274話「テスト結果」

 しーちゃん家でのお泊りから数日が過ぎ、今日はいよいよテスト最終日。

 そして今は、最後の科目である数学の問題を解いている。


 今日までしっかりとテスト対策をしてきたこともあり、ここまでたしかな手応えはある。

 それでも、しーちゃんに追いつけるほどかと言うと、正直まだまだ足りてはいないだろう。


 テストで満点を取れるか、九割前後正解するかの違い。

 僅かな点差のようで、そこには大きな違いがあるのだ。


 ――俺ももっと、頑張らないとだよな。


 テスト中に思うことでもないかもしれないが、俺は既に反省を抱きつつ数学の最後の問題に差し掛かる。


 それは最後だけあり、かなり難しい問題だった。

 それでも俺は、これに類似する問題を以前解いたことがあった。


 いつかと言えば、それはしーちゃん家での勉強会だ。

 テスト範囲を全て復習し終えた俺は、しーちゃんの提案で応用問題を解いてみることにしたのだが、その時に解いた問題がこの問題とほぼ一緒だったのだ。


 あの時は、しーちゃんのサポート抜きでは自力で解き切ることができなかったため、本当にしーちゃんには感謝したい気持ちでいっぱいだった。


 ここまでの問題は、我ながら全て確かな手応えを感じている。

 だから、この問題も解くことができれば――。


 そう思い俺は、最後の問題はより集中して向き合うのであった。



 ◇



 テストが終わり、更に数日が経った。

 そして今日は、ついにテストの上位者が廊下に掲示がされる日。


 結果は、俺が六位で、しーちゃんは今回も安定の一位だった。

 やっぱり、この差はまだまだ埋められそうにはなかったけれど、こうして目標にできる相手がすぐ傍にいてくれるというのは、やっぱり嬉しいことだった。


 すると遅れて、しーちゃんも発表を見に廊下へ現れる。



「あ、しーちゃん。おめでとう」

「と、言いますと……あ、やった! 今回も一位だね!」


 順位表を確認したしーちゃんは、そう言って小さく喜ぶ。

 その反応から、しーちゃんにとってはもう慣れたことなのだろう。


 この学校で、一位を取るのが当たり前。

 そんな余裕もまた、俺としーちゃんの差をはっきりと表しているようだった。


 それでも俺は、ここで無駄に落ち込んだり、気にしたりなどはしない。

 何故なら、それは全てしーちゃんの努力の結果だと分かっているから。


 だからこそ、まだまだ自分の努力が足りないだけ。

 そう思わせてくれることが、やっぱり有難いことなのである。



「たっくんも、今回は六位だね!」

「うん、俺ももっと頑張らないと」

「そんなことないよ! ……って、わたしが言うとちょっとアレかな」


 少し気まずそうな表情を浮かべつつも、励まそうとしてくれるしーちゃん。

 たしかに一位が言うと嫌味にもなってしまうが、もちろんそうではないことは分かっている。

 それでも俺は、この順位で満足するわけにはいかなかった。



「いや、もっと頑張らないと駄目なんだ」

「ど、どうして?」

「だってそうしないと、しーちゃんと同じ大学に行けないから」


 そう、俺が勉強を頑張り続ける理由。

 それはひとえに、しーちゃんと同じ大学へ進学したいから。

 そのためにも俺は、今以上に頑張り続けなければならないのだ。


 するとしーちゃんは、きょとんとした表情を向けてくる。

 そして遅れて意味を理解するように、その表情には笑みが溢れ出していく。



「たっくん!!」

「は、はい!」

「分かった! それじゃあ、一緒に頑張ろう!!」

「う、うん!」

「大好き!!」


 そう言ってしーちゃんは、嬉しそうに抱きついてくる。

 他にも沢山人がいるにも関わらず、人目もくれないしーちゃんのその行動に、周囲の注目はテスト結果の掲示からこちらへと集まってくる。



「絶対に、一緒の大学に行こうねっ!!」

「――うん、そうだね」


 真っすぐ向けられたその言葉に、俺も笑って頷く。

 注目を浴びることに少し戸惑ったものの、そんなことよりもしーちゃんの真っすぐな気持ちが嬉しかった。


 その結果、周囲の人達は呆れるように俺達のことを見守ってくれており、どうやらみんなからは既にバカップル認定されてしまっているようだった……。



 ちなみに、そのあとテスト用紙の返却をされて分かったことだが、俺は今回の数学でまさかの満点を取ることができた。

 苦手意識のあった数学で満点を取れたことは、俺にとってとても嬉しいことだった。


 そしてしーちゃんはというと、惜しくも一問不正解の九十五点。

 見れば簡単な足し算の計算ミスで、問題そのものを理解していないわけではなかったのだが、それでも点数だけは上回ることができた。


 最後の問題自体、俺はしーちゃんに教わってやっと理解できたレベルだから、これは本当にまぐれであったことは分かっている。

 それでも、こうして一教科だけでもしーちゃんと並ぶことができたことが、俺は素直に嬉しかった。


 ちなみにしーちゃんはというと、俺に点数で負けたことで表面上は悔しそうな反応を見せつつも、その表情はとてもにこやかだった。

 何だか俺以上に喜んでくれているような気がするのは、きっと気のせいではないだろう――。


 卒業したら、しーちゃんと同じ大学へ進学する。

 それはやっぱり、とてもハードルの高い目標と言えるだろう。


 それでも俺は、大好きな彼女と同じキャンパスへ通うという直近で一番の大きな目標に向けて、これからも頑張り続けようと決意を新たにするのであった。



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 <あとがき>

 がんばれたっくん!


 コミカライズも決まり、春には3巻も出るクラきょどのことを、今後もどうぞよろしくお願いします!!

 書籍の方も手に入れてくれたら、とっても嬉しいです!!



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