26:奪取
「はっ、久しぶりじゃねぇかライブス、お前も随分ジジイになったな」
「そういう君は40年前と姿が変わりませんねぇ…その剣の力ですかな?」
僅かな言葉を交わして二人は笑い合う、そして剣と錫杖が音を立てて交じり合った。
「“守護者の剣を此処に”」
唱えられた聖句が響くと光の刃が空から降り注ぐ、ゼルシドが瞬時に距離を取ると降り注いだ刃が床に突き立っていき更に止む事なくゼルシドの頭上に降り注いだ。
「魔剣術『
黒く染められた刃を頭上で回転させると黒い月にも見える様な軌道が描かれる、迫っていた光の刃は黒い月に阻まれ弾かれると消えていった。
「“守護者の従者達を此処に”」
続けて唱えられた聖句と共に人の姿をした光の像が五体顕れてゼルシドに迫る、その手には光の剣が握られていた。
「魔剣術『
ゼルシドの体から魔力が噴き出して加速する、瞬く間に五体の像はバラバラに斬り裂かれて霧散する。
「“守護者の槍を此処に”」
「魔剣術『
錫杖から放たれた光の槍と黒い刃がぶつかり合う、閃光と衝突音を大広間に響かせながらせめぎ合い、やがて光の槍が両断される形で終息した。
「ジジイになって耄碌したか?なんだその木みてえな戦い方はよ」
「年を取ると動くのも億劫になりましてねぇ、君の様に跳び回るのは厳しくなりましたよ」
再び言葉を交わした二人が構えた瞬間…。
「そこまでですわ」
女の声が響く、その場にいた者達が視線を向けると大広間の割れた天窓に腰掛けたアステラが笑みを浮かべていた。
「…っ!セラ達をどうした!?」
アステラの姿を見て頭に響く衝動を抑えながらもレイルは問う、アステラはにこやかに微笑みながらレイルを観察していた。
「ご安心を、あのままだと私殺されてしまいそうでしたので街に潜ませてた信徒達に任せてきました、今は彼等の相手をしてる所でしょう」
「おい、アステラ」
レイルの問いに答えたアステラにゼルシドが殺気を込めながら言葉を投げる、今にも斬りかかりそうな気配が放たれていた。
「邪魔するな、俺はそう言ったよな?止めたって事は斬り殺してくださいって事で間違いねえよな?」
「死にたくはありませんが目的は果たしたので止めたのですよ?貴方の事も案じて」
そう言ってアステラは背に回していた手を前に出す、その手には拳大ほどの真紅に染まり明滅を繰り返す魔石が握られていた。
「そいつが巨人の心臓か」
「えぇ、貴方と今外で時間を稼いでいる信徒達のお陰でなんとかひとつは手に入れられましたわ、ですがまだ封印を解けません」
アステラは魔石を手のひらで弄びながらクスクスと笑う。
「
「…ちっ」
ゼルシドは舌打ちをするとその場で跳躍するとアステラの隣の天窓にしがみつき、そのまま足を掛けた。
「逃がすと思いますか?」
その言葉と共にライブスが光の刃を放つがゼルシドは剣で、アステラは腕を硬質な竜の手に変えて防いだ。
「捕まえられると思ってんのか?」
「…師匠!」
意趣返しと言わんばかりの言葉を吐き捨てたゼルシドにレイルが呼び掛ける、ゼルシドはレイルに目を向けて口を開く。
「レイル、俺を止めたきゃ俺を倒してみろ、少なくとも次までにお前の中にあるそいつを制御できる様になっておけや」
「っ!!」
「じゃあな」
そう言い残したゼルシドは天窓から外へと身を投じる、アステラもそれに続く様に翼を生やして夜の闇へと姿を消した。
(ク…ソ…)
薄れ行く意識の中でゼルシドが消えた天窓に手を伸ばしてレイルは意識を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます