23:“最強”と“最高”を求める者
「…これで、私は貴方を裏切らないという証明になる?」
彼女はそう言ってこちらを見つめてくる。
色々と言いたい事はあったが出てきたのは疑問だった。
「どうして…そこまでする?こんな事をすれば俺が君を害するとは考えないのか?」
「…貴方は」
真っ直ぐと見つめ合う、少しの沈黙の後セラはぽつりと語り出した。
「人を深く信じない…いえ、信じて頼る事を怖れてる。」
「…!」
「…なにがあったか分からない、でも貴方がなにか大切なものを奪われてそうなったというのはあの戦いの時に聞いていたから分かる」
セネクとの戦いの事だろう、確かにあの時は感情のままに叫んでいた、当然彼女もそれを聞いていただろう。
だが僅かな情報からレイルの今の胸中を見抜く洞察力は驚嘆に値する。
「…でも今ここで貴方の手を取り損ねたら私は私の目的に届かなくなる、そう思ったからこうした」
彼女は椅子から立って近づく、首輪に触れながら強い意思に輝く眼でレイルを見つめる。
「…これは私が貴方に出せる誠意、貴方なら私を害する事はしないと信頼できるから」
「…」
「信頼できないならそれでも良い、でも信用はして欲しい。
私達は互いの目的の為に互いを用いる取引相手で
問いかけるセラをレイルは見つめ返す。
彼女は誠意を見せた、文字通り自身の身を呈して証明してみせた。
…まだあの痛みを忘れられない、だがレイルの事を考え、これほどの誠意を見せた彼女に我が身可愛さで断るのは情けなさ過ぎる。
…向き合う時だ、自分には弱い所がある。
自分の都合を通す為に、自分の心を守る為に他者の都合を考えない醜い部分がある。
セラの最初の頼みを断ったのは最強になるというのを言い訳にして本当は仲間に裏切られるのが、傷つけられるのが怖かったからだ。
でも…。
「まだ…怖ろしさはある…」
「…そう」
「だが君の誠意には応えたい」
今のままではいけないとは思うから…。
立ち上がって向き合う、強い覚悟を持つ目の前の少女に。
「取引成立だ、俺は君とパーティーを組む」
手を差し出す、彼女はそれを見て差し出した手をしっかりと握った。
「…ん、ならこれからよろしくレイル」
「あぁ、これからよろしく頼むよセラ」
この時セラが浮かべた微笑みにレイルの鼓動が早まった事は言わないでおこう…。
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