19:炎の魔人(セラside)
「ガァーーーーッ!!!!」
セネクと呼ばれた魔人が炎の剣を生み出して振りかぶる、セラは風の魔術で自らを後ろに飛ばしてその場から離れる。
地面に叩きつける様に振るわれた剣は石畳を砕き、周囲に熱波を放ちながら地面を焼き斬った。
(今までと格が違う!)
瞬時に判断してセネクに向け四方から氷柱を発射する、タイミングと大きさ共に不可避のものだったが…。
触れる直前に急速に蒸発する音を響かせて氷柱は消えていき、セネクはそれを意に介さず全ての腕に剣を持って迫ってくる。
(溶かされた!?あの炎、一体どれだけの熱が!?)
自身の足元から氷の円柱を生み出して打ち上げる様にして上に逃げる、セネクが目の前の円柱を斬り崩した瞬間その頭上に小屋ひとつ分の氷塊を生み出し、風の魔術で高速落下させる。
氷塊はセネクに当たる直前で半分程溶けるが水蒸気と水になって熱を奪い残り半分が音を立てて地面に衝突する。
(これなら…)
「ガァーーーーッ!!!!」
着地した瞬間、氷塊が砕かれそこから四つ腕で巨大な炎の剣を持ったセネクが飛び出し、セラに向けて大剣を振り下ろす。
「なっ!?」
即座に杖に魔力を込め、風の魔術で自身を吹き飛ばすが振るわれた大剣の切っ先が左腕を掠めて地面に突き刺さった瞬間…。
炎が爆ぜて周囲に拡がった。
「きゃあ!?」
熱風に煽られながら吹き飛び、地面を転がるセラの左腕はローブが裂けてその下の腕は斬られ焼かれた痕が痛々しく残っている。
セネクは炎の弓矢を生み出すと痛みに堪えて左腕を抑えるセラに向けて矢をつがえる。
「…っ!!“氷壁よ在れ”!」
いつもはしない詠唱を唱えて魔術を発動させる、セラとセネクの間に幾多もの氷の壁が生み出されて阻む。
「ガァーーーーッ!!!!」
弓が引き絞られる、その余りの熱量に周囲が歪んで見えるほど温度が高められ、そして解き放たれた一矢は氷壁など意に介さず飛び進み、大気を焼け焦がして彼方へと消えていく。
だがその直線上にセラの姿はなく、瓦礫を潜り抜けてセネクから距離を取って隠れたセラは荒い息をしながら壁に寄りかかる。
(相性が悪すぎる…)
セラは
だがあくまでも対応できる程度であり、そもそもそんな状況に陥らない様に立ち回って魔術で倒すのがセラのスタイルであり近接に特化したものに近づかれれば敵わない。
更に言えばセラの得意とする氷魔術では常に展開されているあの超高温の炎には生半可な魔術は通じず、よしんば通ったとしても対応されてしまう。
修得している水と風の魔術も同じ様に効果が望めるものはない。
…まるでセラを殺す為だけに特化した様な相手に思わず苦い顔をしてしまう。
(…あの炎を突破して尚且つ、確実に仕留められるほどの威力を持った魔術を叩きつけるしかない)
勝率は低いがそれしかない、セラは考えをまとめると様子を伺う。
セネクはセラを仕留めてないと気づいてる様で再び剣を持って手当たり次第破壊しているがまだこちらの居場所は把握できてない様だ。
…なら勝機はある。
セラは周囲に氷の鏡を生み出して詠唱を開始する。
「“我が求むるは絶対零度、咎を追及する氷獄の冷気”」
魔力が高まると同時に周囲が凍りついていき、吐く息が白くなっていく。
「“我が喚び出すのは氷獄の凍土、信を踏みにじりし罪禍に与えられし戒めの魔氷”」
周囲だけ気温が下がっていく、戦火が高めた熱を奪い、それにセネクが気づいて一直線にこちらに迫る。
「“我が願うは咎人への裁き、邪なる魂を砕く鉄槌を請い願う、その罰の名は”」
「ガァーーーーッ!!!!」
剣が振るわれる、4本の剣はセラの体に吸い込まれる様に入り込んでいき…
その姿は周囲の氷鏡が割れると共に消え去った。
「ギィッ!?」
剣が空振る感触にセネクが思わず周囲を見回した時、セネクから十歩ほど離れた場所にセラが杖をかざして立っており。
「“
詠唱が終わった瞬間、全身から炎を噴き出したセネクを氷の嵐が渦巻いて包み込み荒れ狂う竜巻となって呑み込んだ。
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