1章:氷の華と嫉妬の炎
1:帰還
「ようやく戻ってこれたか…」
ドラゴンの戦いから2日経ち、日が沈む寸前になってレイルはアインツの町を視界に納める。
あの戦い以降レイルは今までと段違いの魔力操作が可能になった、例えるならなんとなくで使っていた道具の用途や本質をきちんと理解して最適な使い方や運用が出来る様になった感じだ。
(むしろ今までが恥ずかしくなる位無駄が多かったな...)
無駄がなくなった事で今なら常に身体強化を掛けても保てる、現にこの2日間移動する間は身体強化を掛けたままだったが魔力にはまだ余裕があった。
「まあ良いか、とりあえず町に戻って腹ごしらえだ」
この2日間で持っていた食糧が尽きて魔物の肉を焼いたものしか食べてない、久しぶりに人の手で作られた料理が恋しかった。
…ちなみにドラゴンの肉はめちゃくちゃ硬かった、身体強化で顎を強くしないと噛み切れないくらいには。
「?」
門を通るとあくびをしていた衛兵にぎょっとした顔をされた、それからもすれ違う度に幽霊を見たかの様な顔をされるが今は食事が優先だ。
酒場に入ると店主も同じ様な顔をするがお構い無しに懐から銀貨数枚を取り出してカウンターに置く。
「すぐに出せるのとちゃんとしたの食べたいんだけど良いか?」
「あ、あぁ!ちょいと待っててくれ!」
店主が大急ぎで作った料理を堪能している間も周りから視線が集まる。
次の瞬間酒場の扉が勢い良く開けられる、思わず食事の手を止めて振り向くとガルツォが今まで見た事がない顔でレイルを見ていた。
「貴方までどうしたんだ?死人に会ったみたいな顔して」
「その通りだよ、全員がお前は死んだって思ってたんだからな...」
思わぬ発言に口の中のをぶちまけそうになる、口を押さえて耐えているとガルツォが隣まで来てまじまじと見ていた。
「生きてん…だよな」
「ケホッケホッ当たり前だ、なんでそんな事になってるんだ」
「あんな事があった後に未開拓領域に入って一週間音沙汰なしってのは誰だって死んだと思うだろうよ」
…言われてみればそうだ、もし逆の立場だったら自分もそうなる...と考えて疑問が浮かぶ。
「一週間…?」
「…その様子だと分かってなかった様だな、一体なにがあった?」
「あの時は頭の中グシャグシャだったから行く途中はあんまり覚えてないけどドラゴンと会って戦ったくらいか?」
「ドラゴンだと!?」
両肩を掴まれて詰め寄られる、どうやら落ち着いて食事は出来なさそうだった。
この後冒険者ギルドで未開拓領域にいた一週間の内容を根掘り葉掘り聞かれ、ドラゴンから剥ぎ取った鱗や牙を出したら買い取りやら昇格やらと話が続いて終わった頃には月が高らかに昇っていた…。
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