39:手立て
「ウクブ・カキシュが甦った!?」
緊急招集が行われたレイル達が集まるとその事実がグリモアから伝えられた。
「使い魔を通して得た情報になりますが魔境に現れた魔物は姿はスケルトンに近いものですが高さはおおよそ40mほどだとされてます、間違いないでしょう」
グリモアが魔導具を取り出して起動させる、すると部屋の中央に使い魔が見た巨人の姿が映し出される。
「観察していた斥候からの報告によりますと進行速度自体は速くはありませんがこのままだとおよそ一日後にはフォルトナールに着くと予想されます、また周囲から魔力を吸収してるらしくその姿も徐々に変わっていってるとの事です」
「…ここからフォルトナールまで速くても二日は掛かるわ」
「現在はフォルトナールの遠距離攻撃が出来る冒険者や兵士達が協力して迎え撃っていますが進行速度に然したる変化はない様です…」
告げられた報告にシャルがぼそりと呟く、レイルも手立てはないかと考えるが仮にレイルが全力で向かったとしても一日は掛かる、フォルトナールまでは間に合わない。
思わず沈黙してしまう一同の耳にパンッと手を叩く音が響く、視線をそちらに向けるとフラウが椅子の上に立って手を合わせていた。
「落ち着きなさい、まだ手はあるわ」
そう発言したフラウは地図を拡げると駒を置いていき、そして一点を指し示した。
「まずウクブ・カキシュはまだ完全に復活してる訳ではないわ」
「復活してない?」
「そう、本来ならウクブ・カキシュは金と銀の肉体に全てを踏み潰す脚を持つとされてるわ、だけど不完全に復活させたせいで本来の力を取り戻してない、息子達が目覚めてないのがその証拠よ」
「…確かに現在封印されてる他の心臓は共鳴こそしてますが封印を解くまでには至ってませんな」
フラウの言葉にライブスが同意する、そしてつまり、と前置きをして告げた。
「
「…しかしここからフォルトナールまででは」
「私なら三十分もあれば着けるわ」
そう言いながらウクブ・カキシュがいる地点を示しながらフラウは概要を告げる。
「私がレイルとセラを連れてここまで向かう、着いたら私がウクブ・カキシュの足止めをするからレイルとセラはその間に内部に侵入、そして心臓を破壊する、不完全な今なら人一人が潜り込むスペースを開けるのも難しくないわ」
「…五英傑であるフラウ様が言うなら可能なのでしょうが何故その二人だけなのですか?」
「私の移動手段では二人が限度だからよ、内部はおそらくダンジョン化してる上にあの二人がいる事を考えれば一番達成する可能性が高いのは二人だけよ」
そう言い切るとフラウはレイルとセラの方へと振り向く。
「やれるわね?二人共」
フラウの問いかけに二人は力強く頷いた。
―――――
「レイル殿」
王城を出る直前、レイルが準備をしていると部屋にグリモアが従者を伴い訪れた。
「こちらを、陛下からの授かり物です」
そう言って従者がレイルに渡したのは一着のコート型の戦闘衣だった、腕や胸部などに鈍色の鱗を加工したものが施されている。
「これは?」
「先日レイル殿が望んでいた報酬になります、完成したものを預かって参りました」
言い終えるとグリモアは頭を下げた、その行動は予想外だったのか従者も驚いた顔をする。
「謁見の際に貴方に失礼な態度をとった事、貴方に全てを押しつける形になって申し訳ない、どうか我が国をお願い致します」
頭を下げるライブスの言葉にレイルはしばし沈黙する、そして徐に口を開いた。
「…貴方が国を背負っているからこそああしたのは分かっています、だから俺は貴方を責める気はありません…貴方は貴方の成すべき事をしてください」
レイルはそう言って受け取った戦闘衣を纏うと部屋を出る間際にグリモアに向けて言い残した。
「俺は、俺が成すべき事をやります」
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