第31話 リアル着せ替え人形

「「「「「「「キャーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」」」」」」」


 青葉あおばさんたち5人はリビングで大爆笑しているし、みやび姉ちゃんと手毬てまり姉ちゃんに至っては床に転がって笑ってるほどだ!!


 えっ?何の話?何で笑ってるんだ?


 あー、それはですねえ・・・僕はのだあ!!

 その僕がスカートにストッキング、Tシャツで脱衣所から出てきたから、全員が大爆笑したのだ。雅姉ちゃんは息が出来ないくらいに笑い転げているから、眼から涙を流してヒーヒー言ってる。

「・・・勘弁してよー。やれって言ったのはそっちだぞー」

「だってさあ、女の子以上に女の子みたいだから、ようちゃんとは思えなーい!」

「絶対にメイクは拒否です!」

「別にそれでいいよー、

「それを言うなア!」


 僕はブーブー言ってるけど、誰も僕の話をまともに聞いてくれませーん!勘弁してくれー。

「・・・まさかとは思うけど、ブラジャーもやるの?」

「あったり前よ!お姉ちゃんのお気に入りを貸してあげる!」

「ブラジャーはやりますけど、お願いだからスカートは勘弁して下さいよお」

「ええーっ、勿体なーい」

「だってさあ、これ、マジで足元がスースーしてるんですけどお」

「文句言わなーい」

「頼むからさあ」


 僕が必死になって懇願するから、雅姉ちゃんも渋々だけどスカートは撤回すると表明したけど・・・何だかんだと言われて『写真を撮ってからねー』と押し切られてしまった・・・


 完全に雅姉ちゃんと手毬姉ちゃんのリアル着せ替え人形になってるから、顔から火が出るどころの恥ずかしさじゃあないです!

 自宅が美容室である滝匂たきにおい先輩が持って来たウィッグで、滝匂先輩とほぼ同じヘアースタイルになっている。ついでにと言っては何だけど、父親が眼鏡店を経営している糸括いとくくり先輩が持って来た、ピンクのフレームの伊達眼鏡も掛けている。

 さすがに素肌の上にブラジャー(!)をつけるのは相当な勇気が必要だから、Tシャツを着てるのはその為だ。

「じゃじゃーん」

「「「「「「「「おおーっ!」」」」」」」」

 雅姉ちゃんは真っ赤な悩殺的!とも言えるブラを両手で高々と掲げたから、手毬姉ちゃんだけでなく青葉さんたちも歓声を上げたほどだ。雅姉ちゃんはそれをつけようと頑張ってたけど、パットの数が多過ぎて簡単にズレてしまう!あーだこーだ言いながら頑張ってたけど、何度やっても、ちょっと動いた拍子に簡単にズレてしまうから最終的に断念した。手毬姉ちゃんは「絶対に貸さない!」とか言ってるから、本当に『しか持ってないのかよ!?』とツッコミたくなったほどだ。挙句の果て、冗談か本気かは分からないけど、大芝山先輩が超がつく程の真面目な顔で

「紅華さあ、あんた、ブラ貸してあげれば?」

「はあ!?どうしてえ?」

「あっても無くても同じでしょ?」

「冗談じゃあないわよ!胡蝶こちょうお姉ちゃんこそノーブラで十分よ!」

「わたしは誰かさんと違って無いと困るのよねー」

「胡蝶お姉ちゃんはサラシでも巻けばあ?」

「あんたはバンソーコーだけで終わり!話は終了!!」

「勝手に終わらせるなあ!」

 などとマジ顔で口論し始めるから、糸括いとくくり先輩たちが「ヤレヤレー!」と声援(?)を送る始末だ。

 結局、雅姉ちゃんがクローゼットの中から中学の時に使ってたDカップ(!)のブラジャーを1つだけ見付けてきたけど、雅姉ちゃんがブラジャーの中にパットを詰め込みながら「いらない物だから毎日これで」と意味深(?)な事をニヤニヤ顔で言ったから、青葉さんたちが爆笑していた。しかもパットは雅姉ちゃん曰く「毬ちゃんの秘密兵器よー」とバラしたから、どうやら勝手に手毬姉ちゃんの部屋から持ち出してきたようだ。それに気付いた手毬姉ちゃんが顔を真っ赤にしていたから、これまた青葉さんたちが大爆笑していた。

 そのまま雅姉ちゃんのブラウスを着せられたから、本気の本気で穴があったら入りたい気分です。

「・・・はーー、僕はマジで外を歩きたくないですー」

「わおーっ!少しアルトの領域のボクッ子みたい!」

「大芝山せんぱーい、本気で言ってますかあ?」

「当たり前よー!わたしが男だったら速攻『付き合ってくれ!』と言い寄っちゃうからあ」

「勘弁してよお」

「まあまあ、気にしない気にしない、突羽根つくばね陽子ようこちゃん」

「それを言わないで下さーい」

「ますます可愛いよー」

 大芝山先輩はニコニコ顔でスマホで写真をバシャバシャ撮りまくるし、「もっとニコッとしなさいよー」とか「ちょっと顔を斜め上に上げてー」とかポーズまで指定してくるから、本気の本気で勘弁して下さい!当たり前だけど青葉さんや紅華さんまで爆笑しながらも写真を撮ってるし、手毬姉ちゃんが一番張り切ってると言っても過言ではないかも。

 挙句の果てに婆ちゃんや母さんだけでなく、新珠あらたま伯母さんたちまで代わる代わるやってきて、ゲラゲラ笑いながらも写真を撮りまくってるから、ホントに恥ずかしいどころの騒ぎじゃあないです!


 長い長ーい撮影会(?)が終わって、僕は再び脱衣所に籠った。ブラウスを脱ぐ時、メンズとレディースでは右前と左前という服の違いがあるから結構大変でしたけど、スカートとストッキングも一緒に脱いで、元々履いていた〇ーバイスのジーンズを履き、Tシャツの上からTシャツを重ね着してからデニムのカッターシャツを着た。カッターシャツだと服の隙間からブラジャーが微妙に見えてしまうから、それだと不自然極まりないからTシャツを重ね着した格好だ。もちろん、一番上のボタンを外すのはTシャツの重ね着がバレるから厳禁だ。その上からデニムのジャケットを着てるから、メンズファッションで固めた女の子にしか見えない。

 それを着て再び脱衣所からリビングに行った時、やんややんやの歓声が上がったのは言うまでもなかった。


 ただ、さっきまでと微妙に違っていた。まるで間違い探しをやらされている気分だったけど、すぐに気付いた。

 青葉さんは顔と素性が割れている。だから、さっきまでのジーンズ姿のボーイッシュなスタイルからロングスカートに変わっている。しかもセミロングのウィッグに眼鏡を掛けている。当たり前だけどガラスしか入ってない伊達眼鏡だ。どうやら僕が着替えてる間に手毬姉ちゃんの部屋でスカートに履き替えたようだ。

 大芝山先輩も顔と素性が割れているし、紅華さんは可能性がある。でも二人とも学校では髪を纏め上げてコンタクトにしているけど、今は自宅にいる時の眼鏡で髪はストレートのままだから、まるで別人にしか見えない。これならバレる事もなさそうだ。


 全ての準備が整ったから出発・・・と行きたいのだが、またまた撮影会(?)が始まって、本気の本気で真面目に敵情視察に行く気があるのかあ!?と内心ではボヤキまくりだった。だいたいさあ、僕は顔は割れてるとはいえ素性は割れてないと思ってるけど、青葉さんの言葉じゃあないけど「普賢象ふげんぞう先輩経由で割れている可能性がある」と言われたらグウの音も出ない。僕が同行する理由はけど、女装させて同行させるのは、殆どふざけているとしか思えない!


 でも、反論できないのが僕なんです・・・これって典型的な弟系?

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