40:流星の如く
……
中庭に行くと準備を終えたセラとフラウがレイルを待っていた。
「準備は良いかしら?」
フラウの問い掛けに揃って頷く、するとフラウはレイルとセラの間に立つと二人の手を取った。
「…そういえばどうやってフォルトナールまで行くんだ?」
「決まってるじゃない」
フラウは悪戯めいた笑みを浮かべると軽やかに告げた。
「飛んで行くのよ」
「え?」
「レイル、しっかり掴んでて」
セラが警告を発した直後にフラウから淡い光が漏れ出る、それは次第に輝きと範囲を大きくしていくと三人を包んでいった。
「“
告げられた魔術の名と共に視界が変わる、急激に空へと飛翔した事で体を包む光ごしに凄まじい速度で視界が流れていく。
レイルの驚愕の声は今しがた飛んでいった空へと消え去った。
―――――
一方フォルトナールと魔境の間には冒険者と兵士による人の壁とでも言うべき陣が出来上がっていた、対城壁用の
「敵影確認!総員配置につけ!」
物見の兵士が発した伝令が伝わり各々が配置につく、そしてそれは陣にいた全ての者の目に映った。
「おいおい…」
「なんだよあれ…」
「あんなデカいのが魔物だってのか?」
「本当に勝てるのかよ…」
姿を現したウクブ・カキシュの威容にざわめくがそれを掻き消す様にしてザジと領主のバルグリドが一喝する。
「ビビってんじゃねえぞ!俺達はあいつに勝たなきゃ明日なんかありゃしねえぞ!命を賭ける事しか出来ねぇ
「そうだ!我等国に仕える者が守るべきものを捨てて背を向けるなど生涯拭えぬ恥だと知れ!今こそ故国の為になんとしてもあの魔物を止めるのだ!!」
二人の一喝にすくんでいた者達の眼に闘志が宿る、やけくそとも言えるが心が奮い立った者達が鬨の声を上げた。
「バリスタ部隊、照準を合わせろ!」
バルグリドの号令に従ってバリスタが複数人に運ばれ照準をウクブ・カキシュに向けて合わせられる、そして互いの距離が300m近くになって全てのバリスタの付与魔術が完了した。
「発射用意…撃て!!!」
付与魔術によって飛距離、威力が底上げされた矢が五十基のバリスタから轟音を立てて放たれる、矢は全身を鉱石で覆っていたウクブ・カキシュの前面に突き刺さった。
だが矢が体表の鉱石を穿って突き刺さってもウクブ・カキシュは進行速度は変わることなく陣へと迫ってくる。
「怯むな!次弾の装填を急げ!次は大魔術と同時に叩き込むぞ!!」
号令が響いて全員が急いで次弾の用意を急ぐ、そして150mを切った所で全ての用意が完了した。
「矢が当たり次第大魔術を叩きこめ!!次はない!!これで奴を止められなければ我々の負けたぞ!!!」
再び矢が放たれウクブ・カキシュへと降り注ぐ、そして陣の各所で詠唱を行っていた魔術部隊が杖を掲げて大魔術を発動した。
地獄の炎が、氷獄の冷気が、天の雷が、荒れ狂う竜巻が地を這うウクブ・カキシュの全身へと余すことなく襲い掛かってその動きを止めた。
(このまま押し切れば!)
バルグリドはそう考えながらも攻撃を続けさせた。
だがふと気付く、大魔術の嵐の中で影が立ち上がっていく事に…。
影は両腕を支えにして体を真っ直ぐに立てていた、そして嵐の隙間から覗く眼窩に灯る光にバルグリドは悪寒を覚えた。
「総員!!奴の直線上から離れろぉぉぉぉぉっ!!!!」
勘に従ってバルグリドがその場から走り出しながら叫ぶ、一拍置いて慌てながらも冒険者と兵士達が動く。
その直後、ウクブ・カキシュの口から光が溢れ出した。
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