41:規格外


ウクブ・カキシュの口から光が解き放たれる、破壊の光は直線上にあるものを呑み込んでいった。


解き放たれた光の正体は魔力の塊だった、魔力を口内で溜めて吐き出した、ただそれだけの単純なものだがウクブ・カキシュが大地から吸収した圧倒的な魔力の量が魔力砲とでも呼ぶべき質量兵器へと変えていた。


バルグリドは土を払いながらも立ち上がる、そして周囲を確認してその被害を目の当たりにして愕然とした。


魔力砲によって直線上にいた者は軒並み消滅していた、直線上から逃れた者やいなかった者は無事で被害は全体の二割ほどだが今の砲撃で統率と士気は失われ、前線は崩壊してしまっていた。


(たった一撃でこれか…)


バルグリドは悟った、この場はもう無理だ。


ウクブ・カキシュは砲撃を行った反動か撃った態勢のまま動かないがもはやこちらに攻撃する余力はない。


一度フォルトナールまで撤退し、そこで態勢を整えたら倒すのではなく足止めを主体とした遅延戦に変更する。


万が一にとフォルトナールから住民の避難は行わせている、フォルトナールの街そのものを囮にすれば多少の足止めにはなるだろう。


領主として街を囮にする責任は取らねばなるまいが背に腹は変えられない、そう判断したバルグリドは近くの兵士達に命じて撤退を行わせた。


兵士達が走り撤退の命令が伝播していくとそれぞれがウクブ・カキシュとは反対の方向へと逃げていく、その光景と敗北したという事実にバルグリドは苦渋の表情を浮かべながら自身も撤退を始めた。


「――――――――――――ッ!!!!!」


だがその瞬間ウクブ・カキシュが地面に指をめり込ませると咆哮を轟かせた。


大気を震わせて響き渡る大音声と同時に地面が隆起すると長大な土壁を形成してフォルトナールへの道を阻んだ。


冒険者達はそびえ立つ土壁に攻撃を加えて破壊しようとするが分厚い土壁を貫くには至らない。


(これだけの規模の魔術を行使するというのか…)


自身がこれまで見聞きしてきた魔物など比べるべくもない規格外の存在にバルグリドはもはや驚く事も出来ない。


そして動き出したウクブ・カキシュとの距離が縮まると周囲にいるものから魔力が吸収されていった。


魔力を失っていく感覚とウクブ・カキシュが迫ってくる事に冒険者達は恐慌状態になるがやがて魔力を奪われて動けなくなってしまう。


(ここまで、か…)


その場にいた全ての者が倒れ伏しながらも絶望するか迫る死に恐怖で震えていた。


だがウクブ・カキシュが冒険者達を踏み潰しかけた瞬間、空から一条の流星が飛来する。


流星はウクブ・カキシュと冒険者達の間に落ちると光が止む前に落下地点から巨大な斬撃と火球が放たれてウクブ・カキシュの顎へと衝突して仰け反らせる。


光が止むとそこには剣を振り切った態勢のレイルとウクブ・カキシュに向けて手と杖を翳したフラウとセラが立っていた…。

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