第Ⅱ世界 <夜ノ異>
2.0.0 SIИAЯЮ
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――
ここは全てが集う大都市。物流の中心地にして人も同じく流れ込む街。
酒類、金銭、老若男女。何でもござれ……と、言いたいところだが。生憎人手は用意出来ない。運命的に天から降ってくるのを祈るんだな。
ちなみにまともじゃない
ロボットとだけあって人とは異なる容姿を持っている。ひと目でヒューマロイドってわかるだろう。中でもよく見かけるのは「
…………。
……………………。
……もう平気だ。心配いらない。
先に伝えた通り、彼女達はまともじゃない。
発見されるや否や、非常に高い確率で敵性反応とみなされ、搭載されている焼却光線発射装置が稼働する。真正面から喰らってしまえば骨も残してもらえない。
このような始末……アーティフィシャル・インテリジェンスの暴走かヒューマロイドの謀反か。
あぁ、脱線してすまない。
そう、「居た」のさ。
でも今は息を潜めているのがほとんどだよ。無駄な抵抗だって諦めがついちまったのさ。その上、この街から逃げようものなら彼女達が全力で抹消しにかかってくる。排水溝を通ろうとするネズミ一匹すら取り逃さないらしい。外ではさぞ願いが叶う街なんて噂されていたかもしれないが、それこそ
ミッドナイトタウンはとっくの昔に幽閉されてしまった監獄なのさ。
……今し方、
まっ、大したことじゃない。大半のヒューマロイドは徘徊ルートが決まっている。実にロボット的な「いつも」の動きだ。だが標的を見つけた時は様相が変わる。すると、彼女達は頭部にある一つ目のようなレンズを赤くサイレンのように切り替える。そして素早くその獲物へと向かってひたすらに追いかけ回すのだ。今まさにそうだっただろう? 「いつも」じゃない、あれは云わば「ハント」モードだ。大方ネズミか烏か、はたまた呆けていた誰かが見つかっちまったと考えるのが妥当だ。己ではなかったことを幸運だと喜んでも良いさ。もし君が純粋無垢かつ善良な心の持ち主であり「あのネズミ一匹を助けに行きたい!」と喚いたとしても、こちらとしてはまずオススメしないね。それに余計に見つかってしまうリスクが高まる。巻き込まないようこちらのいないところでやるにせよ、折角案内してあげたんだ、命は無駄にしないでくれよ。
……と、ひとまず彼女達が危険なのは理解できただろうか。なぁに、怖がることは無いさ。緊張感ってのは大事だが、いくら何でもずっと気を張ってたら保たない。我々はロボットではないからね。そうだろう? それに、傷一つ無い完璧に見えてしまってもどこにだって「穴」はあるものさ。現に気楽に生きている奴が最低でも一人、ここにいるんだ。
しかし、それはそれとして、だ。話を戻そう。ミッドナイトタウンには全てが揃っている――とは言ったものの一つだけ容認できないものがある。いいかい、冗談でも戯言でもない。これは警告だ。耳の穴をかっぽじってよーく聞くんだ。
君にとっては当たり前のことかもしれないが、ここでは必ずしも常識ではないということをわかってくれ。
――日の光を浴びたい、とは決して口に出すな。
これは事実であり、この街共通の暗黙のルールだ。
なぜならばここミッドナイトタウンでは太陽が登ることは無い。
一日たりとも日の目を拝むことの出来ない『夜』の街なのだから――。
*――*――*――*――*
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