2:ウェルク王
朝食を終えたレイル達は案内されるままに謁見の間へと向かう。
「「…」」
向かう途中でセラとの間に沈黙が流れる、セラはたまにこちらを見るとすぐ眼を逸らしてしまうが良く見ると頬に朱が差していた。
「セラ」
「っ!?…何?」
レイルが呼び掛けるとびくりと体を震わせて答える、どこか怯えた様な雰囲気を醸し出すセラの為にも言葉を紡ぐ。
「謁見が終わったら色々と話したい、だからセラの部屋に行っても良いか?」
「…大丈夫」
「ありがとう、それとな…」
自身の顔が熱くなるのを自覚しながらも話す、伝えなければ彼女を安心させられないだろうから。
「昨日のあれ、驚いたが嬉しかったよ…」
「!」
それだけ伝えて眼を逸らす、伝えなければと思ったが予想以上の恥ずかしさでレイル自身の頬の赤みが増す。
「あの…もう着きますので」
「あー、なんかすいませんねうちの子達が」
「い、いえ…お気になさらず」
案内役の侍従が申し訳なさそうに声を掛けてきて気を取り直す、シャルの言葉に反論できず黙ってついていくと一際大きく装飾が施された扉の前に着いた。
侍従が衛兵と少しだけ話して幾ばくか待つと呼び掛けられる。
「準備が整いました、どうぞお入りください」
その言葉と共に扉が開けられた。
―――――
シャルに続いて中に入ると四人の人物が待っていた。
玉座の横にゾルガ将軍、ライブス教皇と上等な服に身を包んだ片眼鏡を掛けた男が控えている。
おそらく彼がグリモア宰相なのだろう、自身に向けてくる値踏みする様な視線からレイルはそう察して玉座の人物に目を向ける。
玉座に座るウェルク王は壮年の姿なのに知性に輝く眼と静かながらも確かな威を以てレイル達を見据えていた。
「シャルロッテ・ヴィーダル、此度の功労者であるレイル及びセラ両名をお連れしました」
レイルとセラもシャルに倣う様にして跪き、頭を下げるとウェルク王が頷いて答える。
「うむ、ご苦労であった」
さて、とシャルからレイル達に向けて視線を向ける。
「レイルそしてセラよ、此度のバニス教団の暗躍の阻止並びに奇跡の討伐ご苦労であった、お主達のお陰で更なる被害が出ずに済んだ。
国を統べる者として改めて礼を言う」
「…ありがたき御言葉に御座います」
「この功績に報いたい、何か欲しいものはあるか?」
ウェルク王にそう問われてまずはセラが答える。
「…私はお金が良いです、あって困るものではありませんから」
「うむ、相応の額を用意しよう」
そしてチラリとレイルの方へ目を向ける。
「…そうですね、では腕の良い武具職人を紹介して頂けないでしょうか?」
「武具職人?」
「今回の戦いで防具が壊れてしまったので…」
実を言うとフォルトナールで拵えて貰ったフルフルの防具だがバスチールとの戦いというよりレイルの過剰発動により修復出来ない程ボロボロになってしまった。
素材としてエルグランドの鱗等が持ってはいるが
「なるほどな、素材はあるのか?」
「はい、そちらを使って拵えて貰おうかと」
「うむ…国一番の職人に声を掛けよう、作成に掛かる費用もこちらで出そうではないか」
「ありがとうございます」
正直報酬として頼むのはどうかと思うが他に浮かばなかったし、ウェルク王も気にしてない様だから大丈夫だろうとレイルは判断した。
「それでは次の話に移って良いでしょうか?」
話が終わったのを見計らってグリモアが声をあげる、ウェルク王も無言で頷いて許可を出すと話を切り出した。
「単刀直入に聞きます冒険者レイル、貴殿のその力はどうやって手に入れたものですか?」
飾り気など一切ない質問をレイルに投げ掛けた。
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