第26話 殆ど勝負にならないレベル
僕は
1つは文明の利器を使う事で何とかなりそうだが、本番では無理だ・・・
もう1つは殆ど絶望的だ・・・
雅姉ちゃんは何とかしようと頑張ってるけど、こういう才能が手毬姉ちゃんに無いとしか思えないレベルなのだから・・・
♪♪♪~ ♪♪♪~
レジの所に置いてあった僕のスマホに着信が入った!この音は・・・
僕は『ハッ!』としながらも慌ててスマホを手に取り、画面をタッチした。
「・・・もしもーし」
『おーい、調子はどう?』
「僕に聞かないで下さいよお」
『ふーん、まあいいや。ところで、まだお店は開いてる?』
「ん?どういう事」
『これから行く』
「手毬姉ちゃんの応援?」
『それもあるけど、12人で行くけどいい?』
「12人!?何それ?」
『うちの部の全員と先生』
「あー、ナルホド」
『入れるよね』
「ちょっと待ってよ」
僕はレジのところにいた母さんに事情を説明して確認を取ったけど、母さんはOKを出した。
「・・・大丈夫だよ。というか、誰も来ないから早じまいしようと思ってたから、
『サンクス!』
これを最後に青葉さんからの通話は切れたけど、僕は「はーー」とため息をつく事しか出来なかったし、母さんも苦笑いしている。
手毬姉ちゃんは僕が母さんに確認を取った事で、逆に引き攣ったような顔をしている。そりゃあそうだ、自分の恥をみんなに
「・・・ちょっとー、マジで私の
「別にいいんじゃないのー?どうせ1年生なのにエースで4番なんでしょ?少しくらい穴があった方が好かれるよー。お姉ちゃんが男だったら、女の子のそういう所にググッと引き寄せられちゃうけどねー」
「雅お姉ちゃんは完璧すぎるから嫌いです!」
「そんな事はないよー。だって肩が凝るからあ」
「それって完全に自慢してるでしょ!」
「あのさあ、そんな事を言ってる暇があったら、サッサとひっくり返しなさいよー」
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
そう、既にキッチンタイマーが鳴ってるにも関わらず、手毬姉ちゃんは文句をブーブー言い続けてたから、2枚のお好み焼きのフタを大慌てで外した!
少し焼き過ぎかもしれないが、これなら問題ないレベルだ・・・けど、最大の問題はここからだ!
手毬姉ちゃんは自分から見て右側のお好み焼きに、素早く両手で持ったフライ返しを差し込み、それを一気に持ち上げてひっくり返そうとしたのだが・・・
あーあ、またやったなあ。
手毬姉ちゃんはもう1枚もお好み焼きにも、両手で持ったフライ返しを差し込んで、それをひっくり返そうとしたのだが、結果は同じだった。
そう、手毬姉ちゃんはお好み焼きをひっくり返す事が絶望的なくらいに出来ないのだ!
浜砂のお好み焼きは、関西のお好み焼きと違って生地が薄い。その為、フライ返しで持ち上げた時に崩す事は余程のヘタクソでない限り心配しなくてもいい。ひっくり返す時にはサッと持ち上げ、パッと半ば投げ付けるかのようにして裏返して鉄板に戻す。あまり強く投げ付けると生地が割れてしまうから、ホドホドの強さで投げ付けるのがコツだ。まあ、このあたりは常識として誰もが分かる事だ。
手毬姉ちゃんはお好み焼きを持ち上げる事そのものが問題なのだ!上手く持ち上げたとしても、ひっくり返す時に元の位置に戻す事が出来ない!トンデモナイ場所にお好み焼きを放り投げてしまうとか、お好み焼きを崩してしまうとか、こうなったら商品として使えない!
焼き過ぎ、あるいは生焼けはキッチンタイマーを使う事で何とかなってきたが、実はこれにも大きな問題がある。『
僕や雅姉ちゃんは勘というか、フタから上がって来る蒸気というか水気、それと匂いの微妙な違いでフタを外して一気にひっくり返すけど、それは鉄板の温度を体で分かっているからだ。当たり前だけど鉄板は何も乗せないと熱くなってくるし、大量の物を一気に焼くと最初は下がって、それが徐々に上がってくるのは経験として分かっている。
だけど手毬姉ちゃんには経験が無いから分からないし、アウェーの『
つまり、絶望的な位にスキルが無いところへ完全アウェーの店へ乗り込むのだから、殆ど勝負にならないレベルとしか言いようがない・・・
まともにひっくり返せないのだから、手早くソースを塗って、かき粉と青海苔をまぶす所にまでいかない。まぶすのは適当と言うと怒られるけど、サッと上からかける程度だから何とかなるけど、ソースを刷毛で一面に塗るのは素人ではムラが出来る。これも経験がモノを言うのは間違いない。
でも、全てはお好み焼きをひっくり返す事が出来なければ始まらないのだ!!
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