第27話 あー、あのさあ・・・
「・・・こんばんはー」
「とわーっとっとっと!」
店の扉が勢いよく開かれて
「・・・手毬ちゃーん、頑張ってる?」
「見れば分かるでしょ!」
青葉さんはカウンターを覗き込むようようして鉄板の様子を見たけど、手毬姉ちゃんは逆キレ気味だし、
青葉さんは「はあああーーー・・・」とため息をつきながらカウンター席に座ったけど、その青葉さんの右には
そんな中、青葉さんは雅姉ちゃんに申し訳なさそうな顔で
「・・・雅先輩、注文してもいいですかあ?」
「注文しなくてもいいから、お願いだからこれを食べて!」
そう言うと雅姉ちゃんは「はーー」とため息をつきながら、カウンターの上に大皿を『ドン!』とばかりに4つ並べたけど、それを見た瞬間、青葉さんだけでなくソフトボール部の全員の目が点になった!
ボロボロになったお好み焼きか、2つか3つに割れたお好み焼きがゴッソリ乗ってるから、全部で何枚あるのか全く想像出来ない!僕だって手毬姉ちゃんが何枚の失敗作を作ったのか数えてないけど、30枚は下らないはずだ。
味付けしてない物しか無いから、僕が「はーー」とため息をつきながら全員の前に皿を並べ、かき粉と青海苔を適当にドンブリに入れると2つのテーブルとカウンターに置いた。ウスターソースは我が家の台所にあった物を持ってきてテーブルとカウンターの上に置いたから、後はセルフサービスの形になって、各々が勝手にお茶とお好み焼きを持って行く形になったのだが・・・
「・・・味は悪くないよねー」
「わたしはソースより
「個人的にはさあ、ソースをかけてからひっくり返して、もう1回焼くと結構イケルけどー、後で洗うのが面倒だからお母さんが怒るんだよねー」
「この沢庵のコリコリ感は最高なんだけどー・・・」
「「「「これじゃあ勝負以前の話よねー」」」」
あちらのテーブルでは2年生4人がため息を交えながら食べてるけど、練習終わりにタダでお好み焼きを食べさせてもらった格好だから、箸の進みは相当早い。もう1つのテーブルの3年生4人組は既にお替りしているくらいだ。
早晩山先生は「はーー」とため息をついてるけど、お好み焼きを1口だけ食べた後は箸を動かそうともしない。その代わり、手毬姉ちゃんの手の動きをずうっと見ている。いや、その目は真剣そのものだ。
手毬姉ちゃんは尚も成功を求めてお好み焼きを焼き続けてるけど、もはや誰も手毬姉ちゃんが成功作を作れるとは思って無く、ほとんど我が家のお好み焼き自慢か、他の店の裏メニューの話に夢中だ。
そんな中、ただ一人、お好み焼きに手を付ける事なく話に夢中になっている子がいた!それは僕の隣に座った形の紅華さんだ。
「・・・いやー、こういうと
「揶揄わないで下さいよお。たしかに店内に男は僕一人しかいませんけど、ほぼ確実に僕が一番若いですから、ハーレムどころじゃあないですー」
「あれっ?もしかして3月生まれなの?」
「そうだよー」
「たしか
「そりゃあそうでしょ?だって、僕と青葉さんの誕生日は5日しか違わないですからあ」
「はあ!?ちょっと待ってください!さっき、3月生まれって言ったばかりでしょ?矛盾してない?」
「矛盾してないですよ」
「意味不明!」
「だってー、僕が15歳になって5日後に青葉さんが16歳になってますから」
「うっそー!?という事は3月30日生まれなの?」
「そうですー。お情けで高校1年生やってるのと同じですよ」
「だよねー、なーんかお姉さんになった気分だよー」
「あのねえ、真面目な話、どうして『お姉さん』と言い切れる?ホントの意味で同い年でしょ?」
「あー、ゴメンねー。あと4日で年上になるんだよねー」
「はあ!?マジですかあ?」
「そう。たしかに同じ『
そう言ったかと思ったら紅華さんはブレザーのポケットからスマホを取り出した。僕は紅華さんが何をしたいのか全然分からなかったけど、どうやら何かのアプリを起動させたようだ。
「・・・あれっ?案外期待できるかも!」
「何が?」
「今週末の
そう言うと紅華さんはスマホそのものを僕に見せたけど・・・はあ!?たしかに紅華さんの言う通りだ!
えーと、土曜日は『自分の意図しない事に巻き込まれ、散々な目にあうでしょう』って、何だこりゃあ!?要するにトンデモナイ事が起こるのかあ?
あー、でも、たしかに日曜日は『ライバル粉砕!どんな強敵もひれ伏す最強デー!昨日の敵は今日の友、思わぬ仲に発展するかも』とか書いてある。これなら紅華さんが期待するのも無理ないよなあ。
でも・・・これを言うべきだろうか・・・いや、いずれ分かる事だから言っておいた方がいいのかも・・・
僕はちょっと迷ったのは事実だけど、正直に言う事にした。
「・・・あー、あのさあ」
「ん?どうしたの?」
「たしかに僕は
「はあ!?突羽根さんと手毬さんは双子じゃあないのお!?」
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