54:解放
目の前の光景に一瞬だけ動きが止まる、だが崩れ落ちる様に倒れたゼルシドを見た瞬間、その原因となった存在に向けて激しい怒りが噴き出した。
「アステラァ――――――――――――ッ!!!!」
怒りが竜の血を励起させて尽き欠けてた魔力を練り上げる、一度の踏み込みでアステラに肉薄したレイルは剣を振り下ろした。
アステラは左腕を鰐の頭に変えて振り下ろされた剣を噛む、鋭い牙が並んだ顎が剣を押さえつけて一度その動きを止めるが…。
「う…らぁっ!!!」
柄をより強く握り締めて剣を力任せに押し込む、竜の血によって強靭な肉体と化した腕は人間離れした膂力を以て押さえつけていた顎ごとアステラの左腕を両断した。
アステラは自身の血が飛び散るのも意に介さず腹から大蛇を飛び出させる、大蛇は剣を振り下ろした体勢のレイルに勢い良くぶつかり腹に鋭い牙を剥き出しにして噛みついた。
「ぐっ!?」
噛みつかれながらも『
「…今の牙には常人なら即死してもおかしくないほどの毒があるのですが、やはり通じない様ですね」
「ぐっ…おぉっ!!」
アステラに向けて複数の『
その瞬間に再び迫るがアステラは脚を獣のものに変えて後ろに跳ぶと巨人の心臓の下に降り立つ、そして心臓に手を触れると右腕の穂先を地面へと突き刺した。
すると地面から
「ウクブ・カキシュの血肉と魔力から作り出した魔物達です、あまりこの手は使いたくありませんでしたがもはや手段を選ぶ愚は犯せません」
アステラの言葉を聞き流しながら群がる魔物達を『
「セラさんから逃れる為に一万近くの魂を使ってしまいましたがそれでも百近く残っています、ですが念には念を、貴方を魔物へと変えてセラさんとぶつけ合わせれば逆転の一手を打つくらいは出来るでしょう…。
今の怒り狂った貴方を魔物に変えるのは難しくありませんからねぇ?」
にこりと歪な笑みをを浮かべたアステラにレイルは様々な黒い感情が混ざった顔を向ける、だが周囲にいる魔物をまとめて斬り裂いた瞬間、
「がはっ!?」
レイルの全身に痛みが走る、体がひび割れていくかの様な痛みが突如として襲い動きを鈍らせた。
ゼルシドとの戦い、そしてアステラが差し向けた魔物を倒す為に励起させた竜の血による肉体の変容と生命力を魔力に変換する負荷にレイル自身が限界を迎えていた。
それでも痛みを堪えて剣を振るう、だが体の各所が壊れては治るを繰り返す体では思う様に動く事が出来ず更に絶えず襲い来る痛みが一瞬だけレイルの意識を奪った。
生まれた僅かな隙に下からワームが脚に噛みつく、そこから更に生まれた隙にフレッシュゴーレムの拳がレイルの胴に突き刺さって吹き飛ばした。
吹き飛ばされた先にいたフレッシュゴーレムとワームがレイルの両腕を拘束する、引き剥がそうと抗おうとしたレイルの視界に翼を生やしたアステラが狂気的な笑みを浮かべて飛来する姿が映る。
右腕のロンギヌスの穂先は真っ直ぐとレイルに向けて突き出され…。
「“起きろ、
レイルとアステラの間に黒い暴風が割り込む、暴風はレイルの周囲にいた魔物達を瞬く間に斬り刻むとアステラの顔に握り締めた拳を叩き込んで殴り飛ばした。
「やってくれたなクソアマ」
鼓動の様に紅く明滅する黒剣を手にしたゼルシドがレイルを背にして立ち塞がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます