17:厄災の始まり(セラside)
レイルがエルグランドと邂逅を果たした頃…。
フォルトナールの冒険者ギルドの一角でセラは一人思案に耽っていた。
思い浮かべるのはレイルの事だ、自分より遥かに優れた魔力操作の技量を目の当たりにした時の驚きは今でも思い出せる。
(だからこそ是非とも教えて欲しかったけど…)
今のセラは停滞している、鍛練や戦いを欠かしてはいないがそれでも自らの強さに行き詰まりを感じていた。
そんな時にレイルに出会った、あの技量にまで至れば間違いなくこの問題を解決できると判断した彼女は珍しく自分から行動した。
結果は伴わなかったが…。
“腹の底が見えない相手を信頼はできない”
“最強になる為に誰かに煩わされたくない”
レイルの言う事は理解できる、自分だって目的の為に
(でも…)
自分と違う点は彼は申し訳なさを滲ませていた所だ。
断るのを悪いと思うくらいにはこちらを配慮したという事だし、その対応から多少なりとも彼の人となりは伺える。
少なくとも以前凍らせたのよりは信頼できる、それに目先の欲に囚われない位の意志の強さもある。
だからこそより彼に教わりたいと思ったのだが…。
「…信頼をどうやって得る?」
思わず考えた事が漏れでる、結局こちらがその気になっても相手が受け入れなければ意味がない。
自分の目的を話す?いや口だけではなんとでも言えるだろう。
まずは友人になる?…そもそも深く関わる事自体を避けてた様に思える。
「…難しい」
今までパーティーに誘われる事はあったが誘った事はない、そういった事に関しては彼女は未だ駆け出しのままなのだ。
そんな事を考えてる内に三日経っていたが良案は浮かばなかった。
「た、大変だ!」
思考の海に沈みかけた瞬間、物見役の衛兵が転がりこむ様にギルドに駆け込んでくる。
「
衛兵が叫ぶ、
「なに!?」「嘘だろ!?」「どこのダンジョンも兆候なんてなかっただろ!?」
「落ち着け!おい、魔物の数は分かるか?兆候がなかった以上そこまで規模は大きくねぇと思うが」
ザジが大声で一括して黙らせると衛兵に聞く、自身の経験から基づいた予想も立ててみたが…。
「…1000だ」
「なに?」
「目算だけでも1000以上はいるんだ!しかも三つに別れて街を覆う形で進んできてる!まるで軍隊みたいに乱れがない!」
放たれた言葉の内容は信じがたいものだった。
魔物には確かに統率を持って動くものもいる、だがそれはあくまでも獣の範疇にしかなく今まさに人間の軍の様な動きをするなど通常はありえない。
(なにが起きてやがる!?)
立て続けに知らされる予想外の情報にザジは舌打ちする。
その直後、街の防壁から爆発音が響いた…。
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