12:邂逅
あれから五日、レイルは再び『天竜の封窟』に潜っていた。
前回と違う点はひとつが装備がフルフルの皮を加工したものに変わっている。
加工を頼んだ武具屋の職人曰く、皮が持っていた雷の耐性をはじめとして魔術防御力を高めてあるらしく雷魔術であれば大半を防げるらしい。
もうひとつがフルフルと戦わなくて済む事だろう。
強くて数が少ない魔物ほど再出現には時間が掛かる、フルフル位の魔物となると他が1~7日間掛かるのに対して1ヶ月は掛かる。
五階層の広間の奥へ進む、しばらく下りていくと小さな部屋につき、そこには五人位が入れる規模の魔方陣が淡く光っていた。
「後戻りはできない、って事か」
剣を握り直して魔方陣の真ん中へと向かう、すると魔方陣は光り輝き、レイルの全身を包んで起動した。
―――――
浮遊感と共に光に包まれ、光が治まると共に地面に足が着くと辺りを見回す。
そこはフルフルのいた広間など比べ物にならない広い空間だった、城ひとつが丸々入ってなお余裕があるほど広大だ。
壁や天井は水晶の様に透き通ったなにかで覆われており、宝石で創られた檻に思える。
周囲には朽ち果てた冒険者達の骸があり、その最奥にてそれはいた。
「…久方ぶりだな、人がここに来るのは」
押し潰すかの様な威を伴ってそれは語りかけてきた。
鉛色の鱗に巨大な猛禽の翼と爪、鱗に包まれた巨体は一切の無駄が削ぎ落とされたかの様に均整がとれている。
かつて対峙したドラゴンとは格が違う、竜種の支配者に位置する存在、
「人よ、ここには財宝などはない…あるのは夢を求め敗れし者共の骸とかつての威を失い世界に取り残された死を待つこの身のみ…」
「…求めてるのは宝じゃない」
「ならばなにを求める?」
「最強の剣士となる事、その為に貴方と戦いにきた」
問いかけに迷う事なく答える、古竜はそれに対して眼を動かして返した。
「この骸の中にも汝の様なものがいた、皆等しく物言わぬ骸に変わり果てた」
ゆっくりとその巨体が立ち上がる、その瞳は全てを見透かす様な深い智の光が宿っている。
「我を封じれど滅ぼす事叶わぬ、我が今なおこうしている事が我を滅ぼせぬ証左なり」
圧が増していく、古竜から放たれる威が突風の様に空間を震わせる。
「それでも挑むというならば来るが良い、今までの者達と同じ様にその命吹き消してやろう!」
「戦ってくれるなら…それでいい!」
身体強化を発動して駆け出す、古竜が翼を広げてその偉容を示し迎え討たんと立ちはだかる。
「我が名はエルグランド!かつて天を支配した我が威を身を以て知るが良い!」
「レイル、ただの最強を求める人間だ!」
『天竜の封窟』最下層、人と神代の竜の死闘が始まった。
―――――
同時刻、フォルトナールから少し離れた山にて
「ふふ、ようやく揃いましたわ」
修道服を纏った女が三日月に口を歪ませる。
その後ろには1000は下らない魔物達がひしめいていた。
「さあ、我が主の為に喰らい、潰し、壊しなさい、そして…」
フォルトナールを指し示して女は告げる。
「死という“救済”を施すのです」
狂気を孕んだ厄災が巻き起ころうとしていた…。
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