゃないの?」


 口をポカンと開けたままだった妹は、ハッと現実に帰ってくるなり、もの凄い勢いで縦に首を振った。

 それはもう、物理的に首が吹っ飛ぶ勢いで。


「そ、そうそう!! そうなの!! もう私ったらお姉ちゃんの身体の所為でこんなんなっちゃったからさ、お姉ちゃんの身体じゃないと治せないの!!!」


 おうおう、治せるって分かったからってそんなにがっつくな。

 どこにも逃げやせんわ。


「ごめんね、妹。あなたをこんな変なヤツにしてしまって。これからお姉ちゃんが治すから」


「うん……うん……ありがど、お姉ちゃん。私、頑張って治すね?」


 妹は頬を染めて、目尻に涙を溜めて何度も頷く。


 やっぱり妹も苦しんでたんだ。

 変わっていく自分の身体。そして、感じたことのない、自分の姉への欲求を。



「さぁ、じゃあ始めようか」


「うん!!」



 私が妹に微笑み掛けてあげれば、妹は満面の笑みで返してくれた。



 哀れな妹よ。この秀才で美女の私が、お前をちゃんと元の道に戻してやるからな。



━━━━━━━━━━━━━━━



 まさかこうなるとは思わなかった。


 昔から、それこそ子供の時から大好きだったお姉ちゃんに合意的に触れられる日が来るとは。


 なんかお姉ちゃんは変な勘違いしてたけど、私は元からお姉ちゃんを性的な目で見ていた。初めてそういう目で見たのは小学一年生の時だ。


 お姉ちゃんと一緒にお風呂に入った時、お互いに身体を洗い合って、とても気持ちよかった。特にお姉ちゃんが胸とお股を洗ってくる時はゾクゾクした。


 そして、一緒に湯船に浸かろうとして、脚がへりで滑ってしまい、私は転び掛けた。


 するとふわっと、既に湯船に浸かっていたお姉ちゃんに抱き止められたのだ。


 身体中が柔らかいマシュマロみたいなお姉ちゃんに包まれて、谷間に顔を埋める状態で思わず上を見上げたら、お姉ちゃんが私を見て愛おしそうに微笑んでいた。


 その瞬間、私の心臓は激しく鼓動して、私はお湯の熱じゃない、もっと別の甘い熱に侵されたのだ。



 それからはお姉ちゃんにべったべたの毎日を満喫した。幸いお姉ちゃんは家から大学に通うことになったので離れ離れになることも無かった。


 そして、中学生になる頃には逆にべたべたとくっつくことが恥ずかしくなっていた。


 ちょっとお姉ちゃんに触れただけで、そこが熱を帯び、顔が熱くなる。笑顔を向けられると心臓が早鐘を打つ。


 これでは心臓がいくつあっても足りないと判断した私は、本当に苦渋の決断で、反抗期の仲間入りを果たした。


 来る日も来る日も、影に隠れてお姉ちゃんを性的に消費する毎日。


 最初こそ細心の注意を払っていたけど、行為はだんだんと慣れてきて、中学三年生になる頃にはほとんど警戒すらしていなかった。



 そうして起きてしまったある日こと。



 私がお姉ちゃんのパンツを無我夢中で嗅ぎながら自慰をしているところを、お姉ちゃんに見つかったのだ。


 終わった、と思った。


 そして瞬時に、お姉ちゃんにもしも激しく拒絶されたなら、私は潔く死のうと覚悟を決めた。



 しかし、そうはならなかった。



 一度お姉ちゃんに、お姉ちゃんの脚を掴む私の両手を払われた時は「あ、死のう」なんて思ったけど、あの時衝動的に死ななくて良かった。



 その後なんやかんやあって、今。



 お姉ちゃんとこうしていられるんだから。



━━━━━━━━━━━━━━━




「じゃあ、いくよ……?」


「う、うん、お姉ちゃん」


 ゴクリ、と妹の固唾を飲む音が聞こえる。

 いや、もしかしたら私自身のものなのかも知れない。


 仁王立ちで自分のホットパンツに手を掛ける私、そしてそれを全力で凝視する膝立ちで前屈まえかがみ姿勢の妹。


 私が少しずつホットパンツを下ろしていく、その一挙一動を、ひとつだって見逃さんとばかりに食い入るように見ている。


 流石に姉妹だからと言っても、自分の服を脱ぐところをずっとガン見されたら恥ずかしくもなる。


 私は顔と耳が少しずつ熱くなるのを感じながら、いざ脱ぎ掛けたホットパンツから手を離して妹へと言った。


「あの、さすがにそこまで食い入るように見られると恥ずかしいんだけども……」


「いいから続けて。私を治すって豪語したのはお姉ちゃんだよね?」


「うう、分かってるけども……」


 恥ずかしいじゃん!

 妹の前で服を脱いでいくって、一体なんの種類の罰ゲームかな?


「……っていうか、そもそもなんで私が脱ぐことになったんだっけ……?」


「もう、お姉ちゃん遅い!!」


 私がなんとなく変に疑問に思った、事の発端を改めて思考しようとした瞬間、痺れを切らした妹が私のホットパンツを鷲掴みした。


「え、ちょ……!」


「うおりゃ!!」


「うぎゃあ!?」


 ずるっ! と勢い良くホットパンツを下げられ、妹の目と鼻の先に露わになる私のパンツ。

 突然の羞恥で頬がカッと熱くなる私。


 足首元まで一気に脱がされて、更にはその状態で手前に引っ張られた所為で、私は思い切りバランスを崩してひっくり返った。


「うわっ!?」


「うぎゃあ!?」


 ひっくり返る寸前で手元に一番近かった、私を脱がしていた妹の腕を引っ張って耐えようとした結果。


 今度は妹が情けない悲鳴を上げた。



 後ろに倒れゆく中、私は衝撃に備えて目をギュッと閉じる。

 いきなり腕を掴まれた妹も、一瞬驚いた表情をしていたが、直ぐに目を瞑っていた。



 抵抗なく身体が重力に引っ張られ、うわっ、と思った時。

 ポスンと背中が柔らかいものに迎えられた。


「………」


 ベッドだった。

 ちょうど私の背後にベッドがあったお陰で、私たちは硬い床に身体を打ち付けなくて済んだのだった。


 しかし、くんずほぐれつしていた二人が、同時にベッドに倒れること。


 これは漫画やアニメで良く目にする、お決まりの光景の一つである。


 実際に視聴者として見ていた時は『はっ、そんなんあり得ないでしょ』なんて鼻で笑っていたけれど。


 現実でも起きるんだなー、って。

 この時は、そう思いましたね。はい。




 しかもラッキースケベ付きでとは……。




「ううぇ!? ちょ、妹!?」


「ふぁにかな、おふぇーちゃん?」



 ベッドが後ろにあって、倒れても怪我をしなかったのは良かった。

 しかし、この状態は一体どうなったらこうなるんだ!?



 ベッドに倒れた私に覆い被さるように倒れた妹。

 伸び切った右手が私のシャツの中へと侵入していて、今日はノーブラだった所為もあって、生乳を鷲掴みされている。


 左手は訳分からないけど、取り敢えず、直前で脱がされてしまった為にパンツ一丁だった私のそのパンツの中に、太腿とのパンツの隙間から滑り込ませて、私のお尻を鷲掴みしていた。


 いや妹。いろいろと他人のモノ鷲掴みしすぎじゃない?


 そして、なんと言っても、あろうことか。

 妹の顔面は現在。



 私の股間に埋もれていた。



 うん、まだパンツという弱っちい防壁があったから助かったものの、これも右手や左手みたいに滑り込まされてたら……。


 考えただけでも恐ろしい。

 誰が実の妹の顔面を股間にうずめたい人が居るだろうか。


 …………いや、『危なかった』と、この状況を過去のものにするというのは時期尚早かも知れない。



 だって、今の状況。

 何一つとして解決などしていないのだから。



「そ、そんな所に顔埋めて、喋らないで!?」

 

「うん……。お姉ちゃんのここ、とっても良い匂いだよ」


「話聞いて!?」


 急いでこの状況の改善を図るべく、妹の私の胸を掴む手を離させようと両手で引っ張るが……。


 これがなんと言っても、びくともしないのだ。


 え、なんで??

 妹ってこんなに力強かったっけ?

 私、大学生なんですけど……?


 確かにもうすぐ高校生になると言っても、私お姉さんだよ? 何年も妹より先に生まれてるんですけど?



 妹の手をぐいぐい引っ張っても、実際にぐいぐい伸ばされるのは私の憐れな片乳のみ。



 しかも、だ。

 こんなに引っ張ってもびくともしない癖に、掴まれる胸が痛いなんてことは無くて。


 どちらかと言うと、絶妙な力加減で刺激されて……き、気持ち良いなんて……。



「妹!? 早くお姉ちゃんの胸から手を離してくれないかな!?」


「すぅー、すぅー」


 私がいくら切羽詰まった声を上げても、妹から帰ってくるのは、胸を揉むいやらしい手の動きと、深く深呼吸するという返事ではない返事のみ。


 やばい、なんかムズムズしてきた……。

 どこが、とは言わないけど。



 胸は諦め、パンツに突っ込まれて揉みしだかれているお尻の方を対処する。


 これまたいくら引っ張って、パンツから抜こうとしてもびくともしない。


 というか、お尻を掴む手を引っ張った所為で、パンツは食い込むし、お尻は一時的に広げさせられるしで、なんかすーすーするんですけど!


 もう! この馬鹿妹は! 状況を良いことに、いつまで揉んでんだ!!



「もう、お姉ちゃん怒るよ!! はやくこの手を離さないと……」


「ぺろっ」


「ふにゃ!?」



 え、え……?

 い、いま、舐めた?

 いま妹、私の股間物理的に舐めました?



「……っ!!」



 そして、ようやくここで事の重大さに気付く。


 妹は言っていた。

 『お姉ちゃんがエロくて我慢できない』と。


 私は言ってしまった。

 『お姉ちゃんの身体を使いなさい』と。



 実際、あんまり真剣に考えず適当に言っていた所はある。

 だって、ただ妹を起こしに来ただけだ。


 私は別にちゃんとした真剣話をする為に、妹の元へとやってきた訳じゃない。


 ていうか前半は話半分で、下から漂ってくる良い匂いから今日の晩御飯のメニューを予想していた、まである。



 こうなったら、過去の自分の行いを反省してももう遅い。



 私がギギギ、と何十年も油を差し忘れたロボットのように首を動かすと、不敵な笑みを浮かべた妹と目が合った。


「え、えと……」


「ふふ、大丈夫だよお姉ちゃん。そんなに狼に怯えた羊のような顔をしなくても」


 妹は私の胸とお尻から静かに手を抜き、素敵な……いや、不敵な笑みを崩さないまま這い上がって来る。


 なんだこの妖艶な雰囲気は。

 私を見つめるその瞳が、醸し出す空気が。


 私はゴクリ、と生唾を飲む。



 というより、今更ながら、妹の力に私が敵わないのは必然だった。


 去年に背丈を追い抜かされ、どこのサークルにも所属していない私に比べて、妹はバスケ部のエースを務めている。


 怠惰な私と、運動神経抜群な妹。


 私は最初から、この部屋に入った時から一匹の羊にすぎなかったのだ。



「お姉ちゃん」


 私の目線と同じ所までゆっくりと這い上がって来た妹が、静かにそう言った。


「な、に……かな」


 私は必死に動揺と、諦めの念が悟られないように、声を絞り出す。

 しかし私の喉から出て来たのは、本当に小さい、心細そうな、弱々しい声だった。



 それを聞いた妹は、『ふふっ』と私の胸の内を全て見透かしているかのように、小さく笑みを溢すと、私の頬に手を添えて。


 視線を絡め合わせて、ハッキリとこう言った。



「いただきます」



 私が『えっ』とお決まりの台詞を口に出すよりも早く。

 妹の整った顔がグッと近付いて来て。


 金縛りのように動けない私にはどうする事も出来なくて。



「んっ……」



 私の純白のファーストキスは、いとも簡単に、何でもないことのように奪われた。



 貪るような、食べられちゃってるような感覚のするそのキスは、何分にも何十分にも感じられて。


 徐に妹の顔が離れて、唇同士がお別れを惜しんだ時、わたしは、もう。



「ふふっ、お姉ちゃん、蕩けた顔してる」


「ん、はぁ……はぁ……」



 妹はそう言うなり、服をサッと一瞬で脱ぎ捨てて、私に覆い被さってきた。



 それからは、あまり良く覚えていない。



 私も脱がされて、色々されて。

 私自身、自分のあんな甘い声、初めて聞いた。


 全身が気持ち良くなっちゃってる頃、『私ってこんな声も出せるんだー……』なんて。



 妹が愛おしそうに私を『お姉ちゃん』と呼ぶ度、私の口からは喘ぎ声が漏れて。


 夜がふけるまで、たくさんの好きと共に、たくさんのキスが落ちて来た。





 こうして、私は。

 何でもなかったある日、私のパンツを嗅いでいた妹によって、真の女にされてしまった。




 そして、今日も今日とて、妹に好きにされて、心から恋人にされるのだ。





━━━━━━━━━━━━━━━




「ふぅ、ただいまー……ってなになに、どうしたの?」


「ふふ、お父さん、今あの子達いい所だから、どこかふらっと歩いて来てね?」


「え、ちょっ! 俺いま帰って来た所なんだけど……」


「はいはい、じゃあ、後でね」


「はいはい、分かりましたよーだ……」



 そうして、扉が閉まる音と共に、鍵の閉まる音も同時に玄関に響く。



「ラップ掛けておいて正解だったわ。にしても、妹ちゃん、やっと念願のお姉ちゃんと結ばれてよかったわねぇ……」



 二人の母親は「ふふっ」と上品に微笑んだあと、鼻歌を歌いながら、お赤飯を作り始めたのだった。


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