第3話 Prologue1-1


MMORPG《tales of original》は2018年にスマートフォン用アプリとしてリリースされた。

寄せ集めのプログラマーや新人デザイナー。シナリオ製作は始めてだった山本智之と共にグダグダなやり方によってなんとか作られたゲームだった。


《tales of original》はどちらかといえば個人が作ったゲームに近い。

それが不運か幸運か。ゲームを特集するサイトに掲載されたことによりリリース開始時にアクセスが集中し貧弱なサーバーが何度もダウンし、《tales of original》はマルチ向けではないという評価がついてしまった。開発陣に払う金を回すために安いサーバーを借りたようである。


本来、MMORPGのような複雑なシステムを持つゲームなら事前に一部の人間に参加してもらいバクや多人数による通信の負荷などを確認する"クローズテスト"と呼ばれるものが行われるのだが、予算の問題や知識不足から行わなかった。


それゆえリリース直後はストーリーの進行ができなくなるものや、キャラクターが地面や壁と言った地形をすり抜けるバクが発見され、さらには通信切断などが相次いた。

あまりの酷さから五段階評価のうち最低評価である☆1が300件近く着いたものの、日を重ねるごとにバクは減り、メンテナンスも素早く済ませたごとにより低評価も覆されて行った。


ただグラフィックはあまり良いとは言えず、地面のパターンやモンスターの形は使い回しが多々見られた。

豪華声優を雇う金もなく、下手に声を入れるくらいならと、戦闘音のみがつけられリリース3周年アップデートでようやくキャラクターのモーションに合わせた声をつけるデータパックやマップ別のBGM集など音に関するコンテンツを課金ショップで購入できるようになった。


《tales of original》がアクションをメインにしていたわけではないのだが、アクション要素もかなり低かった。

何処かで見た、と言いそうなモーションしかり、必殺技に相当する大技さえ数値面でのダメージは大きくてもアクションのモーション自体はかなり地味だった。


《tales of original》はクオリティ以外は基本に忠実なゲームであり、職業やステータスなど基本的な要素は他のゲームと大差はなかった。


小型の盾と片手武器を装備できる戦士職。

杖や魔道具など戦士職とは違い武器で直接攻撃は出来ない魔法職。

初めに二つのうちのどちらかを選択し、レベルを上げることにより転職が可能になるというような王道的なシステムだ。


《tales of original》でレベルを上げる場合には3つの選択肢がある。


そもそもレベルとは、ゲーム内においてキャラクターに課せられた成長度の数値であり、現実世界と違って同じ行動を沢山やっているから成長する……などということはない。

あるといえばあるが、システム的に作られたゲームの世界では多くがモンスターを倒したり、クエストをクリアすることによって経験値を与えられ、キャラクターの経験値総量が増え、一定の数値に到達することによりレベルが上がる。

レベルが上がることで、現在の職業よりも強力な職業に転職したり、新たなスキルを習得するために必要なスキルポイントを獲得できる。


現実世界ならスキルを習得するには勉強と実践と復習をすれば良いが、ゲームではスキルポイントを消費することによりスキルを身につけることができる。


モンスター討伐とクエストクリアを基本に《tales of original》では研究というシステムを使うことで経験値を稼ぐことができる。


研究はストーリークエストを進めることで解放されるシステムで、ゲーム内のマップに赴き漂う魔術的要素を採取したり、稀にボスモンスターからドロップするページを解読するなどという行動で、経験値を入手できるようになる。

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