224話「集結」

 夜の八時過ぎ。

 洗い物を終え、暫くリビングで一緒にのんびりと過ごしていると呼び鈴が鳴らされる。

 はいはーいとしーちゃんのお母さんが玄関へ行くと、お邪魔しますと複数の声が聞こえてくる。


 そして、



「紫音! ひっさしぶりぃ!!」


 リビングの扉を勢いよく開けて入ってきたのは、エンジェルガールズの「めぐみん」こと橘萌美だった。



「こら、夜なんだし静かにしなさいよ」

「お、お邪魔しますぅ」


 そして、めぐみんを注意する「あかりん」こと新見彩里と、本当に来て良かったのかという風にオドオドとしている「ちぃちぃ」こと柊千歳が続いてリビングへとやってきた。


 こうして、なんと本当にしーちゃん含めてエンジェルガールズフルメンバーが揃ったのである。

 五人それぞれが個性に溢れ、そして普通に過ごしていたらまず出会うことなどないであろうレベルの美少女達。

 そんな彼女達は、しーちゃんとの久々の再会に喜ぶと、くっつき合いながら微笑み合っていた。


 ――えっと、俺はここにいていいのかな。


 そんな彼女達の貴重なオフに自分が加わっていることには、やっぱり違和感しかなかった。

 けれど、同時に間近でそんな彼女達の再会を喜ぶ姿を見られることに、俺も喜びを感じてしまう。



「お、一条くん! えーっと、文化祭ぶりかな?」


 すると、しーちゃんとの再会を十分喜び合っためぐみんは、今度は俺に声をかけてくる。

 めぐみんはエンジェルガールズの元気担当なだけあり、今も満面の笑みを浮かべており、どうやら普段から元気いっぱいなようだ。



「そうだね、えっと、よろしくでいいのかな?」

「にゃはは! うん、よろしくでいいよ! こちらこそだよ! たっくん!」


 ニッと笑いながら、ほぼ初対面の俺にも気さくに絡んでくれるめぐみん。

 小柄でショートヘアーの良く似合う、元気ハツラツな女の子。

 そんな、しーちゃんとは違うまた新しいタイプの美少女のそんな対応に、俺はどうしても恥ずかしくなってしまう。



「あっ、えっと、その、柊千歳と申します……その、よろしくお願いします……」


 そして、今が声をかけるチャンスだと思ったのだろうか。

 めぐみんに続くように、オドオドと挨拶をしてくれたちぃちぃ。


 彼女はエンジェルガールズの妹担当と呼ばれており、小動物のような愛くるしさが人気の彼女。

 どうやらこちらも、普段から人見知りするタイプのようだ。

 ふんわりとした黒髪のボブヘアーが良く似合い、垂れ目で愛嬌溢れるその顔立ちは可愛らしく、世間からは守ってあげたくなると人気を集めているのが頷ける愛くるしさがあった。



「うん、こちらこそよろしくね」

「え、えへへ、嬉しいです」


 安心させるように、極力自然に挨拶を返すと、それが嬉しかったのか控えめながらも微笑んでくれるちぃちぃ。

 なるほど、握手会などでこんな仕草を一度見せられてしまっては、推したくなる気持ちが物凄く分かってしまう自分がいた。



「たっくん、久しぶりね」

「うん、久しぶりだね」


 それから、最後に声をかけてくれたのはあかりん。

 あかりんとは、もうなんだかんだ複数回会ったりしているため、普通に返事が出来た……はずだ。

 今日のあかりんは、オフだからかラフな格好で髪はポニーテールにまとめており、そんな姿も良く似合う相変わらずの美少女っぷりだった。



「なーに、たっくん? わたしの顔に何か付いてる?」


 するとあかりんは、俺が何を考えているかなんてまるでお見通しというように、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら早速俺のことをいじってくる。

 相変わらずあかりんは、同年代とは思えないほど一枚上手といった感じだった。



「もう、あかりん? たっくんだからね!?」


 そんなあかりんに対して、透かさず俺とあかりんの間に割って入ったしーちゃんは、俺のことをいじってくるあかりんをすぐに注意する。

 そんな風に行動してくれたこと、そして何より「わたしのたっくん」と言って貰えたことが嬉しかった。


 エンジェルガールズの五人。

 彼女達は全員、一人一人が個性に溢れ、一目見るだけで目が覚めるような美少女達。

 それでも俺は、やっぱりそんなしーちゃんの姿に見惚れてしまう。


 ずっとテレビで見ていた憧れのアイドルが、今では自分の彼女としていつも一緒にいてくれていることに、俺は改めて感謝の気持ちでいっぱいになってしまったのだ。



「冗談よ冗談。わたしも久々に会えて嬉しいのよ。――それにたっくんは、やっぱり紫音にお熱みたいだしね?」


 すると、またしても俺の考えていることなどお見通しなあかりんは、そう言ってまた俺のことをいじってくるのであった。

 

 全くもってその通りな俺は、ただ笑って誤魔化すことしか出来なかった。


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