2:新たな道へ


アインツに戻ってから1日経ち、宿屋の一室で目を覚ましたレイルはのそりと起き上がる。


諸々の話が終わってからは冒険者達に囲まれて口々に帰還を祝う言葉や慰めの言葉を言われながら飲んで騒いだ。


身支度を整えて最後に冒険者の証明であるタグを手にすると銀色の輝きが目に入る。


「本当に昇格したんだな…」


冒険者には階級があり、上から


白金プラチナ:歴史上数人しかいない等級、魔王討伐や世界を救う程の功績を挙げた者にしかなれない。


黄金ゴールド:国に数人いるかどうかの等級、場合によっては国家規模の案件を任せられる程の実力と信頼がなければならない。


白銀シルバー:実質的なギルドの最高戦力、実力は当然として相応の人格である事が求められる。


青銅ブロンズ:中堅ともいえる階級、強さだけならここまで上がれる。


アイアン:冒険者として仕事をこなしていれば順当に上がれる等級、一番多い。


ウッド:駆け出しの等級


といった感じでありレイルはドラゴンの素材と未開拓領域の情報を持ち帰った事で白銀級に昇格となっていた。


(…黄金や白金級とは一度手合わせしてみたいな…)


銀色に輝くタグを見ながらレイルは考え、部屋を後にした。






_______


「町を出るのか?」


ギルドで商隊等の護衛依頼を見ているとガルツォが後ろから声を掛けてきた、そのつもりだったから今のうちに話しておくべきだろう。


「あぁ、やりたい事が出来たしな」


「…復讐か?」


ガルツォが少し間を取って聞いてくる、レイルが憎しみに駆られて堕ちるのを心配しているのだろう、首を横に振って答える。


「憎んでないって訳ではないけど復讐しようとまでは思わない、そんな事よりもやりたい事が出来たからな」


「やりたい事?」


「最強の剣士になる」


迷う事なく答える、ガルツォは一瞬呆けた顔をしたがレイルの瞳を見て本気なのだと覚ったのだろうか顔を引き締める。


「確かにお前にゃ才能がある、一人でドラゴンを倒したんだからな、だが世界にはそれ以上の怪物とそれを倒せる様な規格外がいる、最強ってのはそれらを上回るって事だ」


話しながら鋭い視線を向けてくる、その言葉は誰よりも深く重い実感を伴った言葉だ。


「なれると思ってんのか?お前ならこのまま冒険者を続けても食いっぱぐれないだろうに、わざわざそれを捨ててまで茨なんてものじゃねえ道を行く気か?」


「なれるなれないじゃない」


だからこそ迷いなく答える、ドラゴンを倒したあの時から、この手に残ったものを知った時から見つけた道以外を行く気はない。


「最強になる、目の前に立ち塞がるものがあるならその全てを超えていくまでだ」


レイルの答えにガルツォはしばらく黙ってやがて頭をガシガシと掻くと諦めた様に口を開いた。


「王都から西にフォルトナールって街がある、あそこにゃ古竜エンシェントドラゴンがいるって言われるダンジョンをはじめとした強い魔物が多いし冒険者達も実力はある奴等ばかりだ」


「フォルトナール...」


「正直に言えば無理だって思ってる、だがお前ならあるいはって少しでも思っちまったからな」


言いたい事は言ったとばかりに背を向けて腕を振るう。


「精々死ぬなよ、もしも最強になれたら酒奢ってやるよ」


そう言って去っていく背中にレイルは静かに

を下げた。


その後、ギルドや町の人達に別れを告げてレイルはフォルトナールに向けて出発した。

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