第32話 この迫力を試合でも出してみろよー!
僕たち女の子(?)6人は『
僕は正直、こんな格好でバスに乗りたくない!でも、やるしかないと思って半分諦めの境地だ。スカートだったら絶対にバスに乗るのを拒否していただろうけど、全部自分の服だから、何とか自我を保っている?
だけど、そんな僕の心の叫びを聞いてくれる人は誰もいない。何故なら・・・
「・・・だーかーら、絶対に私です!」
「はあ!?いくら何でも横暴よ!!」
「そうよそうよ!こういう時だけ部長権限を振り回すのはおかしい!!」
「先輩だからといって卑怯だあ!」
「
「わたしが陽子ちゃんの隣よ!」
「ちがーーう!絶対に私よ!」
「ウルサイウルサーイ!あたしに決まってるだろ!!」
「わたしに決まってる!!」
「それは違う!陽子ちゃんの隣は私よ!!」
「認めーん!!」
おいおいー、バス停の前で何を口論してるんだあ?道行く人たちが僕たちを完全に白い目で見てるのに気付けよー。
殆ど殺気立ってるとしか思えないぞ!しかも全員が殺気立った目でジャンケンを始めるし。これが公式戦未勝利の
「「「「「「「 最初はグー、ジャンケンポン!! 」」」」」」」
勝負は1回でついた・・・意外だった。
殆ど喧嘩に等しいジャンケンは
今度のジャンケンは意外と長引いたけど、それを無視して糸括先輩が僕の右側に来て、そのままベンチに座った。糸括先輩は「頑張ってねー」とまるで他人事のように言って僕の右側でニコニコ顔で座ってる。一体、何をしたいんですかあ?そんな僕のボヤキを無視するかのように残りの4人のジャンケンは続いたけど、
しかも滝匂先輩は、僕にとっては意味不明のヘアースタイルやネイルの講釈を始めるし、糸括先輩に至ってはスマホを取り出して「このケーキはイチゴとクリームのマッチングが絶妙なんだよねえ」とか言って、あちこちの店のケーキ自慢を始めるし、僕が返事をしないと二人とも怒ってるし・・・勘弁して下さーい!
そのままバスが来たから、僕は糸括先輩と滝匂先輩に挟まれるようにして立ち上がって、バスに乗り込んだけど・・・先に乗った
「ちょ、ちょっと胡蝶!何を考えてるのよ!」
「はあ!?胡蝶さん!!約束がちがーう!!!」
「あらー?ジャンケンの結果はもう無効よー!」
大芝山先輩は僕を強引に後ろの席に引っ張っていこうとしたけど、その僕の左手を妹の
「お姉ちゃん!抜け駆け禁止!!」
「はあ!?オコチャマは黙ってなさい!」
「年増のババアに言われたく無ーい!」
「フン!ペッタンコの奴に言われたくない!」
おいおいー、運転手が迷惑そうに僕たちを見てるのに気付けよー、ったくー。
仕方ないから僕が二人を宥め、一番後ろの席の左奥に大芝山先輩、僕がその隣に座り、僕の右側に紅華さんが座った。糸括先輩と滝匂先輩は明らかに不満アリアリの顔で僕たちの前の席に座ったけど、
15分ほどでバスは『
入口のレジの前には受付表のボードが掲げられていて、そこには『順番待ちお客様は代表者の名前(カタカナ)、人数、希望の席に〇印(テーブル席・座敷・どちらでもよい)を記入してください』と書かれている。既に先客は記入済で一番最初に記入していたスズキさん3名は既に消されてるから、開店して間もなく席が埋まってしまったとしか思えない。『
テーブル席は4人掛け、もしくは6人掛けだけど、座敷は2つのテーブルを縦に並べたような形だから8人から10人が一度に座れるし、それが2面ある。だから大芝山先輩が代表して『ツクネ 6人』と書き込み、テーブル席の所を〇で囲った。どう考えても僕の苗字『
でも、僕の右には糸括先輩が、左には滝匂先輩が並んで立ってる。しかも大芝山姉妹とは険悪ムードそのものである。青葉さんはというと、完全に僕をシカトしてるから、これはこれで相当怖いです。それに、店内にいる人が僕の事をチラッチラッと見てるのが丸分かりだから、僕は女の子5人に挟まれて立っているにも関わらず、冷や汗をかき続けている状態だ。
比較的流れはスムーズで、客が長々と居座る事もなく立っていく。次は僕たちの番だ。でも、座敷は幼稚園か小学生低学年くらいの子がいる家族連ればかりで、しかもワイワイやってるから空きそうもない。逆に4人掛けテーブル席の客がほぼ同時に2組立ち上がった。しかも隣り合わせの席だ。だからアルバイトの女子高生か女子大生(間違ってたらゴメンナサイ)が僕たちの所へきて「テーブル席2つで宜しければすぐにご案内致しますが、如何いたしましょうか?」と聞いて来た。
僕は全然異論ない(というより、僕は早く視線から逃れたい!)けど、他の5人が同意しなかったから、僕たちは次の客に席を譲った格好になった。その次に立った客も4人掛けテーブルだったから、今度も譲った格好になって、6人掛けのテーブルの客が立ち上がったのはその次だった。さすがに6人一緒に座れるなら、テーブルでも座敷でも構わないようだから、僕もホッとした格好だ。
僕たちは店員さんが前の客の皿を片付けたり鉄板を綺麗にするのを待っている形になってる・・・のだが・・・僕はそのテーブルを片付けている子が誰なのかに気付いて冷や汗が出てきた。何故なら・・・この店にいるであろう従業員の中で唯一、顔と名前が一致する人物の
どうやら店の手伝いをしているようだけど、慣れた手つきで皿やフライ返しを回収し、鉄板をサッと拭き取って綺麗にする動きは、とてもでなはないけど素人とは思えない!どう考えても以前から店の手伝いをしていたとしか思えないほどの機敏な動きだ・・・
でも、菊枝垂さんが目の前にいるのに気付いているのか気付いてないのか知らないけど、大芝山先輩たち5人が再び言い争っている。さすがに今度は屋内だから大声で怒鳴ってるような事はないけど、眼だけは完全に血走ってる!
話し合いは早々に決裂(?)して、再び5人のジャンケンがヒソヒソ声で行われたけど・・・今度は一発で決まった!紅華さん、青葉さん、大芝山先輩の3人だ。この3人で再びジャンケンが行われ、今度も一発で勝負がついて両手を高々と突き上げたのが紅華さんと青葉さんだ!どうやら僕の隣に誰が座るかを決めてたようだけど、これで全て決まったようだ。1年生二人はニコニコ顔だけど、3年生三人はコメカミをピクピクさせながら紅華さんと青葉さんを見てるから、僕は逃げ出したいですー。
「・・・6名でお越しのツクネさまー、お待たせしましたー」
僕らは席に座った・・・
まさか菊枝垂さん本人にいきなり会えるとは思って無かったから、当初の計画を相当すっ飛ばした格好になった・・・
菊枝垂さんが僕たちの事に気付いた様子はなかった・・・
ただ、僕には相当の罪悪感があったのも事実だ・・・
そのまま2時間以上も店にいた。もちろん、ちゃあんと品物を注文したし、残さず食べた・・・
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