271話「再開」
公園からしーちゃんの家に戻った俺達は、再びテスト勉強を始める。
思ったよりも公園でゆっくりしてしまったため、勉強に集中して苦手なところを重点的にやることにした。
午前中は少し浮足立っていたしーちゃんも、公園へ行って満足したのか今は勉強に集中しており、俺と同じ数学をやっているはずなのにそのペンの音は止まることがなかった。
「やっぱりしーちゃん、すごいよね」
「ふぇ? 何が?」
「いや、止まらずに問題をスラスラ解いていってるからさ」
「あー、うん、まぁね?」
俺が声をかけると、しーちゃんは謙遜することなく少しドヤ顔で微笑んだ。
そんな、学校では絶対見せないしーちゃんの反応に、俺はちょっと笑ってしまう。
「ちなみに今のは、学校のみんなに言ったら?」
「もちろん、ダメでーす。いい、たっくん? アイドルにはね、イメージってものがあるんだよ?」
「でももう、アイドル辞めてるでしょ?」
「わたしはね? でも、わたしのことをずっと応援してくれていた人達の中にあるアイドル像を、壊すような真似はできません」
なるほど……。
しーちゃんの説明に、俺は納得する。
辞めたからなんでもいいわけではないのだと、ちゃんとそこまで考えているしーちゃんに感心する。
「なるほどね、じゃあ俺もしおりんファンだったって言ったら?」
「たっくんはいーの」
「どうして?」
「だって、わたしの彼氏だから。ファンサじゃ得られないもっと沢山のものを、受け取っているはずだよ?」
興味本位で言ってみた俺の言葉に対し、しーちゃんはまたしてもドヤ顔を浮かべながら、ふざけて投げキッスを飛ばしてくる。
そんな投げキッスに笑ってしまいつつも、ここでも全くもってしーちゃんの言うとおりなのであった。
「そうだね、いつも本当にありがとうございます」
「うむ、くるしゅうない」
俺の感謝の言葉に、殿様もとい姫様のように腕を組みながら頷くしーちゃん。
そしておかしくなった俺達は、吹き出すように笑い合う。
こんな風に下らない冗談を言い合えるというのも、一年という年月による変化を実感できるのであった。
そんなこんなで、ここでもやっぱりしーちゃんの学力の高さには感心しつつ、また分からないところを教えて貰いながらする勉強会はとても充実したのであった。
◇
ふとカーテンの隙間から外を見ると、すっかり日が落ちてしまっていた。
部屋の灯りはつけていたから、集中していたこともあって全く気が付かなかった。
時計に目を向けると、夜の七時過ぎ。
ぶっ続けで四時間ほど勉強を続けていたため、さすがに疲れてきたこともあって、今日のところはもういいかなと一回伸びをする。
「あ、ねぇもう終わる? 終わるよね?」
「え? ああ、うん。そうだね」
「よしっ! お疲れ様ぁー!!」
そんな俺の変化にすぐ気付いたしーちゃんが、ワクワクとした様子で尋ねてくるから、俺はもう終わることを伝える。
するとしーちゃんは、これまで我慢していたものを爆発させるように、勉強タイムの終了とともに抱きついてくるのであった。
「それで、今日は泊っていくんだよね?」
「え? そ、そういうつもりじゃなかったけど……明日はバイトあるし……」
「泊まっていくんだよね?」
「うーん……」
「泊まっていくんだよね?」
「……うん、じゃあそうしようかなぁ」
「やったぁー!!」
しーちゃんの圧に、根負けする俺……。
大喜びしながら、ぎゅっと抱きついてくるしーちゃん。
――まぁそうだね、しーちゃんはいつも一人なんだし。
だから俺は、そんなしーちゃんが満足するまで頭を撫で続けるのであった。
「よしっ! たっくんパワー補給完了! 晩御飯の準備するねっ!」
しばらくすると、満足したのかしーちゃんは立ち上がると、やる気満々な様子でご飯の支度へと向かう。
「あ、俺も手伝うよ」
だから俺も、そんなしーちゃんの手伝いをすべく一緒にキッチンへ向かう。
それから母さんに、今日は泊っていくことをLimeで連絡を入れると、『了解、お幸せにね』というメッセージがすぐに返ってきたのであった。
――それでいいのか、母親よ……。
まぁそれだけ、しーちゃんのことを認めてくれているのだと思えば、それはそれでいい……のか?
そんなわけで、無事にお泊りも親公認となったのであった。
「あ、一応親からも許可出たよ」
「本当? じゃあ今日は、気兼ねなく泊っていってね!」
一応しーちゃんに報告すると、満面の笑みで喜んでくれた。
自分が泊まるだけで、こんな風に喜びの笑みを向けられるのなら、それはやっぱり俺としても嬉しいことなのであった。
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<あとがき>
というわけで、お泊りけってーい!!
久々の更新すいません。
またマイペースに執筆は必ず続けさせていただきので、気長にお待ちいただければと思います。
現在、
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本日のラブコメ日間ランキング4位と高順位をいただけておりますので、きっと面白いはずです!
良ければこちらも楽しんでいただければ幸いです!
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