3:証明
いきなりだな…。
レイルはそう思いながらグリモアを見る、迂遠な言い回しはせず核心を突いた質問には多少驚いたが事前の打ち合わせ通りに答える。
「この力はフォルトナールのダンジョンにて
「…何故古竜と戦ったのです?」
「強くなる為に強いものと戦いたかったからです」
「…それだけの為に…?」
「私にとっては重要な事だったので」
返答を聞いたグリモアは顎に手を添えて少し沈黙する、おそらくバニス教団との繋がりがあるかを見出だす為の問いを考えているのだろう。
ならこちらから動いた方が良いだろうと考えたレイルは口を開く。
「陛下、発言をしても良いでしょうか?」
「うむ、申してみよ」
「ありがとうございます、私の身に宿るのが竜の力であるというのを証明する為にも剣を抜く許可を頂けないでしょうか?」
レイルの発言にグリモアやゾルガは眉根を寄せるのも当然だった、式典でもないのに謁見の間で剣を抜くなど反逆の意思ありと見なされて斬られてもおかしくない行動だ。
「良いだろう、見せてみよ」
「陛下!?」
ウェルク王がそう答えると宰相は声を荒げて視線を向けた。
「それが証明になるならば躊躇う必要はあるまい、仮にレイルが儂に害をなそうとしてもお主達がそれを許すまいよ」
ウェルク王の信頼とも言える言葉に思わず黙ってしまうグリモアやゾルガを確認するとレイルへと向き直って頷く。
セラとシャルを後ろに下がらせると剣をゆっくりと抜いて中央に構えると魔力を流し込んでいきながら語り掛ける。
「エルグランド、打ち合わせ通りだ」
(うむ、他ならぬ汝の頼みだ)
剣から淡い光が漏れ始め、それは次第に輝きを増していく。
光は次第にレイルの周囲に広がっていき徐々にその輪郭を形作っていくとそこには半透明ながらもかつてレイルと相対したエルグランドの姿が謁見の間に顕現する。
「…この竜の名はエルグランド、フォルトナールのダンジョンにて私が討った竜でございます」
―――――
謁見の間を覆いつくすのではとさえ思える程の体躯をしたエルグランドにグリモアとゾルガは息を呑む。
それも当然で竜自体が数が少ない上に並の人では辿り着けない様な環境に生息している、それが更に年を経て力と智恵を得た古竜と魂だけとはいえ相対した者など歴史上でも数少ないのだから。
だがウェルク王は多少表情が変わる程度で動じる事はなくライブスはほほう…と感嘆の呟きを漏らして余裕を崩す事なくレイルを見据える。
「…確かにこの威容は古竜なのでしょう、しかしそれがバニス教団と関わりがないとは…っ!?」
グリモアが気を取り直して問い直そうとした瞬間、突風の様な圧が襲い掛かる。
(人よ、今我を何と同列に語ろうとした?)
「か…はっ…」
(我をあの歪み貶められた聖具と一緒にするな、地に堕ちようと竜の長たる我にレイルは正当に戦い勝利して力を得た、そこに他者の意が介在する余地などない)
威圧と共にエルグランドの声が響き渡る、するとその威圧をウェルク王は受け流しながら口を開く。
「我が臣下が不快な思いをさせてしまい申し訳ない、されど宰相をはじめ我等は我等の未来を守ろうと必死なのだ、貴方を貶める意図はなかった事を分かって欲しい」
威圧に怯む事なく非礼を詫びるウェルク王を見たエルグランドは威圧を解く。
(人に竜への礼節など期待はしておらぬ、だが貴様の誠意に免じてここまでにしようではないか)
「寛大な心に感謝を、そしてレイルが教団と関わりがない事は貴方の気高き意思が証明した以上審議の必要はなくなった」
ウェルク王の宣言を聞いてレイルはようやく肩の力を抜く、なにはともあれ疑いが晴れたと判断して良さそうだった。
「いやはや、古竜を倒したとは分かっていましたがその魂と共にあるのは予想していませんでしたな」
話が一段落したと判断したのかライブスがそう言ってレイルとエルグランドに視線を向けると好好爺の面持ちで問いかける。
「ところで気になる事を言ってましたな、歪め貶められた聖具と…もしやエルグランド殿は我等が奇跡と呼んでる者達の力の正体をご存知なのですかな?」
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