紅茶と事件

バブみ道日丿宮組

お題:紅茶と犯人 制限時間:15分

紅茶と事件

 誰が彼女を殺したのか。

 答えはすごく簡単だった。死ぬまでに飲んでた紅茶をかぶった人物というのは当然なのだが、

「なんで生きてるんだ?」

 彼女は胸から大量に血を吹き出ながら生きてた。

 それで、犯人を特定したのだ。

「吸血鬼だから」

「吸血鬼って、胸に杭を打たれたら死ぬとかって聞いたけど」

 はぁというため息。

「それは都市伝説での話。普通は死なない。死なないから吸血鬼なの」

 なるほど、わからない。

「事件は解決よ」

 よりわからない。

「殺人犯が変わっただけじゃないか?」

 倒れてるのは、犯人である男。

「こいつも吸血鬼だから、死ぬことはないの。今はショックで意識を失うだけ。私と同じね」

「どうしてわかるんだ? ってか、お前が吸血鬼ってわかってるなら、こいつは刺さなかっただろ」

「真祖には血の匂いでわかるの」

 なるほど、わからない。

「吸血鬼には吸血鬼の世界があるってことよ」

「それを理解しろ、と?」

 難しい話だ。

「今のうちに縛り上げておきましょう」

「拘束の意味ないんじゃないの?」

 都市伝説の吸血鬼は、かなりのパワーを持ってたはずだ。

「死なないだけで、特殊な力は真祖の一族しか持たないの」

 なるほど、わからない。

「ここにいるのは、吸血鬼が吸血した結果生まれたはぐれもの。特殊な血筋でないはずよ」

「だったら、どうするんだ?」

「そのときは、そのときよ」

 強引な解決論だった。だが、シンプルでわかりやすい。

「あなた手錠持ってたわよね?」

 ドン引きされるような顔をされた。

「俺の趣味じゃないぞ?」

 俺は普通。アブノーマルじゃない。

「私にどんなことをするつもりだったのかは言わないでおいてあげるから、はやく出しなさい」

 カバンに手をつっこみ、手錠を取り出し、男の両手に装着する。

「足もしておいて」

 どうして2個あること知ってるんだ。

「吸血鬼だからよ」

 なるほど、わからない。

 

 一番わからないのは、なんでこの彼女と俺が付き合ってるということだろう。


 これはきっと死ぬまでわからない。

 いや……もう死ねないのかもしれない。体液の交流は既に終わった。吸血以外でも感染するならば、俺も吸血鬼とやらに感染していてもおかしくはない。

 彼女には驚くことがあり続けたのだから、その不可思議に俺が変わってしまっても違和感はないだろう。

 そうして、俺は彼女と男が起き上がるまで、紅茶をゆったりと飲んだのであった。

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紅茶と事件 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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