第30話 何でここにいるんですかあ!
今日は土曜日。残された時間は1日しかない・・・
さすがに今日は早朝5時からお好み焼きを焼こう、などという気力が沸いた人は誰もいない。というより、
時計の針は間もなく10時になろうとしている。
雅姉ちゃんも手毬姉ちゃんも一歩も部屋から出てこない。というより、二人とも朝ご飯も食べずに引き篭もっている事が、その気持ちを体現しているといっても過言ではない。
えっ?僕は何をしてる?お前は暇なのか?
あー、それはですねえ・・・誰も起きてこないから、MINTENDOのBUTTONをやり放題なのだあ!何しろ僕の家にはBUTTONは1つしかなく、きょうだい兼用なのだ。僕が春休みにバイト(?)に熱を上げたのは、個人用のBUTTONが欲しかったからと言っても過言ではない。既に個人持ちのBUTTONを買うだけのバイト代(?)は溜まったけど、本体を買えてもソフトを買えなければ意味がない。1つ2つは買えるけど、それをやると全部のバイト代がぶっ飛ぶから、少なくともゴールデンウィークまではバイト(?)を頑張って溜めておこうと考えてる。でも、今日は雅姉ちゃんも手毬姉ちゃんも起きて来ないから、僕はBUTTONを朝から独占している。それに今日の店番は伯母さんたち3人であり、婆ちゃんも母さんも店に出ないから、仕込み作業を手伝っている程度で我が家にはノンビリムードが漂っている。
本当はノンビリムードが漂っていては困るのだが・・・
♪ピンポーン~
はあ!?土曜日の朝から我が家の呼び鈴を鳴らすのは誰だあ?
でも、リビングには僕しかいない。仕方ないから僕はモニターのスイッチを押したのだが・・・
「!!!!!」
僕はモニターを見て思わず「嘘だろ!?」と口に出しそうになって、寸での所で思いとどまった。何しろ、モニターに映ってるのは間違いなく・・・
僕はモニターで答える事なく玄関を直接開けたのだが・・・
「・・・おっはよー!」
「というか青葉さーん。朝から元気ありすぎですー」
「気にしない、気にしない」
「というか、どうしてソフトボール部の人が一緒にいるんですかあ?」
「別にいいでしょ?」
「そりゃあそうだけど・・・」
「入ってもいい?」
「別にいいけど・・・」
「そんじゃあ、遠慮なく」
そう、今朝の青葉さんは一人ではなーい!青葉さんを含めて5人で押しかけて来たのだ!具体的には3年生が3人、2組の
その5人がリビングに入ってきたから、たちまちリビングは足の踏み場も無いくらいの混雑ぶりになった。
「・・・手毬ちゃんは?」
「不貞腐れて寝てる」
「だと思ったよー。あたしが手毬ちゃんだったら絶対にやる気を無くすよー」
「だから激励に来た?」
「ノンノン!今日は
「へっ?」
僕は青葉さんが言ってる言葉の意味が全然分からないから、思わず間抜けな返事をしてしまったけど、青葉さんはニヤニヤしているし、大芝山先輩たちもニヤニヤしている。
「・・・あのー、どうして5人なんですかあ?」
僕は素朴な疑問を口にしたけど、その質問に答えたのは
「・・・えーとね、
「あー、ナルホド、受験生だからですか?」
「それもあるけど、二人とも学年末テストで追試受けたから、親が『
「あらまあ」
「二人とも大学進学希望だけど、今のままだと偏差値30前半の大学しか狙えないレベルで、親が『家の恥だ』とか激怒したらしいよ。でもさあ、私から言わせてもらえれば、大学行かせてもらえるだけ有難いわよー」
「時代錯誤の親ですかあ?」
「でしょうね」
「2年生の4人は?」
「ん?
「映画?もしかして『鬼滅の桜・夢幻並木』の事?」
「そうだよー。春休みは混んでるからヤダとか言ってたからねー。それで今日行くって聞いてたから、最初から呼んでないよー」
「呼んでない?何ですかそれは?」
「他の学校なら『先輩が来いと言ってるのに来ないのは何事だ!』とか激怒するでしょうけど、そうならなのが
「全然話が噛み合ってないですー」
「気にしない、気にしない」
そう言って滝匂先輩は僕の左肩をバシバシと右手で叩くから、増々もって意味不明です。
「・・・本気の本気で僕には意味不明ですよー」
僕はこの中で一番顔見知り(?)の青葉さんに助け舟を求めた格好だけど、その青葉さんはニヤニヤしたままだ。
「なーに、簡単な事だよー」
「だーかーら、全然意味不明です!」
「これから『
「はあ!?」
「幾つかの書き込みサイトで書かれてる事が本当なのか確かめに行く!」
「殴り込みをやるつもりですかあ!?」
「あのなあ、ただ単に『
「あー、ナルホド」
「でも、その前に陽光君にやってもらう事がある!」
「ますます意味不明です!せめて理由を教えて下さい!!」
「それはねえ・・・」
青葉さんはニヤニヤしながら僕に向かって手招きするから、仕方なく僕は女子
5人の輪の中に入ったのだが・・・
「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
僕は青葉さんの話に絶叫してしまった!
でも青葉さんだけでなく大芝山先輩たちはニヤニヤしたままだあ!!
「本気の本気で言ってるんですかあ!?」
「当たり前だ」
「そんな事が認められるとは思えないですよ!」
「そんな事はないぞー。これは、ここにいる全員の意見だ」
「た、たしかに青葉さんが言った通りですけど、菊枝垂さんが納得するとは思えないですよ!?」
「いんや、間違いなく承諾する。『看板を賭けた勝負』を言い出したのは
「だからと言ってさあ」
「雅先輩は絶対にOKする!というより手毬ちゃんに任せらないのは火を見るより明らかだからね。
「で、でも、だからと言って僕が・・・」
ここで階段の方からドタバタという音が聞こえたから、僕の話は中断の形になって全員が階段の方を見たけど、そこにはパジャマ姿の雅姉ちゃんと手毬姉ちゃんが肩で息をしながら立っていた。どうやら僕が家中に響きわたる絶叫をしたから、部屋から飛び出してきたようだ。
「はあ!?青葉ちゃんに大芝山先輩まで、何でここにいるんですかあ!」
手毬姉ちゃんは絶叫するかのように指差しながら言ってるし、雅姉ちゃんは完全に絶句している。
そんな二人を、糸括先輩と滝匂先輩が無理矢理背中を押して輪の中に入れて、大芝山先輩が最初から説明し直したのだが・・・
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