67:目には目を
「眷属…いや、
「そう…私の炎によって生まれた灰より生成したものだ、私が造り出した魔族より強力過ぎて使えなかったものだよ」
灰天使達が槍を携えてレイルに迫る、魔族を超える速度と連携を発揮する灰天使にレイルは“
数十という雷が槍の如く灰天使達を貫く、だが灰天使達は穿たれ穴が空いたまま突撃を続けてきた。
「無駄だよ、私の灰より生まれた天使に火に類するものは通用しない!」
レイルは即座に飛び上がって突き出された槍を避ける、上空から迫る灰天使をすれ違いざまに斬り裂くと灰天使は崩れて消えるが更に無数の天使達が虫の様に群がると一斉に弓矢を構えた。
迫ってくる天使の群れから放たれる矢を潜り抜ける様にして飛んで避ける、掠めた矢が頬を裂いた。
「逃がさないよ!」
「っ!」
矢を潜り抜けた先でバニシエルが灰から生成した巨大な
「竜剣術『
雷雲から落ちた雷がクラウソラスに降り注いで輝きを増す、雷光を纏った刃を天使達の隙間を縫う様にすり抜けながら振るった。
殺到していた数十の灰天使達が斬られると同時に崩れ落ちていく、それを見たバニシエルは再び距離を取ると間に入る様に灰天使達が立ち塞がる。
「如何に竜の力とクラウソラスの祝福があろうと君の力は無尽蔵じゃない、こうして少しずつ削っていかせてもらうよ」
レイルに再び灰天使達が迫る、串刺しにせんと放たれる槍を前にしてレイルは息を吸い込むと魔力と共に解き放った。
「“――――――――――――――――っ”!!!!」
音の爆発とでも言うような人ならざる咆哮が物理的な圧を伴って灰天使達の動きを阻害する、レイルは一体を斬り裂いて包囲を抜けると詠唱して魔術を発動する。
「“顕獣疾駆”!」
詠唱と同時に巨大な光の竜が現れるとレイルは竜にクラウソラスを突き立てる、竜は体を震わせると集まっていた灰天使達に向けて極光のブレスを放った。
「クラウソラスの力を宿させたか!だがたかが一体程度で!」
ブレスをまともに浴びた灰天使達は一瞬で消え去る、だがまだ数百いる灰天使達が囲い出す。
「一体だけならな…」
光竜ごとレイルを灰天使達が攻撃しようとした瞬間、様々な方向から複数のブレスが灰天使達を吹き飛ばした。
「っ!?」
「お前が数を使ってくるというなら…俺も同じ様にさせてもらう」
レイルの周囲に幾多もの影が飛び交う、そして配下の様にレイルの後ろに翼を持った数十の竜達が付き従って飛んでいた。
レイルがクラウソラスを掲げると竜達の体が光を帯びる、竜達は咆哮を上げると灰天使達に襲い掛かっていった。
竜に斬り裂かれ咬み砕かれた灰天使は再生しないまま崩れ落ちていく、灰天使達も反撃するが竜達は通常よりも強大な力を振るう事で数の差がなくなっていた。
その光景に目を向いたバニシエルにレイルが斬り掛かる、レーヴァテインで受け止めるが即座に身を翻えしたレイルの裏拳が頬を抉って吹き飛ばした。
「…そうか、君はエルグランドだけでなくクロムバイトの血を得たのか…君は今存在する中で竜種の頂点に立つ存在にもなったという訳だね」
殴られた頬を押さえながらバニシエルは体を震わす、そして再び息を殺す様にして笑うとレイルに眼を向けた。
「たまらない…たまらないよレイル!私の全力を!本気の力を受け止められる者がいるという事が嬉しくてたまらない!!あぁ…だと言うのに全力を出してなお君を殺せないという事に憤りを覚える!!だがこの矛盾する感情も含めて私は今楽しんでいる!!!」
バニシエルが狂喜を顕にしながら独白する、周囲に灰塵を集約させながら独白を続けた。
「あぁ…本当に残念だ、君という私と対等になれる存在を殺さなければならないなんて、君と道を違えているという事実を悲しむべきなのにそれを良かったと思ってしまっている…心から楽しいと感じるこの戦いにも終わりがあるという事実がとても残念だ」
「…戦いと楽しいと思った事は一度もないな」
バニシエルの独白を切って捨てたレイルは静かにクラウソラスを構える、自らの傷の治りが遅くなっている事を感じ取ったレイルは決着をつける為にクラウソラスに魔力を注ぎ込んでいった。
「そうだ…君と私は思想が違う、大切なものが違う、何もかもが違う!…だから、こうして互いを否定してどちらかが失くなるしかない!!!」
バニシエルがレーヴァテインを掲げると周囲の灰塵が吸収されていく、その度にレーヴァテインから発せられる炎熱が激しく暑くなっていった。
「レイル…私は君を殺したい、殺すのが惜しいほどに!!!」
バニシエルの叫びと共に世界を滅ぼした一太刀が顕現した…。
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