19:レイル対バスチール
傍らにいたリリアを一瞥すると手枷に繋がっていた鎖を断ち切る、それでも呆然とするリリアに感情の篭らない声で告げる。
「下がっていろ」
「…どう、して?」
目の前の事が信じられないというリリアにレイルは顔を向けずに答える。
「俺はもうお前がどうなろうとどうでもいい、ただアレッサに頼まれたから来た」
「アレッサさんに?」
「アレッサへの恩を返す、それだけだ」
きっぱりと告げて魔力を練り上げていると剣が淡く光ってレイルに語り掛ける。
(あの鎖、もしや聖具か?)
「?知っているのか、エルグランド」
(うむ、随分と
そう語るエルグランドはどこか決別を思わせる声色でレイルに告げる。
(レイル、あれを破壊してくれ…あれはもはや本来の在り方を失った哀れな物だ)
「…了解した」
エルグランドと話し終えたレイルは殴られた頬を押さえながら立ち上がるバスチールに視線を戻す。
「…なんだ貴様は?業がありながら人の部分が少ない、分からない、感じられない、人の身のまま我等の域へと来たかの様な奇妙さは」
呟きながらも鎖をほどいていくバスチールは目に敵意を宿すと地面を踏み締める。
「されど貴様は敵と言った、我が儀式の邪魔をした、貴様が我を害する畜生の類いであるならば戒めねばならぬ」
拘束解除、という言葉と共におぞましい気配がバスチールから放たれる、それを受けてもレイルは乱れる事なく構える。
「…こんなものが儀式か」
レイルは周囲に散らばる死骸を見る、中には年端もいかぬ子供すら恐怖に顔を引きつらせて死んでいた。
「良く分かった、お前等とは分かり合えない」
剣を魔力で黒く染め上げてレイルはバスチールと相対した。
―――――
「理解を示さぬ畜生が、ならばその身に刻みこめ!」
鎖が空中を泳ぐ様に走る、レイルは強化した眼で動きを見切って避けるが鎖は蛇の様にレイルの周囲を円状に囲うと拘束せんと迫る。
その場で跳躍して避けると二本目の鎖がレイルに向けて槍の様に放たれる。
「単純だな」
“
金属がぶつかり合う音が周囲に響き渡り、剣と鎖がせめぎ合うが均衡は早くも崩れた。
刀身に込められた魔力が鎖に吸収されていき“
バスチールは鎖を壁に突き立て、自身を引き寄せる事で斬擊を避けると鎖を交互に突き立てて壁と天井を高速で行き交う。
そして振るわれた鎖が風を裂いてレイルの背中に迫るが“
バスチールは次々と鎖を使って宙を移動するがレイルはそれに“
「ちぃっ!!」
バスチールが迫るレイルに向けて腕を突き出すと鎖がレイルに向けて螺旋状に放たれる、空中で蜘蛛の巣の様に広がる鎖を…。
「竜剣術“
剣の峰から魔力を放出させる事で加速させた剣撃で叩き落とす。
鎖が吹き飛ばされ、がら空きになった胴に袈裟斬りを振るうとバスチールの胸に一閃の傷が走る。
(浅い!)
そう判断したレイルは追撃を行おうとするが再び迫る鎖を避けて距離を取らざるを得なかった。
地面に降り立ったバスチールは傷を押さえて離れた距離に降りたレイルを睨みつける。
「貴様ぁ…!!」
バスチールが怒号と共に両腕の鎖をレイルに向けて射出する、それと同時にレイルは“
迫る鎖を加速させた剣で弾き、いなし、潜り抜けながらバスチールへと距離を詰めていく。
「お前の鎖は魔力を吸収する、だが触れ続けなければ吸収できない様だな」
「!?」
向かう途中で取り出した解体などに使うナイフを鎖の輪の中に突き立てて地面に縫い止める。
「それに吸収するのは鎖だけでお前自身が魔力を吸収できる訳じゃない」
それによって片腕を引かれる様に態勢を崩したバスチールにレイルは蹴りを叩き込む。
「ごはっ…」
「竜剣術“
蹴り込まれた脚から魔力が放たれる、人を宙に浮かす程の威力を生み出す衝撃が腹に打ち込まれると衝撃音を響かせながら砲丸の様にバスチールは吹き飛び向かいの壁に土煙をあげて激突する。
「少しは身に刻み込んだか?踏みにじられる痛みってやつをな」
壁に叩きつけられたバスチールに向けてレイルは意趣返しの様な口調で問いかけた。
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