37:前進
「我が、負けるか…」
斬り裂かれた金眼は体の傷を中心に光の粒となって崩れていく、光の粒はレイルの下へと向かい吸収されていく。
光を取り込む度にレイルの中に情報や感覚の様なものが流れ込んでくる、今まではぼんやりとしか分からなかった竜の血への理解が少しずつ深まっていくのが分かった。
崩壊していく体を見ながら金眼は半ばほど崩れた所でレイルへと眼を向けた。
「今回は譲ろう…だが忘れるな、
激しい感情を剥き出しにして金眼は告げる、レイルは眼を逸らす事なく真正面から返した。
「それでも俺は選ぶ事はやめない、選んで苦しみ傷ついたとしても逃げ出したりはしない、傷も
体のほとんどが崩れた金眼の口元が少しだけ上を向く、そして全ての光の粒はレイルの中へと取り込まれた。
「再び別たれる時を口を開けて待っているぞ、
―――――
重い瞼を開けると窓から差す光に目を細める、もはや見慣れた王城の一室の天井を視界に映しながらレイルは体を起こした。
「良かった、起きてくれた」
声を掛けられて振り向くとセラが椅子に座ってレイルを見ていた、テーブルの向こう側にはフラウが座って目を向けていた。
「その様子だと影を乗り越えられたみたいね、セラが見初めただけの事はあるって事かしら」
どことなくこちらを測る様な眼を向けながらフラウは呟く、ちらりとセラを見ながら徐に話し掛ける。
「それで?竜の力はどうなったの?」
問われてレイルは静かに意識を集中する、体の中に流れる竜の血をはっきりと認識した今ならば竜の血を介して魔力を生み出す事も肉体を変容させる事も自分の意思で出来るだろう。
「大丈夫な様だ」
「そう、なら次の段階に行きましょう」
フラウはそう言って立ち上がると二人の前で腕を組んで二人の前に立つ…背丈の関係でベッドに腰掛けるレイルと目線の高さがあまり変わらないが威厳を伴って告げた。
「力を操れる様になれたならやる事はひとつよ、今度は力を使った鍛練をするわ」
セラも一緒にね、と告げるとセラは首を傾げた。
「私もですか?」
「そ、気付いてない様だけどセラ、貴方にも変化が起きてるわ」
そう言ってフラウは瞳に光を灯すとセラを見る、確認する様に見終えるとセラへ告げた。
「魔力操作の上達もそうだけどアナタ、火属性が発現してるわよ?」
「え?」
「ここ最近、彼の魔力をずっと取り込んでたんでしょ?人ならともかく竜の魔力を摂取し続けた事で少しずつ属性に変化が起きてたのね」
まだ弱いけどね、とつけ加えながらフラウは続けた。
「だから二人一緒に鍛えてあげるわ、レイルは竜の力に慣れる事と魔術の基礎を、セラには火の魔術やあの時教えれなかった事を叩きこむからそのつもりでいなさい」
「はい」
「分かった」
「じゃあ昼食を終えたら中庭に来てちょうだい」
フラウはそう言って部屋の出入り口に向かう、そして出る前に「あ、そうそう」と立ち止まって振り返る。
「セラ、魔力譲渡はこれからもやりなさい、あと若いのは分かるけど今は避妊もしっかりしなさいよ」
呆けた顔をしたセラを置いてフラウは部屋を後にする、少ししてセラ耳まで顔を紅く染めて声にならない声をあげて悶えた…。
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