36:新たなる刃
紅蓮の世界でふたつの影が飛び交う、漆黒の魔力を纏った金眼が剣を振り下ろすと黒い波の様な斬撃が放たれる。
斬撃を『
落下と強化された力が合わさった一撃を金眼が受け止めて甲高い音を響かせるが竜の肉体に変容した金眼が力任せに弾き飛ばす。
着地したレイルは距離を詰めると剣閃が交差する、レイルが振るう剣を金眼が弾くと黒く染まった剣撃を放つがレイルは剣の上を滑らせる様にして受け流す。
金眼の強大な破壊力を秘めた剛毅な一撃を柔軟に受け流しながら反撃するが纏っている魔力が鎧の様になって通らない、加えて威力からしてレイルは一撃でも喰らえば終わりという状況が精神を削りとっていく。
「言った筈だ、貴様では我には勝てん!」
金眼の空いた手から炎を生み出して地面に叩きつける、地面を走って火線が八方に迸り周囲に広がっていくとレイルは大きく跳躍して上空へと避ける。
すると金眼も大きく跳躍してレイルの目前まで迫ると剣が振り下ろされる、剣で受け止めたレイルは地面に叩きつけられる様にして落ちるが即座に立ち上がって向き直ると上から金眼がレイルに向けて突進してくる。
直前で回避して再び至近距離に近づいた事で剣が交わる、鍔迫り合いの形となるが次第に押されていく。
「技量も!武器も!同じならば肉体性能が高い我が貴様に負ける筈がないだろうが!」
振り抜かれた剣がレイルを吹き飛ばす、手に走る痺れを堪えながら踏みとどまったが金眼が息つく暇もなく迫った。
「“
呟かれた詠唱と同時に雷光がレイルを覆う、金眼が踏み込むよりも速く距離を詰めたレイルが袈裟斬りを放つと金眼の魔力を斬り裂いて胸部に線が走った。
「ぬぅ!?」
予期せぬ反撃に後ろに跳んで距離を取った金眼はレイルを見据える、鋭い金色の瞳に激情を宿すと牙を軋ませた。
「認めぬ…」
ぽつりと溢れた一滴の呟きがきっかけとなって魔力が吹き荒れる、突風の様な魔力の放出は相対するレイルの髪をたなびかせた。
「竜の力を恐れる貴様を!化物となる覚悟を持たない貴様を認める事などできるものか!全てを喰らい尽くす覚悟を持たずして竜になどなれるものか!!」
金眼が剣を掲げる、身に纏っていた魔力が注がれていき刀身から溢れた魔力は凄まじい密度を持った黒い刃へと形成されていく。
応じる様にレイルも剣に魔力を込めて黒い刀身を形作っていく、互いに巨大な黒刃を生み出すが金眼はレイルよりも更に一回り大きい刃を生み出していた。
「消えろ!弱者がぁぁぁぁぁっ!!!!」
金眼が黒刃を振り下ろす、唸りをあげて迫る刃をレイルはゆっくりとした視界の中で捉えた。
レイルは剣を構えたまま動かない、黒刃が刻一刻と迫って尚、剣に魔力とイメージを送り続ける。
ゆっくりとした世界の中で“
イメージするのはその天使の剣、あらゆる悪徳を炎で焼き尽くし、神の住まう楽園を守護する者が持つ炎の剣。
“
「確かに俺は化物になったのかもな、でも…」
炎剣を振り下ろす、それは迫っていた黒刃と衝突して凄まじい衝撃と唸りを上げた。
「誰かを傷つける事を、苦しめた事をなんとも思えない様になるほど!心は化物になったりしない!!」
炎が一際激しく燃え上がる、まるでレイルの叫びに呼応するかの様に。
「“
ぶつかり合っていた炎剣と黒刃は凄まじい音を響かせて金眼ごと黒刃を砕き斬り裂いた…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます