21:レイル対セネク
ダンジョンから『
「動けるか?」
「あ、えっと…」
「…後ろにいろ」
とりあえずセラが無事なのを確認すると目の前にいる異形の存在を捉える、炎を纏って黒く染まった体にこそなっているが顔に残る面影と濁った眼に宿る暗い炎がその正体を気付かせた。
「…お前、セネクか?」
「レイルゥーーーーッ!!」
セネクは叫びながら炎の剣を振りかぶってくる、受け止めるとセネクの纏った炎が襲い掛かってくる。
身体強化をより強くして剣を振り払って弾き飛ばす、叩き斬る勢いで振り払ったが纏う炎に遮られて届かなかった。
「さっきの攻撃が届かなかったのもそれか」
「コロス!コロシテヤルゥーーーーッ!!」
「…もう言葉では止まらないか」
横薙ぎに放たれた炎の剣が迫る、眼を強化して見切り、下から振り上げる様に炎の剣の横腹を叩いて逸らすと体勢を崩したセネクに『
放たれた黒刃は炎を食い破り、セネクに迫るが直前に後ろに跳んで避けられる。
「一定の威力は防げないか、ならそれを超える威力で攻めれば良いだけだ」
今度は自分から踏み込んで『
絶え間なく続く剣撃にセネクが3本の炎の剣で対抗するが防ぐので精一杯となっていた。
「クソ、クソ!クソガァァァァァァッ!?」
「…」
「ナンデ勝テナイ!?ナンデ押サレル!?私ハ才能ニ目覚メタ筈!!?」
「使いこなせてないからだ」
セネクの慟哭をレイルは冷たく切って捨てる。
「炎の剣だろうと3本持とうとお前は振り回してるだけだ」
「!?」
「単純な力で振り回してるだけの棒振り遊びで勝てると思ってるのか?」
確かに炎の剣も身に纏う炎も脅威だ、だが常に前線であらゆる魔物や敵と戦ってきたレイルからすれば大振りな動きで振るわれる剣も高熱の炎も捌き切れない程ではない。
むしろ気配を殺し、死角から状態異常を付与した矢を放つ人だった時のセネクの方が強かったと感じる程だ。
真一文字に剣を薙ぎ払う、その一撃はセネクの胸元に傷を走らせ、黒い血が噴き出す。
傷を抑えてセネクが距離を取る、そして眼に憎悪を宿して叫び出した。
「ガァーーーーッ!!貴様ハイツモソウダ!イツモイツモイツモイツモイツモォッ!!」
「…」
「ナゼ私ガコンナ目ニアウ!!ナゼオ前ダケガ全テヲ手ニイレル!!ナンデナンデナンデナンデオ前ダケガァァァァッ!!!?」
「…」
「私ガナニヒトツ得レナカッタノヲオ前ハァァァァッ!!!!」
「うるせぇよ!!!!!」
脚に魔力を集中させて距離を詰め、そのまま前蹴りを放つ、黒い焔の様な魔力を纏って放たれた蹴りはセネクの炎を蹴破り鳩尾に突き刺さる。
吹き飛び地面を削りながら瓦礫に突っ込んだセネクにレイルは怒気を放ちながら言葉を紡ぐ。
「確かに恵まれてたんだろうさ、剣にも、縁にも、自覚してなかっただけで俺は幸運だったんだろう、だけどな…」
セネクになにがあったのかはわからない、あんな事をしでかして、こうして怪物になるまで追い込まれる程の過去があるのかも知れない、それでも…。
「お前に奪われて良いものなんてなにひとつ無いんだよ!!」
それでもレイルが自分で選び、努力して手にしてきたものだ、誰かに好き勝手されて良いものなどありはしない。
「お前の事情なんぞ知った事か欲しがり野郎が!!!」
胸中に抑えていた怒りが溢れだす、怒りと共に魔力が焔の様にレイルの体から溢れ出し、セネクを見下ろす眼は金色の竜の眼となってセネクを捉え、左手で手招きする。
「来い、お前がすがるその才能とやら完膚なきまで粉々にしてやる」
「ア、アァ…アァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
セネクが腕を掲げる、その手には今までで一際激しく燃え上がる炎が身の丈を遥かに超える巨大な剣を形作って輝く。
「死ネェッ!!!!レイルゥーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
炎の大剣が太陽が落ちたかと錯覚するほどの輝きと熱を放って振り下ろされる。
レイルは剣に魔力を集める、集められた魔力は身の丈を越える黒い刀身を作り出し…。
「竜剣術『
真っ向から炎の刃とぶつかり合い、そして…。
炎の刃は砕かれ、火の粉と轟音を撒き散らしながら霧散する。
「…ア?」
剣を振ったままの体勢で固まるセネクにレイルは一瞬で距離を詰め…。
「じゃあな」
黒刃がセネクの体に振り下ろされた。
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